原題:Match Point

2006年 第78回アカデミー賞脚本賞ノミネート 2006年 第63回ゴールデン・グローブ賞 4部門ノミネート作品賞/監督賞/脚本賞/助演女優賞

2005年イギリス/提供:BBCフィルムズ・セーマ・プロダクションSA/カラー/2時間4分/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル 配給:アスミック・エース

2006年8月19日、恵比寿ガーデンシネマ、シネスイッチ銀座 他 全国ロードショー

公開初日 2006/08/19

配給会社名 0007

解説


マッチポイント—あと1点でゲームの勝敗が決まる、最後の得点。
欲望と運に翻弄される、男と女。運はどっちに転ぶのか?
 2005年第58回カンヌ国際映画祭で、コンペティションの作品を押さえマスコミの話題をさらった作品があった。イギリス上流社会を舞台に、愛欲の衝動、情熱、裏切りを描く濃厚な人間ドラマ。息つく暇なく “運”に導かれる、スリリングで魅惑的なサスペンス──『マッチポイント』である。
 生まれ育ったニューヨークを誰よりも愛し、ニューヨークでのドラマにこだわり続けてきたアレンが、36作目にして初めて舞台をロンドンに移し撮影した意欲作。主演には、若手実力派のジョナサン・リース・メイヤーズ、世界で最もセクシーな女性100人のNo.1に選ばれ光り輝くウディ・アレンのミューズ、スカーレット・ヨハンソン。ビビッドで旬な才能が顔を揃えた。
 2006年第63回ゴールデン・グローブ賞4部門ノミネート、2006年第78回アカデミー賞脚本賞ノミネート。世界中のマスコミから賞賛を浴びた、ウディ・アレン監督によるいまだかつてない衝撃作がついに日本上陸となる。
 ロンドンに住む元プロテニス・プレイヤーのクリス・ウィルトン。野心的なクリスは、彼がテニスを教えている大金持ちのトムと親しくなり、やがて彼の妹クロエと婚約、結婚する。クロエの父の経営する大企業でも重役ポストを与えられ、憧れの上流階級への仲間入りを果たす。お金、社会的地位、妻—着実に夢に描いてきた生活を手に入れていくクリス。だが彼は挑発的なトムの婚約者、ノラにどうしようもなく惹きつけられ、関係を持ってしまう。
 妻はイギリス上流階級のお嬢様。 愛人は美しいアメリカ人の女優。しだいに、妻クロエとノラとの間の二重生活を密かに築いていくクリス。愛欲と野望の狭間でクリスの想いは激しく揺れ動き、ついにとんでもない結末へと辿りつく……。
 ウディ・アレンの作品ほど芸術の香りに満ちている映画はない。今回も類にもれず小説や戯曲、詩、絵画などの引用がさりげなくちりばめられ、皮肉と警句を見事にふんだんに振りまく。そして巧みに幾重にも仕掛けられたミスリーディングに頭を悩ませる者ほど、観る者はアレンの巧妙な魔法にはまっていく。しかし今回一番の素晴らしさは、こうして練り上げられた脚本と共に、ヒッチコックスリラーを彷彿させる、濃厚ながらも分かりやすい人間ドラマ。そのモティーフとなっているのは、おそらくセオドア・ドライサー原作のアメリカ現代ロマン『アメリカの悲劇』と思われる(さらに映画化はモンゴメリー・クリフト、エリザベス・テイラー主演、ジョージ・スティーヴンズ監督作『陽のあたる場所』)。立身出世をもくろみ、上流階級の家に取り入ったテニスコーチ クリスが、妻の兄の婚約者との情事に足を踏み入れとんでもない結末を招いてしまう……。一見ありがちな物語をアレンが淡々とかつスリリングに折り畳む。そして息を呑むラストの展開。オープニングからクライマックスまで、アッケラカンとしながらもスリリングなストーリーから観客は目を離せなくなるのだ。
 今回ウディ・アレンは、旧知のスタッフの協力を得ると同時に、そのスタッフのほとんどを優秀な英国在住スタッフで固めた。衣装には『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』のジル・テイラー、撮影は『エリザベス』『アバウト・ア・ボーイ』のレミ・アデファラシン、美術は『アバウト・ア・ボーイ』のジム・クレイ。彼らとの仕事はアレンをこの上なく満足させ、ロンドンでの深みある映像を作り出すことに成功した。
 そして才能豊かな演技陣。主人公であるアイルランド出身の元プロテニス・プレイヤー、クリス・ウィルトンには『ベルベット・ゴールドマイン』『M:i:Ⅲ』と飛躍的な活躍を見せるジョナサン・リース・メイヤーズ。きまぐれな運に翻弄され、次第に堕ちていく青年を好演。挑発的な態度でクリスを誘惑する、アメリカ人の女優ノラ・ライスには『ロスト・イン・トランスレーション』『真珠の耳飾りの少女』のスカーレット・ヨハンソン。大胆な演技とその官能的な肉体を余すところなく披露している。ノラのフィアンセで大富豪の息子トム・ヒューイットを演じるのは『チェイシングリバティ』に次いで2作目となるマシュー・グード。クリスの妻にしてトムの妹、クロエ・ヒューイット・ウィルトンには『Dear フランキー』のエミリー・モーティマー。そして、トムとクロエの父親、大富豪のアレックス・ヒューイットには『25時』『アダプテーション』の名優ブライアン・コックス。若手からベテランまで豪華なキャストが個性を輝かせている。
 ウディ・アレン映画と言えばスクリーンいっぱいに響き渡るジャズやスタンダード・ナンバーの調べ。しかし本作を魅力的に飾り付けたのは、オペラの名曲たち。伝説のテノール歌手、エンリコ・カルーソーの演奏を中心とした、ヴェルディやロッシーニなど時代を超えて愛されるオペラのスタンダード・ナンバーだ。
 そして、アレン作品では、ロケーションが登場人物のキャラクターやライフスタイルを物語る重要な役割を担う。今回ロケをおこなったロンドンでもアレンが選んだのはいつもの通り文化の香り高いコンサバなロケーション。おしゃれに決め込むデートにはカルチャー色の強いスポットが中心に選ばれた。

