2005年/日本/カラー/35mm/1:1.85/ドルビーSR/112分/ 配給:ビターズエンド

2006年11月10日よりDVDリリース 2006年5月20日、テアトルタイムズスクエア、銀座テアトルシネマ他にて、全国ロードショー!

公開初日 2006/05/20

配給会社名 0071

解説



傷ついた心北海道の大地の上、人のぬくもりに触れ、また、歩き出す。
”輓馬”—— 世界にたったひとつしかない北海道の文化遺産——この映画の舞台。美しくも厳しい環境を象徴的に表すのが、たくましい北の馬たちが吐き出す白く大きな息。元は農耕馬だった輓馬が重いソリを曳きながらきつい障害(坂道)を2度越えていくレースに、観る者は思わず引き込まれ、自分の人生を重ね合わせていく……。

東京でのビジネスで成功を垣間見た主人公・矢崎学はバブル崩壊後の日本経済の中、経営していたネット販売会社を倒産させてしまう。妻からも絶縁され派手な生活も、友からの信頼も、すべてを無くし行き場を失った学は、ふるさとである北海道・帯広に戻るしかなかった。そこには、北海道特有のソリを曳く競馬”ばんえい競馬”の厩舎を細々と運営する兄・威夫がいた。兄の厩舎で個性あふれる仲間たちと馬と共に寝起きする生活。厳しいながらもいのちに囲まれ、地に足をつけた暮らしの中で、学は自分の弱さを直視し、再生へのきっかけを掴んでいく。「やり直したい、まだやり直せる……」

81年「遠雷」でブルーリボン監督賞を受賞して以来、数々の話題作を手がけてきた名匠・根岸吉太郎。その才能と経験に基づいたきめ細かい演出力が高く評価されている。主演である伊勢谷友介のみならず、目本映画界を代表する名優・佐藤浩市とは本作で初めてタッグを組む。そしていまや日本映画界を代表する女優として地歩を固めてきた小泉今日子も本作で鮮やかな存在感を示している。勿論、物語に華を添える若手女優・吹石一恵とは初の顔合わせ。ベテラン監督と初めて相対する俳優陣が日本映画界に新たなケミストリーを巻き起こす。脇を固める俳優陣にも、名優たちが結集!山崎努、草笛光子、津川雅彦、香川照之、椎名桔平、小澤征悦、でんでん……個性溢れる俳優たちの競演により、かつてない日本映画が誕生した

主人公・矢崎学は都会の虚栄に憧れ、一度ふるさとと家族を捨てた男。その学が久しぶりに再会する兄・威夫と不器用に対峙していく過程の中に、根岸流の”兄弟愛”が描かれていきます。老いた母とのショッキングな再会も学に自分と家族の関係を見つめ直すきっかけを与えます。学は自分を再生させるために、家族と絆を再び取り結ぶために、もがき苦しみ、やがて、ふるさとの人々と馬たちに癒されていきます。

ストーリー






帯広の輓曳競馬場。真冬の北海道だというのにスーツにステンカラーコートという不似合いな姿で、矢崎学(伊勢谷友介)が現れる。そこで出会った丹波というジイさんに馬券の買い方を教わりながら、最後のレースでウンリュウという馬に全額を賭ける。ウンリュウは負ければ馬肉にされる瀬戸際のレースで、必死になるはずと丹波は言う。しかし期待を裏切られ、見事に一文無しになった学は、フラフラと町をさまよった後、厩舎にたどり着く。厩舎には、東京の大学に入ってから捨ててしまっていた家族が生活しているはずだった。

学の兄・威夫(佐藤浩市)は輓曳競馬の元騎手で、今は調教師をしており厩舎を経営していた。学の学費を仕送りしてくれたのも、一回り年上の兄だった。親代わりのように面倒を見てくれた威夫なのに、弟の学は感謝するでもなく長く連絡を取らずにいた。頭の良かった学は、一流大学を卒業後、一流商社に就職し、その後自分で貿易会社を興し、ネット販売事業を手掛け、都会の虚栄の中で派手な暮らしに浸りきった。自分の結婚式の際には、兄だけは仕方なく呼んだが、田舎臭い母を恥じて、死んだと偽っていた。

そんな家族の元へ、学は13年ぶりに帰ってきた。突然現れた弟を、兄は訝しく思いながらも、競馬開催中に厩舎の中に入った者は、開催が終わるまで外に出てはいけないという規則があるため、学を厩務員見習いとして皆に紹介し、馬の世話をさせることにする。厩務員として働く人々の中には、学の幼なじみのテツヲ、なかなか騎手になれない富永、都会の生活に憧れる湯原がいて、さらに賄い婦の
晴子さん(小泉今日子)、女性騎手の牧恵(吹石一恵)、そしてウンリュウ(=一文無しにさせられた馬)が学に興味を持ち、受け入れてくれる。思わぬ展開に学もしばし安堵し、厩舎での生活を楽しんでいく。

しかし、否定し続けていたふるさとに学が帰ってきた理由が徐々に暴かれていく。学の友人で会社の共同経営者だった須藤が、ある日厩舎を訪ねてくる。会社を倒産させ、その責任から逃れるように失踪した学を追いかけてきたのだ。須藤は裏切り者の学に見切りをつけ、後始末のため東京に戻っていく。弟の行動に不審を抱いた兄は、学を追求し真相を聞く。行き場を失った学に、威夫は「せいぜい
こき使ってやる」と宣言する。学はただ従うしかなかった。

ウンリュウの世話をしながら学は、やがて馬肉にされてしまう馬に崖っぶちに立たされた今の自分を重ね合わせていき、なんとかもう一度ウンリュウをレースに出し勝たせたいと必死に世話役を務める。「馬を見てると、気持ちがやわくなってこねえか。……馬はいいべ」という兄の言葉が弟の胸に染みていく。ウンリュウ再生に賭ける学、それを見守る威夫。そして最後のレースの日がやってくるのだった……。

スタッフ

監督:根岸吉太郎
原作:鳴海 章
脚本:加藤正人
製作:若杉正明
プロデューサー:田辺順子
撮影:町田博
美術:小川富美夫
照明:木村太朗
録音:小野寺修
編集:川島章
衣装デザイン:小川久美子
ヘアメイク:青木映子
装飾:小池直実
助監督:高橋正弥
ラインプロデューサー:鈴木勇

キャスト

伊勢谷友介
佐藤浩市
小泉今日子
吹石一恵
山崎努
草笛光子
椎名桔平
でんでん
山本浩司
岡本竜汰
出口哲也
小澤征悦
津川雅彦

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