第5回クレスト劇場日本映画祭

2004年/35ミリ/カラー/98分 配給:クロックワークス

2006年3月11日ユーロスペースtにてレイトロードショー 2006年01月27日よりDVDリリース 2005年7月16日ユーロスペースにてロードショー

公開初日 2005/07/16

配給会社名 0033

解説


どこにでもいる気弱そうなサラリーマン宮田武は、人から頼みごとをされても断れず、どんなに騙されても疑うことを知らない “日本一のいい人”。そんな彼が、振られた彼女を忘れるため、ほんのちょっと勇気をだした一晩のほのぼのした物語   かと思いきや!物語は予想もつかない展開を見せます。宮田が過ごした一晩が、彼を取り巻く人々—「宮田の親友で探偵稼業に嫌気がさしている男」神田、「お金大好きな女詐欺師」あゆみ、「組織の経営に悩むヤクザの組長」浅井、「婚約破棄になり自暴自棄になる女」真紀 によって繰り広げられるエピソードを、それぞれの視点から描いていくことにより、まったく違う夜に変わっていきます。お互いの意外な関係性、そして彼らを翻弄する2,000万円の行方が明らかになっていき、まるでパズルのピースがどんどんはまっていくようなカタルシスをもたらすのです。そしてすべての謎が解けた時、宮田の純情が起こす小さな奇跡に、誰もが幸せな気持ちになることでしょう。サスペンスなのに、ハートフル、まったく新しいニッポン的エンターテインメントムービーが、ここに誕生しました。

監督は本作が劇場用長編デビュー作となる内田けんじ。高校在学時に映画制作への道を志し、’92年サンフランシスコ州立大学芸術学部映画科に入学。8ミリから35ミリまでの映画製作をはじめ、脚本技術を学び、帰国後、自主製作した『WEEKEND BLUES』がPFFアワード2002にて企画賞(TBS)とブリリアント賞(日活)をダブル受賞。第14回PFFスカラシップの権利を獲得し本作を制作しました。緻密に練り上げた脚本と構成力で、ほのぼのとした日常をエンターテインメントに昇華させるその才能は、今までにいないタイプであり、日本映画の新しい時代の訪れを感じさせます。

出演は、“日本一のいい人”宮田武に『ジョゼと虎と魚たち』『花とアリス』など多くの日本映画に出演し、『恋は五・七・五!』では主人公のライバルをコミカルに演じて強烈な印象を残した中村靖日。ちょっぴり情けないけど、なぜか憎めない、普通のようで普通でないという一筋縄では行かない宮田というキャラクターを好感度高く演じ、今後の活躍が期待されます。絶望的な表情の裏に、芯の強さを隠した桑田真紀にテレビを中心に活躍中の霧島れいか、熱い男の友情を見せる神田勇介に『ハッシュ!』『火火』の山中聡、ヤクザの組長でありながら、どこか滑稽で人間味溢れる浅井志信にベテランの山下規介、そしてそのたくましさで周囲を翻弄する倉田あゆみをテレビ、モデル、ラジオと幅広く活躍中の板谷由夏が好演しています

ストーリー

21:00 婚約破棄となり、二人で住む家を出てきた桑田真紀。婚約指輪を質屋に持って行ったが3500円にしかならず、一人入ったレストランはカップル、家族、友達同士でにぎわっている。寂しさがこみ上げて来て泣きそうになったその時、前のテーブルの男がナンパしてきた。真紀はためらうことなくすぐに席を移動した。

17:00 勤務中のサラリーマン宮田武。パソコンで別れた彼女・あゆみの写真を見てはため息をついている。

20:00 宮田がマンションに帰宅した途端、携帯が鳴った。親友の神田からだ。飯を食おうと神田が言うが、疲れている宮田は外出するのを渋っている。しかし神田から「大事な話がある。あゆみちゃんのことだ」と言われた途端、勢いよく家を飛び出して行った。