ストーリー


妻はイギリス上流階級のお嬢様。愛人は美しいアメリカ人の女優。
二重生活の先に待っていたのは、思いもよらない衝撃的な結末…。

男は人生の深遠を覗き”運に恵まれた”とつぶやく
ただ、運に左右される人生は不安だ
自分の力が及ばないからだ
テニスの試合でボールがネット上に当たる
その瞬間 ボールがどっちに落ちるか──
運良く向こうに落ちたら、勝ち
こっちに落ちたら、負けだ

ロンドン。アイルランド人のクリスは英国の上流階級に憧れる野心家。
プロテニス・プレイヤーの道を諦め特別会員制テニスクラブでコーチの職に就くと、すぐさま大金持ちのトムと親しくなる。オペラの席でクリスに一目惚れしてしまったトムの妹・クロエは、郊外の別荘で開かれる親族のパーティに彼を招待する。クリスはそこでコロラド出身のアメリカ人、ノラと出会う。「なぜ、アメリカ美人が英国の上流社会に?」「あなたって攻撃的なゲームをするのね」「君は官能的な唇をしているね」その挑発的な態度と魅惑的な容姿に惹かれてしまうクリス。しかし、彼女はトムの婚約者だった。
クリスとクロエはロンドンに戻ると、サーチ・ギャラリーでのデートを楽しむ。二人は結ばれ、付き合い始める。テニスコーチの仕事に満足せず、「人生を賭ける仕事がしたい」と言う彼の思いを、クロエは企業家の父・アレックに伝える。彼を気に入っているアレックは、母・エレノアの心配をよそに自分の会社の管理職を与える。絶好のチャンスを手に入れ、万事が順調に進むクリス。しかし、どんな時もノラのことが頭を離れない。
ある日クリスは偶然街でノラと出会い、彼女のオーディションに付き合う。
緊張して上手く演じられなかったと落ち込む彼女を飲みに誘うクリス。酔っ払ったノラは、英国上流社会の中で自分と同じ外国人というクリスに親近感を感じたのか、少しずつ自分自身のことを話し始める。女優としてなかなか道が開けないことや悲惨だった家庭環境のこと、トムの母に認めてもらえないこと──。そして、酔った勢いでいたづらにクリスを誘うのだった。「私って、男が夢中になる特別な女なの。決して後悔させないわ」
ヒューイット家の別荘に再び招待されたクリス。アレックは、彼を次期役員に考えていると告げる。一方エレノアから女優を諦めるよう厳しい助言を受けたノラは、怒りと哀しみを抑えられず、大雨の中に飛び出してしまう。クリスはその様子に気付き、後を追い掛ける。「一人にして」とクリスを追払うノラだったが……降り続く雨の中、二人は全てを忘れ体を求め合ってしまうのだった。
ロンドンに戻ると、「酒の勢いだった」とノラはクリスに冷たく接する。しかしクリスは、たった1回の関係でもあの激しく情熱的な情事を忘れることが出来ない。そして偶然出会ったテニス時代の友人ヘンリーに漏らす。
「人生はまるでテニス上のボールだよ」と。クロエの両親から義理の息子になることを薦められるクリスだが、心はノラに奪われていた。しかし、所詮はお互いに義理の姉弟になる関係と考え、クリスは結婚を決意する。
アレックが用意したテムズ川沿いの超高級マンションでクリスとクロエは新婚生活を始める。しかしトムから、ノラとはすでに破局し別の女性と結婚することを聞かされる。急いでノラに連絡をするも電話は不通。
部屋も引き払った後で、行方は分からなくなっていた。
