原題:Waitting in the Dark

2006年/日本/カラー/129分/ 配給:ファントム・フィルム

2007年05月25日よりDVDリリース 2006年11月25日、シネスイッチ銀座、シネリーブル池袋にてほか全国ロードショー

公開初日 2006/11/25

配給会社名 0442

解説


17歳で『夏と花火と私の死体』でジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞し、大型新人としてセンセーショナルで鮮烈なデビューを果たした乙一。次々とオリジナリティあふれる新作を発表し、エンターテイメント小説界の俊英として常に新作が待ち望まれている乙一が2002年に発表したサスペンス・ラブストーリー『暗いところで待ち合わせ』は、現在、文庫だけで30万部を記録するベストセラーとなった。一瞬も気の抜けない状況描写とミステリー的な要素、そして、乙一作品ならではの切なさを呼び起こす情感あふれる世界観が多くのファンを魅了し、映画化が熱望されていた作品だ。これまで『ZOO』などが映画化されているが、本作が初めての本格的長篇の映画化となる。

事故により視力を失い、父をも病気で亡くし、住み慣れた一軒家でひとり静かに暮らしているミチル。職場の人間関係に上手く馴染めず、孤立しているアキヒロ。そんな寂しさを抱えたふたりを引き合わせたのは、殺人事件だった。容疑者として警察に追われるアキヒロが、ミチルの住む家へと忍び込む。気配を消して居間の隅にうずくまるアキヒロと、自分以外のものの気配をなんとなく感じながらもいつもと同じリズムで生活を続けるミチル。ふたりの不思議な共同生活は、どこに向かっていくのだろうか……。

盲目の女性と容疑者の同居、そして殺人事件というサスペンスフルな設定を生かしながらも、全編に漂う緊張感を生み出しているのは、ミステリー的な“展開”ではなく、丹念に綴られたふたりの微妙な“心の動き”である。ほんの小さな動作が空気を撹拌するような静かな部屋のなかで、ミチルとアキヒロは言葉ではなく感覚で互いの存在と思いやりを知り、少しずつ心を開いていくのだ。シェルターのように自分を守ってくれる、居心地のいい孤独に慣れはじめていたミチル。生真面目さゆえに孤立して、自分の居場所を探していたアキヒロ。他人と上手く関わることができない不器用で繊細なふたりが出会い、相手を思いやり、互いの心を知ったとき、ぼんやりとだが、明るい未来が見えはじめる。
娘のためにぎこちない手つきで点字を打つ父親の愛情、ミチルを外の世界へと導こうと厳しくも心のこもった手助けをするカズエの友情、そしてミチルとアキヒロの間に芽生えるほのかな希望。不器用ながらも、大きな“一歩”を踏み出す勇気を見つけたふたりの物語は、春の陽射しのように温かな感動を呼ぶ。

監督・脚本をつとめたのは、今村昌平作品の脚本家として高い評価を受けるとともに、監督としても『AIKI』など緻密な人物描写で抜群の手腕を発揮する天願大介。脚本化にあたり、アキヒロを小さな頃は中国で育ち、その後日本に渡った日中ハーフというキャラクターに変更。日常の描写を丁寧に折り重ねていくきめ細かい演出がミチルとアキヒロの抱える影を浮き彫りにし、ラストの“旅立ち”をさりげなくもエモーショナルなものにしている。

瞬時に観る者の心をとらえて離さない確かな演技力で主人公ミチルを演じたのは、日本はもちろんアジアへと活躍の場を広げる若手実力派女優の田中麗奈。「役作りのためにアイマスクをしてピアノを弾く練習をした」という彼女が、暗闇の世界に潜り込んでしまった盲目のヒロインという難役にリアリティ溢れる存在感を吹き込んだ。
不器用で繊細、そして孤独な青年・アキヒロをセリフという表現方法ではなく、眼差し、身のこなしで見事に表現したチェン・ボーリン。デビュー作『藍色夏恋』で脚光を浴びて以来、数々のアジアの合作映画に出演。『シュガー&スパイス 風味絶佳』が公開されるなど日本でも人気急上昇の若き映画俳優だ。ミチルの友人に、映画、ドラマともに話題作への出演が続く井川遥、ミュージカルなど多彩な活躍に注目が集まる宮地真緒、さらにアキヒロの上司役の佐藤浩市、ミチルの父親を演じた岸部一徳ら日本映画界を支える名優陣が顔を揃え、本年最も心温まる作品が完成した。

ストーリー


交通事故が原因で視力を失ったミチル(田中麗奈)は、父(岸部一徳)と二人で静かに暮らしていた。
ところがそんな最愛の父親が突然、病死。
ミチルは深い悲しみを胸に、たった一人の生活を始める。
身の回りの家事を一人でこなすミチルの生活は、一見静かで穏やかに見えたが、その心の中は不安と孤独が今にも溢れ出しそうだった。

毎朝、日差しを感じるかのようにカーテンを開け、窓を開け放ち新鮮な空気を吸うのがミチルの日課だった。彼女の家の目の前には、駅があり、電車の音が聞こえる。
ある朝、いつものように急行電車がホームを通過する音が聞こえた。しかし、いつもと違ったのは静かな朝を切り裂くように鳴り響く電車の警笛、耳障りなブレーキ音・・・
その音の違和感から、何かが起こったという胸騒ぎを感じた。

午前9時5分、突然家のチャイムが鳴った。ドアを開けるミチル。
彼女の目が見えないことを確認するかのように玄関の脇に潜む男。

「どなたですか?」

彼女の問いかけにも全く呼応せず素早く家の中に忍び込んだ男の名前は大石アキヒロ(チェン・ボーリン)。印刷会社に勤めるアキヒロは職場の人間関係にも上手く馴染めず、孤独な日々を送っていた。家に忍び込んだアキヒロは、ミチルに気づかれないよう息を潜めて居間の隅の窓の下に居座った。首を傾げると窓越しに駅のホームが見える。ホームでは救急車や警察官、作業員たちで大変な騒ぎとなっていた。
TVのニュースでは、今朝起こった駅での転落事故で死亡した男が、松永トシオ(佐藤浩市)であること、殺人事件の疑いもあり、その重要参考人が、彼の職場の同僚でもあり、現場から逃走するところを目撃されているアキヒロであることを報じていた。

 ミチルは、いつもと変わらず、幼い頃からの親友カズエ(宮地真緒)と生活に必要なものの買出しに出たり、ふとしたことから知り合った近所に住むハルミ(井川遥)がつとめるイタリアンレストランで食事をする以外は、ほとんどを家の中で過ごしていた。
身の回りの家事を一人でこなすミチルの生活は、一見静かで穏やかに見えたが、その心の中は不安と孤独が今にも溢れ出しそうだった。

ミチルはいつもと同じはずの生活の中で、何か違和感を感じ始める。
朝食用の食パンが減っていたり、夜物音がするだけでなく、かすかな人の気配を感じ始めていた。
こうして、殺人事件をきっかけに、ミチルとアキヒロの不思議な共同生活が始まった・・・

スタッフ

監督:天願大介

キャスト

田中麗奈
チェン・ポーリン
井川遥
宮地真緒

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