原題:wool 100%

捨てられない物、忘れられない過去にとらわれて、凝り固まった偏屈な大人になっていませんか?

2003年度サンダンスNHK国際映像作家賞受賞作品

2005年/日本/カラー/99分/ 配給:クロックワークス

2007年05月25日よりDVDリリース 2006年10月28日、ユーロスペ-スにてレイトショー

公開初日 2006/10/28

配給会社名 0033

解説


各界の才能溢れる女性たちが集結。カラフルで美しいごみ屋敷&摩訶不思議な“モノノケ”アニメーション、どこか懐かしいのに観たことない映像世界!

近所からはごみ屋敷と嫌われる家に住むおばあさん姉妹、梅さん・亀さん。壁に飾られる何十もの時計、電灯、数十台の電話機、古ぼけたおもちゃの数々、台所にはもちろん使用できないほどの食器、冷蔵庫・・・家の中はもちろん、庭、屋根にいたるまで芸術的なまでに積み上げられた廃品は、彼女たちが何十年もの間、毎日のように町を歩き回り拾ってきたもの。ふたりはそれらをヒロイモノと呼び宝物のように大事にしていました。その愛情を受けてか、ヒロイモノは意思を持つ“モノノケ”になっていることをふたりは知りません。ヒロイモノたちは屋敷の傭兵のように梅さん亀さんのふたりっきりの世界を守ってきました。ある日、屋敷に赤い毛糸でセーターを編んではほどく少女・アミナオシが転がり込んできて、モノノケたちを退治していきます。すると不思議なことに梅さんと亀さんの幼い頃の記憶が蘇ってきたのです。廃品を集め、屋敷に閉じこもる原因となった思い出までも・・・そして、アミナオシはその思い出から生まれたモノノケだったのです。
 監督はCMやTVの短編アニメーションのディレクターとして活躍する富永まい。NHK「みんなのうた」の「ありんことひまわり」のミュージッククリップ、CX「ポンキッキーズ」内で放送された「ボーノーモ」シリーズなど、かわいらしいけどちょっと毒のあるキャラクターを作り出し、海外のアニメーション映画祭でも高い評価を受けました。本作での身近なものから生まれたモノノケという発想、おばあさんたちの特異なキャラクター、その今までにない世界観を持つ脚本が評価され、2003年サンダンスNHK国際映像作家賞を受賞。『ウール100%』はアニメーションを効果的に使用し、彼女の持つ感性が存分に生かされた劇場用長編デビュー作品となりました。
 偏屈で変わり者、銀のおかっぱにレトロで奇抜なファッションのおばあさんという、おかしなキャラクターに挑戦したのは、ベテラン女優岸田今日子、吉行和子のふたり。そしてモノノケ・アミナオシには『誰も知らない』の長女役で強い印象を残した北浦愛。撮影時弱冠11歳ながら大女優ふたりを相手に堂々と、そしてのびのびとアミナオシを演じました。まるでお人形のように可愛らしい、無垢な少女時代の梅さん・亀さんにはモデルとして雑誌で活躍中のティアラと兼田カロリナと、一筋縄ではいかない面々が集いました。
 映画のもう一つの主役はなんといっても美しいごみ屋敷。その美術を手がけたのは『ホテルヴィーナス』『茶の味』『恋の門』など日本映画界にはかかせない、都築雄二。廃品が積み上げられた屋敷を作り上げ、表現不可能だった全容は1/10のミニチュアを製作し、富永監督の世界観を完璧に表現しました。さらに、エンディングテーマを歌うのは、アメリカのシンガーソングライター、リッキー・リー・ジョーンズ。彼女の歌声が映画のイメージにぴったりだという監督からのラブコールに応え、本作のためにレコーディングを行いました。そして映画監督デビューも注目される写真家の蜷川実花が本作のスチールを担当。各界の才能が集い、大人のためのお伽話が誕生しました。

ストーリー




捨てられない物、忘れられない過去にとらわれて、凝り固まった偏屈な大人になっていませんか?そんなあたなに送る、可愛いおばあちゃんになるためのお伽噺
 
今は昔か、あるところに梅ばあさん・亀ばあさんという姉妹がおりました。
ふたりは大きな屋敷に住んでいましたが、その屋敷の中はもちろん、庭や屋根の上までごみで埋め尽くされていました。それというのも、何十年もの間、毎日、梅さんと亀さんがごみ置き場を回っては、気に入った廃品を拾ってくるからです。ふたりは廃品を“ヒロイモノ”と呼び、台帳にひとつひとつの絵を描き、番号と名前をつけて記入し、まるで宝物のようにきれいに磨き上げ、家の中に飾るのでした。ある日、ふたりがヒロイモノ集めをしていると、目も覚めるような真っ赤な毛糸玉を見つけました。いつものように持ち帰り保管した夜、その赤い毛糸を手繰って少女が屋敷に迷い込んできました。少女は、ふたりが拾ってきた毛糸玉を手に取り、あっという間にセーターを編み上げました。そして自らセーターを着込み、編み目を念入りにチェックし、納得できないところを見つけたのか、頭を抱え叫びました。「あみなおしじゃ〜!!!」その人間離れした声量は、屋敷を揺らすほどの大きさで、耳を塞がずにはいられません。少女は叫んだ後、セーターを着たまま裾からほどき、また黙々とセーターを編み直し始めました。あっけにとられ見つめるふたり。少女は疲れたのか、急にばったり倒れて眠ってしまいました。
 少女はその日からなぜか屋敷に居付いてします。セーターを編んでは「あみなおしじゃー」と大きな声で叫び、また編み直す。そしてまた叫ぶ、また編み直す…この騒音に最初は迷惑がっていたふたりですが、なぜだか少女のことが気になってしかたありません。ついに少女に「アミナオシ」と名前をつけ、他のヒロイモノと同じように台帳に記入することにしました。
ところが、困った事になりました。アミナオシがふたりの大事なヒロイモノを次々と壊してしまうのです。ふたりは何度もアミナオシを叱りますが、まったくやめる気配はありません。
夜、静まった屋敷の2階にヒロイモノ台帳を手にしたアミナオシがいました。台帳と飾られたヒロイモノを照らしては次々と壊していきます。実は、この台帳に記入されたヒロイモノは、長い月日の間に意思を持つ、“モノノケ”になっていたのです。彼らは自分たちを始末しようとするアミナオシに襲いかかってきますが、アミナオシはモノノケたちの攻撃に手こずりながらも次々と退治していくのでした。
そんなある日、梅さんと亀さんは不思議なことに気づきます。アミナオシがヒロイモノを壊していくにつれて、様々な記憶が蘇えってきたのです。お母様と3人で暮らしていた子どもの頃、そして初めて恋をした少女の頃・・・そこには、ふたりが廃品を集め屋敷に閉じこもる原因となったある出来事がありました。

スタッフ

監督・脚本:富永まい
制作:ピラミッドフィルム
プロデューサー:遊佐和彦、原田雅弘
撮影:瀬野敏
美術:都築雄ニ
音楽:矢口博康
照明:尾崎智治
録音:前田一穂
ラインプロデューサー:関友彦
助監督:市原大地
助監督:谷口正行
編み物監修:八田幸子
スタイリスト:三田真一
着物制作:田島貴代子
ヘアメイク:小西紳士
スチール;蜷川実花

キャスト

岸田今日子
吉行和子
北浦愛
兼田カロリナ
ナレーション:小池栄子

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