原題:Love in thoughts

ぼくらは一番美しい瞬間にこの世を去るべきだと思わないか?

2004年香港国際映画祭(コンペティション部門) 2004年イスタンブール国際映画祭(コンペティション部門) 2004年ヴェローナ映画祭(コンペティション部門)*最優秀作品賞受賞 2004年ブリュッセル・ヨーロッパ映画祭(コンペティション部門) 2004年ニューヨーク・ゲイ&レズビアン映画祭 2004年マドリッド・ドイツ映画祭 2004年モスクワ国際映画祭 2004年カルロヴィヴァリ国際映画祭 2004年ヴァレンシア・ラ・モストラ映画祭 2004年コペンハーゲン国際映画祭(コンペティション部門) 2004年フィルム・バイ・ザ・シー国際映画祭(オランダ) 2004年バスター・コペンハーゲン国際児童映画祭(コンペティション部門) 2004年ブエノス・アイレス・ドイツ映画祭 2004年ヴァンクーヴァー国際映画祭 2004年ハイファ国際映画祭 2004年パリ・ドイツ映画祭 2004年ワルシャワ国際映画祭(オープニング作品) 2004年ロンドン映画祭 2004年サンパウロ国際映画祭(コンペティション部門) 2004年ストックホルム国際映画祭(コンペティション部門) 2004年台北金馬映画祭

2004年/ドイツ/カラー/90分/ビスタサイズ/ドルビーデジタルSRD/R-15 配給:アルバトロス・フィルム

2006年04月07日よりDVDリリース 2005年10月29日、Bunkamuraル・シネマにてロードショー!

公開初日 2005/10/29

配給会社名 0012

解説


詩を愛する内向的なパウル・クランツと上流階級出身のギュンター・シェラーは卒業試験を間近に控えた寄宿学校(ルビで“ギムナジウム”)の最上級生。育った環境の全く違う2人は、ある「取り決め」により結束する。それは“歓喜に満ちた偉大な瞬間”と“大いなる愛”を求めること、そして“愛を感じなくなった瞬間”にこの世を去ること・・・。
本作品は当時、世界中を揺るがした実際の事件「シュテークリッツ校の悲劇」の映画化である。(既に1929年のCarl Boesse版と1960年のMax Nosseck版と2度に渡り映画化されており、いずれも”Geschminkte Jugend”のタイトルで公開されている。)1927年6月28日の早朝、19歳の学生ギュンター・シェラーが見習いシェフのハンス・ステファンを射殺、続いて自らも頭に銃弾を打ち込んで自殺。現場にはギュンターの友人パウル・クランツとギュンターの妹ヒルデ、その友人のエリが居合わせたが、射殺現場を目撃したのはパウルだけだったーー。
第一次世界大戦敗戦後の1919年からナチスが政権を掌握する1933年までの、ワイマール憲法による共和国時代。政治的には不安定だったが、文化的には想像力が躍動し、表現主義絵画、ハリウッドを凌ぐ映画産業、バウハウス運動など革新的な芸術や思想を生んだ。そんな「黄金の20年代」と呼ばれたワイマール時代のベルリンを忠実に美しく映像化したのは『グッバイ、レーニン!』の製作チーム。共に68年生まれのアヒム・フォン・ボリエスとヘンドリック・ハンドレーグテンが共同で脚本を執筆し、時代を超えた普遍的な若さ—欲求と絶望—を痛々しいまでに美しく描き出した。若者の繊細な感情の渦をデリケートに演じるのはドイツを代表する若手俳優ダニエル・ブリュール。また本国ドイツで彼と並ぶ人気を誇る実力派俳優アウグスト・ディールが上流階級のエキセントリックな青年をその危ういまでの美しさで熱演した。愛のゲームを軽やかに楽しむ16歳のヒルデをこの上なく魅力的に演じたのは、ドイツの新星アンナ・マリア・ミューエ。少女の無邪気な残酷さと女性の成熟さとのアンバランスを見事に表現した。兄のギュンター、妹のヒルデの両方に愛され、最後は銃弾に倒れるハンスにはデンマーク出身でヨーロッパ映画界で活躍するトゥーレ・リントハートが、またパウルを想いつづける愛に臆病な少女エリには実力派新人ヤナ・パラスケが扮し、作品の持つ独特のムードを盛り上げた。
製作はトム・ティクヴァ、ウォルフガング・ベッカー、ダニー・レヴィ、プロデューサーのシュテファン・アルントによって設立されたX-フィルム・クリエイティブ・プール。『ラン・ローラ・ラン』『ヘブン』『グッバイ、レーニン!』に次ぐ作品として製作された本作は、ベルリン映画祭やサンダンス映画祭をはじめ各国の映画祭でも熱烈な歓迎を受けた。『わが青春のマリアンヌ』『アナザーカントリー』『モーリス』『眺めのいい部屋』に次ぐ、美青年たちの饗宴と官能的で刺激的な愛のデカダンスが各国で話題となり、大絶賛を浴びている。

