原題:Bashing

第58回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門公式参加作品 第6回東京フィルメックス コンペティション部門最優秀作品賞受賞作品 第24回テヘラン・ファジル国際映画祭審査員特別賞受賞作品

2005年/日本/ 82min 配給:バイオタイド

2006年6月3日、シアター・イメージフォーラムにて公開

(C)2005 Monkey Town Productions  

公開初日 2005/11/19

公開終了日 2005/11/27

配給会社名 0424

解説


ひとりの女性が日本と決別した—。彼女が彼女であるために。
05年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映され、世界各国の映画関係者に衝撃を与えた問題作が、ついに日本で解禁される!!

バッシング=“強く叩くこと。手厳しくやっつけること”を意味するタイトルが付いた本作は、04年にイラクで起こった日本人人質事件をヒントに、帰国した女性が周囲からの激しい批判を浴びながらも、自らの意思で再び中東へ向かうまでの葛藤の日々を静かに映し出していく。それは、リアルかつリリカルに綴られたひとりの女性の“旅立ち”の物語である。
カンヌ国際映画祭コンペティション部門への、黒澤明、今村昌平に続く日本映画単独出品をきっかけに、海外での公開が次々と決定していく中で、もはや語ることすらタブー視されている事件を想起させる題材のため、国内では公開が見送られていた。しかし05年、第6回東京フィルメックスにおいて、「描かれたテーマの重要性と、それに合った映像スタイル」が高く評価され、見事グランプリを受賞。こうした国内外からの作品に対する高い評価を得て、ようやく劇場公開が決定したのだ。

監督は、自主製作というスタイルをとりながら、『海賊版=BOOTLEG FILM』(98)、『殺し』(00)、『歩く、人』(01)、そして『バッシング』と4度カンヌ映画祭に参加している気鋭の映像作家・小林政広。実際の事件を扱いながらも、その眼差しを人間そのものへ向け、誰も身にも起こりうる問題として提起している。主演の有子を演じるのは、『歩く、人』、『フリック』に続き、3度目の小林作品参加となる占部房子。周囲からの執拗な批判と中傷を受けてもがき苦しみながらも、終始、自分の意思を貫こうとする女性を熱演。そして、田中隆三、大塚寧々、香川照之と、小林組の常連俳優が脇を固める。本作は、現代日本社会を痛烈に批判するとともに、そこに生きる私たちの人間関係のあり方を問いかける。主人公有子は、いつか来るかもしれない、あなたであり私たち自身なのだ。

ストーリー






 北海道のとある海辺の町で暮らす高井有子(占部房子)は、突然、アルバイト先のホテルをクビにされた。有子は中東の戦時国でボランティア活動をしている最中、武装グループに拉致・監禁されて、人質となった。無事に解放されて帰国したものの、自己責任を問われ、世間から激しいバッシングを受けていた。ホテルの支配人・井出(香川照之)いわく、そんな有子の存在が職場の雰囲気を悪くしているという。

「私がしたことって、そんなに悪いことなの?」

 その頃、有子の父・孝司(田中隆三)もまた、30年間勤めた工場から退職を強いられた。有子の行動を非難するメールや電話が工場にまで寄せられ、業務に支障をきたしているという。

「どうして、ウチの娘が責められなきゃいけないんですか?」

 孝司は辞表を提出した。家に籠もり昼間から酒を煽るようになった孝司は、ある日、マンションのベランダから飛び降り自殺した。葬儀後、それまで有子を見守っていたはずの継母・典子(大塚寧々)だったが、ついに抑えていた感情を有子にぶつけた。

「あの人を返してよ!」

 帰国してから会話の途絶えていた有子と典子だったが、その夜、初めて互いの心情を吐露した。泣きながら有子は再び中東に戻ることを典子に告げた。

「この国じゃ、皆が怖い顔してる。私も、怖い顔しているんだと思う」

 有子は、戦火の中で生きる子供たちへの駄菓子をスーツケースに詰め込むと、家を出た。
もう、戻らない–。それは有子の日本社会との決別だった。

スタッフ

脚本・監督:小林政広
撮影監督:斉藤幸一 
編集:金子尚樹 
助監督:川瀬準也 
録音:秋元大輔 
効果:横山達夫 
エンディングテーマ曲:林ヒロシ「寒かったころ」(MIDIレコード「とりわけ十月の風が」所収)
製作:モンキータウンプロダクション

キャスト

大塚寧々
占部房子
田中隆三
加藤隆之
本多菊次朗
板橋和士
香川照之 

LINK

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『バッシング』宣伝部オフィシャルブログ::http://blog.bashing.jp/
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