原題:Temporada De Patos

アヒルだって空を飛ぶ。

2004年/メキシコ/35mm /1:1.85 /白黒 /90分/ スペイン語 提供:レイドバックコーポレーション  配給:クレスト・インターナショナル

2007年01月11日よりDVDリリース 2006年5月13日(土)より、シアター・イメージフォーラムにてロードショー!(他、全国順次公開)

公開初日 2006/05/13

配給会社名 0096

解説


最初は2004年メキシコのグァダラハラ映画祭だった。作品賞を含む7部門と国際批評家連盟賞を受賞。次にテサロニキ映画祭で監督賞、ロサンゼルス映画祭ではグランプリと続けて受賞。
そしてカンヌ映画祭、トロント映画祭にも出品され、アメリカのヴァラエティ紙の「これから見るべき10人の監督」にも選ばれた。新しい才能の登場に世界の批評家たちだけでなく、観客も大絶賛の拍手を贈り、その後も『ダック・シーズン』の快進撃はとどまることを知らなかった。
そして、ついにメキシコ・アカデミー賞(アリエル賞)では、本国で記録的な興行成績を誇った大作『イノセント・ボイス12歳の戦場』を押しのけ、主要部門を含む11部門受賞という記録を打ち立ててしまった。『天国のロ、終わりの楽園。』以来、世界的ヒットを連発し、アルフォンソ・キュアロン監督やガエル・ガルシア・ベルナルなど国際級映画人を輩出している近年活況のメキシコ映画界で、まさかこの白黒の長編初監督作が賞を総なめするとは、誰もが驚く大きなニュースとなった。さらに『ダック・シーズン』の勢いはとどまらず、アメリカ公開直前に発表される2006年インディペンデント・スピリット賞の外国語映画賞にもノミネートされ、受賞が期待されている。
そしていよいよ満を持しての日本公開。その魅力の秘密が明かされることになる。

停電がきっかけで普通なら集まるわけもない4人が、午後の数時間を一緒に過ごすある日曜日。14歳のフラマと親友のモコ、同じアパートに住むリタ、ピザ宅配人のウリセス。それぞれが好き勝手なことをしているうちに、いつしか殻が破れて本当の気持ちがこぼれだしていく。フラマの両親は離婚協議中、自分は本当の子供じゃないと不安に揺れ、リタは家族の誰もが自分の誕生日を忘れていることが心寂しく、ウリセスはピザのデリバリーで客にいつも怒鳴られて空しさを覚え、モコは身近な人に叶わぬ恋をしている。それぞれに孤独を感じているこんな4人が、一枚のカモの絵をきっかけに思いもよらない楽しいときを共有し、そこでいつしか希望を見つけ出す。退屈なはずの日曜日が特別な一日へと変わったとき、4羽の飛べないアヒルたちもカモのように空へ羽ばたけるのだろうか。それはきっとこの映画を見終わった後に答えが見えてくるはずだ。ひょんなことから同じ時間を共有することによって生まれたコミュニケーション。それは娯楽にあふれ、自分一人だけの世界に埋没することが簡単な現代においては貴重なものといえるだろう。
2001年『天国のロ、終わりの楽園。』での共演から世界中で人気沸騰した幼ななじみ俳優コンビのガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナ。その2人に続き、またもメキシコから世界を魅了する少年俳優コンビが誕生した。ちょっぴり生意気だけど、思わず抱きしめたくなるような可愛らしさに満ちた”ダニエル・ミランダ&ディエゴ・カターニョ”の2人は、スーパースターへの道を着実に歩んでいるガエル&ディエゴのように近い将来、世界的に活躍する可能性を秘めたスターの原石といえる。この未知数の少年俳優コンビを支えるのは、あどけなさの中に小悪魔っぽい魅力も秘めるリタ役のダニー・ペレアと、現実の過酷さを知ってしまった”大人の空しさ”を表情一つで表現する演技力を持つ、ウリセス役のエンリケ・アレオーラ。エンリケは、今回ただ一人のキャリア豊富な俳優だ。キャストばかりか撮影、編集にとっても初めての長編映画となった本作は、新鮮なキャスト、スタッフが集まったからこそ一人ひとりの気持ちがこもった特別な作品になったのだ。     初長編作品ながら、卓抜した構成力で『ダック・シーズン』の脚本、監督を務めたのがフェルナンド・エインビッケ。短編作品や脚本でキャリアを積み、近年ではミュージックビデオで国際的な注目を浴び、2003年にはMTVで”映画界期待の星”と評価されたエインビッケがついに初めての長編劇映画に挑戦、その期待を超える出来栄えの作品を生み出した。自分が子供の頃に体験した停電というシチュエーションで脚本を書き、素人同然のキャストから自然な演技を引き出した演出力。ひょんなことから白黒で撮ることに決めたというが、これがまさにアパートの一室ですっかり退屈している4人をより軽妙に、よりダイナミックに見せるのに功を奏している。幾何学的な形や立体感といった要素も工夫したショットは、物語の流れや人物描写に独特のリズムとニュアンスを与えている。
『ダック・シーズン』のもう一つの大きな魅力は音楽だ。メキシコで絶大な人気を誇るポップシンガー、ナタリア・ラフォルカデがボサノヴァの巨星ジョアン・ジルベルトの名曲「OPato/ガチョウ(アヒル)のサンバ」をスペイン語でカヴァー。また今注目の人気ヒップホップデュオ、プラスティリーナ・モッシュのアレハンドロ・ロッソがオリジナルスコアを作曲するなどまさにメキシコPOP界の才能が集結した。まったく予想外な場面に流れるベートヴェンのピアノ協奏曲4番の使い方などは、まさに音楽監督ロッソとエインビッケ監督の音楽センスの真骨頂。ストーリー、映像、キャラクター、音楽のすべてにわたって映画ファンが大喝采した最高の”掘り出し物”ムービーがここに誕生した。