ストーリー

1927年、ベルリン。
初めての恋、湖畔の別荘、ダンスと音楽、アブサンの陶酔———。
若さのすべてがここにあった。

パウル・クランツとギュンター・シェラーは、ベルリンのマリーエンドルフ地区にある寄宿学校(ルビ:ギムナジウム)での卒業試験を間近に控えていた。パウルは労働者階級出身の内向的な詩人タイプ、ギュンターは上流家庭に育った高慢で向こう見ずな青年と、2人の性格と家庭環境は対照的だったが、ともに歓喜に満ちた偉大な瞬間、大いなる愛、人生の頂点、そしてそれらが「一度に終わる瞬間」を探し求めていた。
ギュンターの両親の留守中、彼らは週末をベルリン郊外のシェラー家の別荘で過ごす。パウルはギュンターの妹ヒルデに出会い、たちまち彼女の魅力の虜になる。広々とした図書室と美しい湖に面した夢のようなシェラー家の贅沢な暮らしとヒルデの美しさは、貧しい環境で育ったパウルにとってまさにこの世の楽園に思われた。
しかし16歳のヒルデは自分の放つ魅力とそれが男達に及ぼす影響を十分に意識し、恋愛経験のないパウルを誘惑する。シャイな性格、メランコリーな雰囲気に溢れた彼の詩、人生や愛そして死についてのロマンティックな考え方全てが彼女を惹きつけた。彼の詩に影響されて、最初の夜にヒルデはパウルの手帳に自分の詩を記した。そして“想像の中だけの愛が何の役に立つというの?熱い想いを詩で伝えても、愛は得られないわ”と書いて彼の恋愛経験不足をからかってみせる。 その夜庭で2人きりで会っている時、パウルはまさに世界で一番幸せな男だった。
だが翌土曜の朝、ヒルデはベルリンに戻ってしまう。失望したパウルはギュンターと草原をぶらつき、ヒルデや愛、人生について語り合う。ギュンターは哲学的に語る。「真の幸せはおそらく一生に一度しかない。後は一生、その瞬間の思い出に罰せられて生きて行くんだ。それなら僕らは一番美しい瞬間にこの世を去るべきだとは思わないか?」彼らはこの美しい考えに惹かれ、愛をもはや感じなくなった瞬間に自分たちの命を終わらせること、その時には彼らの愛を奪った者を道連れにすることを誓う。
その頃ヒルデは友達のエリと、カフェ「モカ・エフティ」でいつものダンスを楽しんでいた。ヒルデの秘密の恋人で見習いコック(そしてギュンターの元恋人)のハンスも彼女を待っていた。
夕刻、別荘ではギュンターの指示の下、ガーデンパーティーの準備が進んでいた。庭は中国風の提灯で飾られ、キッチンではヒルデと女友達たちが、女性の解放と男性について熱っぽく語っている。「自由気ままに生きるの。両手にいっぱい男が欲しいわ」ヒルデはいつものように自信に満ちた意見を述べ、驚きと賞賛の声を浴びている。しかし普段はおとなしいエリがヒルデに対して、彼女が虚勢を張っているに過ぎない、と指摘して2人は対立する。エリはずっと前からパウルのことが好きだったのだ。
ギュンターがワインを取りに、地下のセラーに降りていくとそこにはハンスが待っていた。ギュンターは、ハンスとの別れが彼に残した心の傷がまだ癒えておらず、彼の姿を見るのさえ苦痛だった。しかし2人は情熱的な抱擁とキスを交わす。パーティーは熱狂的になり、キャンプファイアーの周りでアブサンを飲む儀式がとりおこなわれる。若者達はこの“緑の妖精”に恍惚となり、ワイン、ダンスと音楽の効果で場の雰囲気はさらに激しく狂い、乱雑になっていく。
しかし他の若者たちが大いに楽しんでいる間、ギュンター、パウル、ヒルデ、エリそしてハンスらは混乱した感情の失意の渦に徐々に沈みこんでいく。パウルはハンスと湖畔で情熱的なキスをしているヒルデを想って苦悩し、愛し合っているカップルのすぐ傍らで絶望を抱えて座り込むギュンターの顔は石のように凍りつく。エリはパウルだけを愛していたが、彼はまだ彼女の気持ちに気づいていない。ヒルデの行動に失望したパウルは、パーティーが終わりに差し掛かるころ、エリに慰めを見出しその夜不器用な初めての経験をする。
翌朝、一晩中騒いで疲れた若者たちはベルリンに帰って行くが、すべてが前と同じには見えなかった。シェラー家で、ハンス、ギュンター、パウルは飲み続けている。昨夜の疲れで早くに寝室に戻ったヒルデのもとを誰にも気づかれずにそっとハンスが訪れ、するとパウルとギュンターの耳に寝室で語り合う恋人たちのひそひそ声や押し殺した笑い声が聞こえてきた。愛する人に拒絶され、絶望に打ちひしがれた2人にとってとるべき道はひとつしかなかった。彼らの報われない偉大で無限の愛と容赦のない痛みは死によってのみ贖われるのだ。

