原題:Thumbsucker

フツーに心配な僕のミライ

2005年ベルリン国際映画祭銀熊賞<最優秀男優賞>受賞:ルー・プッチ 2005年サンダンス映画祭特別審査員賞<演技賞>受賞:ルー・プッチ 2005年ストックホルム映画祭<主演男優賞>受賞:ヴィンセント・ドノフリオ 2005年エジンバラ国際映画祭<新人監督賞>受賞:マイク・ミルズ

2005年7月16日全米公開

2005年/アメリカ映画/スコープサイズ/全5巻/2,622m/96分/SRD・SR/字幕翻訳:太田直子 ソニー・ピクチャーズ・クラシックス提供 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給 宣伝協力:ファントム・フィルム  サントラ盤:avex group

2007年02月02日よりDVDリリース 2006年9月23日(土)よりシネマライズほかにて全国順次ロードショー

公開初日 2006/09/23

配給会社名 0042

解説


世界有数のアーティスト、マイク・ミルズの長編初監督作品

 誰でもみんな赤ん坊のときは親指を吸うもの。でもそれが17歳になっても続いているとしたら、ちょっとマズイ!? アメリカで話題を呼んだ、ウォルター・キルンの小説「サムサッカー」が、ついに映画化された。このユニークな題材を監督したのは、まさにその繊細なクリエイティビティがぴったりと言える人材、グラフィック・デザイン・ワークとミュージック・クリップ界で名を馳せた世界有数のアーティスト、マイク・ミルズだ。これまでビースティ・ボーイズやオノ・ヨーコ、モビーなどとコラボレートしてきた彼は、原作に惚れ込み、自らプロデューサーを説得して脚本を執筆。長編デビュー作とは思えぬ見事な演出力とその独特の感性で、思春期の少年が抱える悩みを、静謐な感動の染みわたる普遍的な物語へと昇華させた。

誰もが”フツー”に感じている、「なんだか心配なミライ」

 サバービアと呼ばれる、アメリカの都市近郊の閑静な住宅街に暮らす住人たち。典型的な中流家庭で、愛情あふれる両親と小さい弟に囲まれ何不自由なく暮らすジャスティンは、傍から見れば心配事などとは無縁の恵まれた高校生だ。だが、彼には親指を吸うクセがどうしてもやめられないという悩みがあった。両親や学校の先生はもちろん、人生の師と仰ぐ一風変わった歯医者の先生も、彼の奇妙な癖をやめさせようと干渉する。だがその結果は、親指→催眠術→抗鬱剤→マリファナと、次々に依存する対象が変わって行くだけだった。大学進学を控え、頭のなかでは、テレビで活躍するようなジャーナリストになりたいという漠然とした将来の夢を抱きつつも、今の自分に自信が持てないジャスティン。両親を満足させたいのに、自分が”ダメ”だから皆が離れて行くのではないかという心配をぬぐいきれない。その不安をやわらげる唯一の方法が、”親指を吸うこと”だった。そして、周りの大人たちも実は自分に自信をもてずに、「父」「母」「先生」といったそれぞれの「役割」を果たさなければならないことに窮屈さを感じている。本当の自分って何?大人になるってどういうこと?人生にとって正しい選択は?-そんな誰もが一度は経験するような人生の難問に誠実に向き合うジャスティンの姿に、観る者誰もが過去あるいは現在の自分を重ねあわせて、深い共感を覚えることだろう。

キャスト・スタッフの絶妙なコラボレーション

 『サムサッカー』のもうひとつの見どころは、斬新な配役による豪華キャストだ。『マトリックス』シリーズ後、この「インディペンデントで最高の脚本」に惚れ込んだと語る、瞑想家の歯医者さんに扮したキアヌ・リーヴス、平凡な母親という非凡な役を演じた『ナルニア国物語 第一章:ライオンと魔女』のティルダ・スウィントン、『Mr.&Mrs.スミス』のヴィンス・ヴォーンや『メン・イン・ブラック』のヴィンセント・ドノフリオらが名を連ねる。だが、本作を成功に導いた最大の功績は、主人公ジャスティン役を演じた二十歳の新人、ルー・プッチにあるだろう。これほど複雑で繊細な役柄を、周囲のベテランも舌を巻くほど見事に演じた彼は、ベルリン国際映画祭の銀熊賞<最優秀男優賞>とサンダンス映画祭における特別審査員演技賞を獲得した。すでに『スクール・オブ・ロック』のリチャード・リンクレーターの次回作にも出演している、今後が楽しみな大型新人だ。
 なお、本作にはミルズが監督するにあたって大きなインスピレーションを受けた、敬愛するミュージシャン、エリオット・スミスによるナンバーも使われている。当初はスミスがサントラも担当する予定だったが、彼は2003年10月に自らの手で絶命。その後を引き継ぐ形で、ポリフォニック・スプリーのティム・デラフターが音楽を手掛けた。
 最後にニューヨークの街を晴れ晴れと駆け抜けていくジャスティンの姿を観る時、温かな感動が胸に広がり、「大切なのは、答えのない人生を生き抜く力」-そんな優しくも力強いメッセージが心に響く。年齢を超えた青春映画の傑作が誕生した。

