原題:Tickets

2005年3月25日、本国UKで初公開

2005年/イギリス・イタリア/カラー/110分/ドルビーデジタル/1:1.85/ 配給:シネカノン

2007年04月25日よりDVDリリース 2006年10月28日(土)より渋谷シネ・ミューズ、他全国順次ロードショー

公開初日 2006/10/28

配給会社名 0034

解説

78年『木靴の樹』のエルマンノ・オルミ、97年『桜桃の味』のアッバス・キアロスタミ、そして今年『麦の穂をゆらす風』のケン・ローチ。全員がカンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムド−ルの受賞者で、約30年から40年の長きに渡り世界中の映画ファンのみならず作り手からも愛され、そして尊敬されてきた名匠たちだ。この3人が独立したエピソードを1本につないだいわゆるオムニバス形式ではなく、同じ舞台背景、重なりあう登場人物で互いの物語につながりを持つ、全く新しい“共同長編”とでも言うべき1本の作品を創り上げた。それは脚本の段階からお互いがアイディアを出し合い、それぞれの乗車券から始まる3つの物語を巧みに織り上げた奇跡のようなコラボレーションだ。3人が共鳴し合いながらも、独自のスタイルを溢れさせる映画の醍醐味と、愛を知り孤独を知っている真に優れた映画監督の深いまなざしがなければ描けない、かけがえのない人生の滋味と希望、そして溢れる歓びがここにある。

 ローマへと向かう特急列車に乗り込んだ様々な人種と階級の人々。そこで描かれるのは彼らが手にした1枚の乗車券がもたらす哀しみ、不安、残酷さ、不平等、そしてそれでもなお失われない愛と希望の物語。悪天候のために飛行機をあきらめ、インスブルックから列車でローマに帰るはめになった初老の大学教授は、予期せぬ心のときめきに出会いその思いをきっかけに、これまでの自分なら考えられないようなひとつの行動をとる。何の目的も見つけられずに流されながら生きている青年は、自分自身と真摯に向き合うことでやっと未来へと目を向けるようになる。長い間わがままで自分勝手に生きてきたある中年女性は、人生は誰にも頼らずに一人で歩いて行かなければならないことを思い知らされる。そして夢にまで見たサッカーチャンピオンズ・リーグの試合を観るためにスコットランドのグラスゴーからやって来たセルティック・サポーターの3人の若者たち。彼らもまた自分たちがしっかり世界とつながっていることを知り、限りない未来への可能性を見つけ出す。そして偶然めぐり会った乗客たちは、それぞれの新しい人生の選択と可能性の物語へと旅立ってゆく。

ストーリー

1枚目のチケット
 初老の大学教授は、オーストリアへの出張からローマに帰る飛行機が全便欠航のため、仕事相手のオーストリア企業の女性秘書に便宜を図ってもらい、インスブルックからの列車で帰ることになる。遅れて駅に着くと、テロ対策の警備のために出発が1時間遅れるという事で乗り遅れずに済んだが、教授はたった一人の孫息子の誕生パーティーの時間までにローマに戻れるのだろうかと不安に思っていた。人があふれかえる構内で、やっと彼女と落ち合い乗車券を受け取る。列車の出発を待つ間、知性と美しさにあふれた彼女に魅了されていく教授。しかし彼は出発しなければならない。
 
 車内で一人きりになった教授は、彼女に思いを馳せている自分に気がつく。いつもなら移動時間にもパソコンで仕事を続けていたが、彼女にメールを書いてみようと思いつく。しかし書き出しからどう言葉を繋げていいのか分からず、なかなか文章は進まない。ふと窓に目をやればそこには自分の姿が映り込むが、やがてそこに初恋の少女が重なってゆく。そしてまるで白日夢のように、自分があの美しい女性と食事をしている姿を思い浮かべるのだが……。

2枚目のチケット
 翌朝列車はイタリアの小さな駅に停車する。列車を乗り換える移民家族たちと共に、太った中年女性が、息子のような年齢の青年フィリッポを連れて列車に乗り込む。兵役義務の一環として、将軍の未亡人の手助けを命じられたのだ。厳しい訓練をするよりも将軍夫人に仕える方が楽だろうと考えていたが、今では彼女の傲慢さにうんざりしていた。
 
 夫人は混み合った車内を強引に進んでいくと、「乗車券は二等車だ」という青年の意見を無視し、一等車の空席に腰を落ち着ける。フィリッポがトイレで不在の時に、夫人が携帯電話で話し始めると、見知らぬ男性から「それは自分が席に置いておいた携帯電話だ」と話しかけられる。彼女は無視し続けるが、男は引き下がらず夫人と口論に。そこに通りがかった車掌の機転で、事なきを得る。
 
 一方、フィリッポは偶然にも同郷の少女2人と出くわす。昔の事を話しているうちに彼の胸の中には、あの頃の情熱を持って生きていた自分が浮かんで来た。彼はもう少しその少女と話したかったが、夫人の意地悪で甲高い怒鳴り声に邪魔されてしまい……。

3枚目のチケット
 その頃、列車内のビュッフェでは、スコットランドからやって来たスーパーマーケットの店員仲間である3人、ジェムジーとフランクと“スペースマン”が旅を楽しんでいた。彼らの愛するサッカーチーム、セルティックF.C.が、人生で初めてチャンピオンズリーグの準々決勝に進出するのだ。少ない給料から、ローマで行われる歴史的な試合、対A.S.ローマのアウェー戦の入場券と列車の乗車券を買いやって来たのだ。
 
 ビュッフェ車両でサンドイッチを食べていると、マンチェスター・ユナイテッドのベッカムのユニフォームを着た少年を見つける。サンドイッチを少し分けてあげると、少年は「アルバニア出身で、ローマに働きにでた父親に会いに家族でやって来たのだ」と言う。サッカー好きの彼らはすぐに仲良くなった。ジェムジーが試合の入場券を少年に見せびらかしていると、通りがかった車掌が床に置いた荷物につまづき一悶着が起こる。そして、少年は席に戻っていった。彼が3人にもらったサンドイッチを家族で分け合って食べていたのを見たスペースマンは、残りのサンドイッチを全て彼ら家族にあげるのだった。
 
 その後も3人は旅の興奮を満喫していたが、車掌が検札に来ると雰囲気が一変してしまう。どこを探しても、ジェムジーの乗車券が見あたらないのだ。「乗車券は必ず買った」と説明するが車掌は信用してくれない。「今すぐ乗車券を見せるか、新しい乗車券代と罰則金を払わないと、警察に引き渡す」と迫る車掌。3人にお金の余裕などある訳ない。そんな時フランクが、「あのアルバニアの少年が、試合の入場券を見せている時に、乗車券を盗んだんじゃないか?」と言い始め……。

スタッフ

監督:ケン・ローチ、アッバス・キアロスタミ、エルマンノ・オルミ
脚本:ポール・ラヴァーティ、アッバス・キアロスタミ、エルマンノ・オルミ
撮影:クリス・メンゲス、マームード・カラリ、ファビオ・オルミ

キャスト

マーティン・コムストン
カルロ・デッレ・ピアーネ
フィリッポ・トロジャーノ
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ

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