ストーリー


ある日曜日の午前11時。
フラマとモコは14歳、小さい頃からの大親友。フラマの母親は2人に留守番を頼み外出した。残った2人は退屈な日曜日を楽しくしようと、欲しいもの全てをお膳立てした。テレビゲーム、ポルノ雑誌、ポテトチップス、コカコーラ、それに宅配ピザもオーダーしよう。フラマとモコの計画は完壁だ。今日は誰にも邪魔されない最高の一日になるはずだったのに、まさか最初のトラブルがドアのすぐそこまで来ているなんて想像もしていなかった。
ゲームが盛り上がっては、いつも肝心な時に停電になることに嫌気が差した2人はピザをオーダ一することにする。ピザ配達人のウリセスは停電の為、803号室の彼らの部屋まで、階段を必死に駆け上る。やっとの思いで部屋までたどりついたウリセスに、フラマとモコは11秒遅かったと、支払いを拒否。ウリセスはお金を貰うまでここを動かないと玄関に座り込むが、最終的にテレビのサッカーゲームで決着をつけることになる。その間もリタのケーキ作りは続く…。そしてまたもや停電。こうして、フラマ、モコ、リタ、ウリセスの日曜の午後が始まる………

スタッフ

監督:フェルナンド・エインビッケ
脚本:フェルナンド・エインビッケ、バウラ・マルコヴィッチ
プロデューサー:クリスティアン・バルデリエーブレ
製作総指揮:ハイメ・ベルナルド・ラモス
撮影監督:アレクシス・サベ
編集:マリアーナ・ロドリーゲス
美術:ディアナ・キロス
メイク・衣装:リッシ・デ・ラ・コンチャ
音楽:アレハンドロ・ロッソ
ポストプロダクション:トラカテオトル・マタ
録音:アントニオ・ディエゴ

キャスト

エンリケ・アレオーラ
ダニエル・ミランダ
ディエゴ・カターニョ・エリソンド
ダニー・ペレア

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