原題:Saint-jacques... La Mecque

フランス映画祭2006出品作品

2005年10月12日フランス公開

2005年/フランス/108分/35mm/ヴィスタ/ドルビーSRD&DTS/カラー/フランス語/ 日本語字幕:丸山垂穂/文部科学省選定(青年・成人・家族向け)/カトリック中央協議会秘書室広報・推薦 後援:フランス大使館 スペイン政府観光局 協力:ユニフランス東京 提供:クレストインターナショナル/ハピネット 配給・宣伝:クレストインターナショナル

2007年09月26日よりDVDリリース 2007年3月10日、シネスイッチ銀座にてロードショー

公開初日 2006/03/15

公開終了日 2006/03/19

配給会社名 0475

解説


◆笑いと涙で現代人のストレスを吹き飛ばすハートウォーミングな人間賛歌の誕生!

ハリウッドでも『スリーメン&ベビー』(1987)としてリメイクされ大成功を収めた『赤ちゃんに乾杯!』(1985)から前作の『女はみんな生きている』(2001)まで一貫して辛辣なユーモア感覚で社会と人間を見つめた作品を手がけてきたコリーヌ・セロー監督が、舞台を美しい自然あふれる巡礼路に移し、余計なものを削ぎ落とした生身の人間同士の触れ合いや心の動きを、より大きな視点で爽やかに描き出した。それが『サン・ジャックへの道』だ。

フランスで起きている巡礼ブームに後押しもされ、本国で公開されるや80万人を動員するヒットとなった。ヨーロッパでもっとも人気の高い巡礼路が持つ自然の美しさや文化的遺産の魅力だけでなく、そこに描かれた素晴らしき人間讃歌に人々は心から魅了されたのだ。

まっすぐ続く一本道を、急勾配の道を、天候に関係なくひたすら自身の足で歩き続ける旅は人生そのもの。歩いてみなければわからないことがいっぱい。荷物は自分で背負わなくてはならないけれど、生きていく上で本当に必要なものなどそう多くはない。いつだって人は変われるし、人生の再スタートを切ることもできる。そんな希望の芽をそこここに息づかせる。映画の登場人物たちと一緒に笑って泣いた後、心は感動と元気に満たされることだろう。

◆世界遺産の巡礼路を舞台に感動と再生のドラマが幕を開け、
観る者は共に1500kmの旅をする

会社経営と家庭の問題でストレスいっぱいの兄ピエール、失業中の夫に代わって家族を支えている頑固なオバサン教師のクララ、アルコール漬けで家族にも見放されたよれよれの弟クロード。互いを許せず強烈に利己的な3兄弟だが、旅の同行者たちそれぞれの心に秘められていた望みや葛藤、愛や絶望などが次第に露わになってゆくと、心ならずも他者と、さらには自分自身と深く向き合わざるを得なくなってゆく……。

生きる過程で作られてしまった殻を破って、他者を受容する柔らかな心を再生してゆく登場人物たちの気持ちと同調するように、風景はその美しさを増す。グリーン・スペインと呼ばれる緑濃い丘陵地帯に続く美しい自然あふれる世界遺産の巡礼路。終着点であるサンティアゴ・デ・コンポステーラにそびえる荘厳なる大聖堂、さらにはヨーロッパ西端の海の輝きを目にした時、映画を観る者は、ずっと一緒に歩いてきたような不思議な達成感に包まれる。そしてまた、登場人物たちと離れがたい感情に心揺さぶられることだろう。

◆人種も地位も性別をも越え、さらに大きくなった監督コリーヌ・セローの新たな視点

コリーヌ・セローの作品では、いつも主人公が想定外の状況に巻き込まれていく。『赤ちゃんに乾杯!』では、独身貴族の男たちが赤ちゃんを育てるはめになり、『女と男の危機』(1992)では、弁護士が妻の家出と会社をクビになるという人生最大の危機に見舞われ、『女はみんな生きている』では平凡な主婦の人生に瀕死の売春婦が飛び込んでくる。本作でも主人公たちは想定外の状況に巻き込まれ、そしていつの間にか自分を変えてゆくことになる。コリーヌ・セローならではの女性の精神的たくましさの描写は健在だが、従来の作品と異なるのは、男女の対比や対立の構図から自由になっていることだ。これまでの作品で、”ダメ男”を笑いのめしてきたセローの辛辣な目は、今回、宗教の偏狭さや人種差別など、「他者を受容しない権威」に向けられる。対照的に、人間に向ける眼差しは、彼らのダメ人間ぶりを互いの毒舌セリフでコケにしてみせながらも、あくまで優しい。そして、身体感覚を忘れてしまったストレス社会に陥っている現代に生き方を模索するきっかけを与える映画を作り上げた。

◆巡礼路を彩る実力派キャスト、スタッフ、そして音楽

キャストには、頑固な肝っ玉母さん・クララ役に、舞台出身のミュリエル・ロバン。エグゼクティブの”ダメ男”・ピエール役に、『アメリ』(2001)のアルチュス・ド・パンゲルン。飄々とした酔っぱらい・クロード役には味わい深い演技で定評のあるジャン=ピエール・ダルッサン。実力派俳優陣がリアリティある演技で観客をにぎやかな巡礼の旅に誘い込む。エリック・ロメール監督の『グレースと公爵』(2001)を手がけたアントワーヌ・フォンテーヌが美術監督を務め、美しい自然のみならず、シュールな幻想シーンでも楽しませてくれる。印象的な音楽を手がけたのはユーグ・ル・バール。生活音にハウスミュージックをミックスしたオリジナリティあふれる音楽センスが光っている。他にオリジナル音楽を担当し、歌声も披露しているマドレーヌ・ベッソンはセローの実の娘である。他には、バッハ、ラモー、ヘンデルのバロック音楽が、穏やかになっていく心境に呼応していくように効果的に使われている。