二度とノラには会えないのか。落ち込むクリスは職場でも家でも苛立ちを隠せない。そんなある日、クロエとの待ち合わせをしたテートモダンで、偶然にもノラとの再会を果たす。一度はアメリカへ帰りロンドンに戻ってきたばかりだと言う。嫌がる彼女から無理やり電話番号を聞き出すクリス。そして二人の密会が始まった。官能的なノラとの情事におぼれていくクリス。
妊娠に躍起になる妻と、魅惑的な愛人との二重生活。そんな中、順調だったはずのクリスの歯車は少しずつ狂い始める。日陰の身が我慢できないノラは、クリスに不満を激しくぶつけ出す。しかしクリスはせっかく手に入れた上流階級の生活や仕事を捨てることも、クロエへの”愛”とは違うノラへの”愛欲”も諦めることができないでいた。
攻め寄るノラの気持ちをごまかしながら生活や仕事の合間をぬって会い続けるクリスに、突然、ノラは自分が妊娠したと告げる。堕ろすか、産むか。
激しく言い争う二人。ノラは子供を産んで二人で育てると言って譲らない。
妻との離婚話を毎日先送りにし結論を出さないクリスに、怒り狂うノラ。
ついには会社まで押し掛けて来る。「クロエに暴露してやる!」。
一方、クリスはクロエからも浮気を疑われ始めていた。ノラか、クロエか。
追い詰められたクリスは、ついに究極の選択を迫られる。全てが上手くいっていたはずなのに……嘘で粉飾されたクリスの人生は破綻をきたす。逃げ道を失ったクリスは、ある計画を思いつく。
大型の取引に成功した日、クリスは「仕事終わりに会いに行く」とノラに電話をする。素直に喜ぶノラ。テニスバッグを抱えアパートへ向かうクリス。バッグには別荘から無断で持ち出した猟銃を潜めていた。隣りに住むイーストビー夫人を騙して部屋に入り込み、躊躇いもなく銃を放つ。強盗に見せかけるべく金品を手当たり次第にポケットに詰め込む。
息を潜めノラの帰宅を待つクリス。何も知らずに帰宅したノラに……クリスは引き金を引いた──。
罪悪感に涙し震える自分を押さえながら、クリスはクロエとの待ち合わせ場所へと急ぐ。翌朝、新聞でノラの死を知って驚くクロエに同調するクリス。記事は、盗み目当てで老夫人を殺した犯人に偶然遭遇したノラが殺された、と報じていた。
クロエの妊娠が発覚、クリスとクロエの安定した生活が始まろうとする矢先、クリスに警察から電話が入る。ノラ殺害に関する事情聴取の依頼だ。クリスは証拠の隠滅の為、イーストビー夫人から奪った金品を川へ投げ捨てる。しかし最後に放り投げた指輪は、柵の上に当たって弾み、川には落ちず手前に転がり落ちてしまう……。 
順風満帆だったはずのクリスの運命は、果たしてどうなってしまうのか──?

スタッフ

脚本・監督:ウディ・アレン
製作:レティ・アロンソン、ゲイレス・ワイリー、ルーシー・ダーウィン
共同製作:ヘレン・ロビン、ニッキー・ケンティッシュ・バーンズ
製作総指揮:ステーヴン・タネンバーム
共同製作総指揮:ジャック・ローリンズ、チャールズ・H ・ジョフィー
撮影監督:レミ・アデファラシン
美術:ジム・クレイ
脚本:アリサ・レプセルター
衣装:ジル・テイラー
キャスティング:ジュリエット・テイラー、ガイル・スティーヴンスC.D.G.
提供:BBCフィルムズ・セーマ・プロダクションSA

キャスト

スカーレット・ヨハンセン
ジョナサン・リース・メイヤーズ
ブライアン・コックス
マシュー・グード
エミリー・モティマー
ペネロピー・ウィルトン

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