ストーリー



 「大切なのは、答えのない人生を生き抜く力だ」 オレゴン州の閑静な郊外住宅地に住む17歳のジャスティン(ルー・プッチ)には、人に言えない大きな悩みがあった。それはいまだに「親指を吸うクセ(サムサッキング)」が治せないこと。
 自分のこんなクセが両親を不安にさせているのはわかっているし、自分でもやめたいと思っているのに、どうしてもやめられないのだ。そんな自分の存在が影響しているのか、最近、母親オードリー(ティルダ・スウィントン)の様子もちょっとおかしい。家族のことより、テレビの人気俳優に夢中の様子だ。途方に暮れるジャスティンにとって唯一の頼みの綱は、ニューエイジ志向のちょっと変わった歯医者のペリー先生(キアヌ・リーヴス)。ジャスティンのクセを見抜いている彼は、その意識下の抑圧を解こうとジャスティンに催眠術をかける。「これからは守護獣が君を守ってくれるよ。今から君の親指は苦くなる」。悩みから解放されると思ったのもつかの間、親指しゃぶりをやめたジャスティンはますます不安になり、学校でも極端な行動に出てしまう。密かに心を寄せている同級生のレベッカ(ケリ・ガーナー)にも、上手く自分を表現することが出来ず、ぎくしゃくする。おかげで先生からADHD(注意欠陥多動性障害)と判断された彼は、抗鬱剤を勧められる。「薬に頼るなんて」と渋い顔をする両親を尻目に、これで未来が開けるならと、勇んで受け入れるジャスティン。
 たしかに薬を飲むようになって以来、彼の毎日はがらりと変わった。朝もしゃきっと起きられるし、やる気も満々。学校のディベート部でも周りが驚くほど積極的に発言し、そんな彼の姿を見て「大人になったわね」と喜ぶ母。だがある日、クラブの仲間に薬を飲んでいるところ見られ、抗鬱剤などドラッグと変わらないとののしられて、思いあまって薬を捨ててしまう。依りどころをなくした彼は、最近マリファナにはまって疎遠になっていたレベッカに会いに行く。マリファナをやりながら徐々に親密な仲になっていくふたり。ようやく本当の自分でいられると思ったジャスティンにしかし、またしてもショックなことが起きる。レベッカに、「これは十代の実験。本気にならないで」と宣言されてしまったのだ。彼女もまた、深い人間関係を築くことに不安を感じているひとりだった。またもや振り出しに戻ったジャスティン。思わず、まだ小さい弟のジョエル(チェイス・オファーレ)にまで相談しそうになるが、ジョエルはそんな兄を見ながら言う。「家族のみんなが兄貴の心配で忙しいから、僕はしっかりしてなきゃならないんだ」。その一言にハッとするジャスティン。振り返れば、ふだん強がっている父親のマイク(ヴィンセント・ドノフリオ)だって、フットボールの選手になる夢を、怪我のために諦めたという過去の挫折から未だに立ち直っていないし、ペリー先生だってニューエイジ派から自己啓発型になったりと、ころころ変わっている。・・・かと思えば、人気俳優に夢中で子供のようだと思っていた母親が、実はジャスティンの「良き理解者」になれずに苦悩していたり・・・。不安や迷いを抱えているのは、自分だけではなかったんだ。
 そんなとき、一通の手紙がジャスティンのもとに届く。両親に黙って応募していたニューヨーク大学からの、なんと合格通知だった。憧れのニューヨーク大学に行ける、と初めて満面の笑みを浮かべるジャスティンを前に、自分のもとから離れていく息子の身を案じながらも祝福する両親。
 そして数ヶ月後。ニューヨークへ向かう飛行機の中で、相変わらず親指を吸っているジャスティンの姿はしかし、自身に満ち溢れ、晴れ晴れとしているのだった。

スタッフ

監督/脚本 : マイク・ミルズ
原作 : ウォルター・キルン
製作 : アンソニー・ブレグマン
    ボブ・スティーヴンソン
製作総指揮 : アン・キャリー
       テッド・ホープ
       ボブ・ヤーリ
       キャシー・シュルマン
共同製作総指揮 : ティルダ・スウィントン
        ジェイ・シャピロ
キャスティング : ジェイニー・マッカーシー, C.S.A
ライン・プロデューサー : カルム・グリーン
撮影監督 : ホアキン・バカ=アセイ
美術監督 : ジュディ・ベッカー
衣装デザイナー : エイプリル・ナピア
編集 : ヘインズ・ホール
   アンガス・ウォール
音楽スーパーバイザー : ブライアン・ライツェル
作曲 : ティム・デラフター
演奏 : ザ・ポリフォニック・スプリー
挿入曲 : エリオット・スミス

キャスト

ジャスティン・コッブ : ルー・プッチ
ペリー・ライマン : キアヌ・リーヴス
オードリー・コッブ : ティルダ・スウィントン
マイク・コッブ : ヴィンセント・ドノフリオ
ジョエル・コッブ : チェイス・オファーレ
マット・シュラム : ベンジャミン・ブラット
レベッカ:ケリ・ガーナー
ギアリー先生 : ヴィンス・ヴォーン

ディベート審査員 : ウォルター・キルン
ディベート役員 : ボブ・スティーヴンソン
10歳のジャスティン : コルトン・ターナー

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