スタッフ

監督:アヒム・フォン・ボリエス
脚本:アヒム・フォン・ボリエス
   ヘンドリック・ハンドレーグテン
原案:アネッテ・へス&アレクサンダー・プフォイファー
原作:アルノ・マイヤー・ツー・キュイングドルフ
プロデューサー:シュテファン・アルント
       クリストフ・マゾディエ
       マヌエラ・シュテアー
撮影:ユッタ・ポールマン
編集:ゲルガナ・フォイクト&アンティエ・ツィンガ
音楽:トーマス・ファイナー&インゴ.L.フレンツェル
美術:ウルリカ・アンダーソン
衣裳:ニコル・フィッシュナラー
メイクアップ:ハイコ・シュミット、ヨハンナ・ヒンシュ

キャスト

パウル:ダニエル・ブリュール
ギュンター:アウグスト・ディール
ヒルデ:アンナ・マリア・ミューエ
ハンス:トゥーレ・リントハート
エリ:ヤナ・パラスケ
ローザ:ヴェレーナ・ブカル
ロッテ:ユリア・ディーツェ
マッケ:クリストフ・ルーザー
ビットナー:マリウス・フライ
フリッツ:ファビアン・オスカー・ヴィーン
ディヤンゴ:ティノ・メヴェス
ピット:ヨナス・イェーガーマイヤー
ツィプザー:リュック・ファイト
ヴィーラント:ホルガー・ハントケ
クレーエ先生:ユルゲン・ヴィンク
ペータース長官:トーマス・ノイマン
クラウス長官:トーマス・シェンデル
ドクター・フライ:バディ・エリアス
裁判官:ローマン・カミンスキー

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