ストーリー




会社経営と家庭のストレスで薬に依存している兄のピエール、支配的で頑固なオバサン教師のクララ、アルコール漬けで家族にも見捨てられ一文無しの弟クロード。互いを認めず険悪な仲の兄姉弟が、亡き母親の遺産を相続するため、フランスのル・ピュイからスペインの西の果て、聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまで1500kmにも及ぶ巡礼路を一緒に歩く羽目になった。本来、神聖なる旅路のはずだが、無神論者の上に歩くことなど大嫌いの彼らの頭には、遺産の二文字しかない。

このツアーの同行者は、ベテラン・ガイドのギイ、楽しい山歩きと勘違いしてお気楽に参加したハイティーンの女の子たち、エルザとカミーユ、カミーユを追って参加したアラブ系移民の少年サイッド、従兄弟であるサイッドにだまされてイスラムのメッカへ行けると信じ、2人分の旅費を苦しい家計から母親に捻出してもらったラムジィ、頭をターバンで包んだ物静かな女性マチルド。9人の男女が、さまざまな思いを胸に、フランスのル・ピュイから旅の一歩を踏み出した。

果てしなく続く岩山の道。文句タラタラ、さらには差別的な言葉を不用意にもらすピエール。自分の荷物は何ひとつ持参しないのに他人の水を遠慮なく飲んでしまう勝手なクロード。好戦的なクララは、そんな2人と何かにつけていがみ合う。

3人の諍いに眉をひそめるマチルドに向かって、「お母さんを亡くしたばかりなんだよ。許してあげて」と、人を悪く思うことを知らない純粋なラムジィだけが彼らを理解しようとする。

ある日、リュックを軽くしようと荷物を投げ捨てたピエールが、一緒に必要な薬までも捨ててしまい、旅を続けられないと半狂乱で騒ぎ出した時、穏やかなギイが今まで抑えていた怒りを爆発させた。「誰も彼も自分のことばかりだ! きれいな景色も見てやしない。帰りたいのは俺のほうだ!」

我が子が病気と知りながらガイドの仕事を放り出すわけにはいかない苦悩をピエールにぶつけるギイ。だが、ピエールもまた、アルコール依存症の妻を家に残してきている辛さをぶちまける。胸をつかれる思いで見ているみんな……。みな、多かれ少なかれ重荷を背負って生きているのだ。クララにしても、失業中の夫の代わりに家族を養うという現実に生きており、マチルドもまた、過酷な運命の中で絶望と希望の狭間にいた……。

少年ラムジィの願いは、「メッカ」に行くこと、そして旅の間に失読症を直して大好きな母親に喜んでもらうことだった。サイッドは文字を教えてあげてもらえないかとクララに頼み込むが、クララはにべもなく断る。だが、勝手に教え始めたカミーユのめちゃくちゃなやり方を見てはいられず、ついにはみなに内緒で文字を教え出す。貧しいラムジィが生きてゆくのに必要な言葉や文字を、戦闘的な精神をもって的確に教えてゆくクララ。

数百キロも共に歩くうち、ピエールもまた、自身の変化を感じていた。ある夜、ラムジィたちは泊められないと差別する修道院に啖呵を切り、ポケットマネーで全員をパラドールに泊めるという自分でも信じられない行動に出た。いつの間にか薬依存症も治っていた。

爽やかな風を全身で受け、ピレネーを越え、フランスからスペインへ、残り800km地点の丘から下界を臨んだ時、みなは、いつしか互いをひとつの家族のように感じていた……。

一行はまっすぐ続く一本道を、急勾配の道を、天候に関係なくひたすら歩き続ける。それは、まさに人生のように長く起伏に富んだ道。今や彼らは、距離的にも精神的にも出発点からは遙かに離れた地点に立っていた。

1500kmもの徒歩の旅のゴールには、一体何が待っているのだろう…?そして、ささやかなラムジィの願いは叶うのだろうか?

スタッフ

監督・脚本:コリーヌ・セロー
製作:シャルル・ガッソ
製作総指揮:ジャック・アンスタン
製作主任:アラン・サントンズ
撮影:ジャン=フランソワ・ロバン
美術:アントワーヌ・フォンテーヌ 
音楽:ユーグ・ル・バール、マドレーヌ・ベッソン、シルヴァン・デュブレ
録音:ピエール・ロラン、フレデリック・アタル、ユベール・ベルサ
衣装:カレン・ミューラー=セロー
編集:カトリーヌ・ルノー
ミキシング:ジョエル・ランゴン

キャスト

ミュリエル・ロバン
アルチュス・ド・パンゲルン
ジャン=ピエール・ダルッサン
パスカル・レジティミュス
マリー・ビュネル
マリー・クレメール
フロール・ヴァニエ=モロー
ニコラ・カザレ、エメン・サイディ

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