21:00 レストランで宮田が待っていると神田が遅れてやって来た。「あゆみのことって?」と切り出す宮田。すると神田は「街で偶然会った。近々結婚するらしい」と告げる。あゆみはある日、結婚前提で購入したマンションから突然姿を消してしまったままだった。宮田は、そんなひどい仕打ちをされたのに、あゆみが気がかりで仕方がない様子だ。いつまでも女々しい宮田に神田は、あゆみのことは忘れて新しい出会いを探すようにと言い、急に後ろのテーブルで一人座っている女(真紀)に声をかける。3人は一緒に食事をすることになった。自己紹介が終わり、神田がトイレに立つが、なかなか戻ってこない。宮田が心配して探しに行くと神田の姿はどこにもなく、携帯に電話をすると「急に仕事が入った」と切られてしまう。初対面の真紀との会話に緊張しながらもなんとか食事を終え、店を出で、真紀を送ろうとするが、真紀は、一緒に暮らしていた恋人との婚約が破棄になり家を出たため、帰るところがないという。宮田はそんな真紀を放っておく事ができず自分の家に泊まってはどうかと提案する。人の良さそうな宮田に安心した真紀はその申し出を受け入れ、二人は宮田の家に向った。

1:00 マンションに到着し、宮田は真紀を寝室へ案内する。部屋の隅にあるダンボールを真紀が不思議そうに眺めていると、宮田がそれは前の彼女・あゆみのものだと説明する。そして、あゆみとのこれまでの経緯を真紀に話す。宮田に同情し、思わず彼を抱きしめてしまう真紀。ぎこちない空気が流れるところへ玄関のチャイムが鳴った。やってきたのはなんと行方知れずだったあゆみだった。戸惑う宮田に、あゆみは悪びれもせず、荷物を取りに来ただけと言い、ズカズカと上がりこむ。そんな自分勝手なあゆみの態度に真紀はたまらず出て行ってしまう。宮田はすぐに後を追いかけ家に戻るように説得するが、それでも真紀はタクシーに乗ってしまう。しかし宮田は走り出したタクシーを全速力で追いかけ、真紀に電話番号を教えてほしいとお願いする。当惑する真紀だったが、真剣な表情の宮田に根負けし、電話番号を書いた紙を差し出す。

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19:00 神田が経営する探偵事務所。帰ってきた神田は、入口であゆみが待っているのに気づく。神田は嫌々ながらあゆみを事務所に入れる。相談があるというあゆみに神田はつれない態度で、「あんたの正体はわかっている」と言い放つ。実は神田は宮田からあゆみが突然いなくなったと聞いて、彼女のことを調べていた。あゆみは、結婚するといっては男を次々と騙し、金をむしり取る詐欺師だったのだ。なんで宮田を騙したんだと罵る神田を無視して、あゆみはお願いがあるという。実業家だと思っていた新たなターゲットの浅井という男が、実はヤクザの組長であり、彼の元から逃がして欲しいというのだ。あゆみが持って来たアタッシュケースを開けると、そこには組の金庫から持ち逃げしてきた2,000万円分の札束が入っていた。あゆみは海外へ逃げるため、宮田のマンションに置いて来たパスポートを持ってきて欲しいと言う。親友の宮田がトラブルに巻き込まれないようにするために神田は、100万円の報酬をもらうこと、そして2,000万円は浅井に返すことを約束すればその依頼を引き受けると提案する。あゆみは嫌がるが、「女に逃げられた上にお金まで持っていかれたら、ヤクザは地の果てまで追ってくる」と説得され、渋々承知する。

19:45 神田の合鍵で宮田のマンションに侵入する二人。あゆみが寝室でパスポートを探している間、神田はトイレへ。するとその時、宮田が帰宅した。困った神田はトイレから携帯で宮田へ電話し、飯を食おうと外へ誘い出そうとするが、なかなか宮田は承知しない。そこで機転を利かせて「あゆみちゃんのことで話がある」というと、宮田は飛び出して行った。

20:40 パスポートを無事に手に入れ、今度は神田がバイク便に変装し、金を浅井の組事務所へ戻しに行くことにする。アタッシュケースを事務所の前において去ろうとしたその時、不審に思った組員から追いかけられるがなんとか逃げることに成功する。

21:30 神田はすべて無事に成し遂げ、先ほど誘い出した宮田の待つレストランに向った。何事もなかったかのように宮田と会い、そして真紀をナンパし、三人で自己紹介をしているところに先ほどの組員たちが入って来た。神田はトイレへ隠れようとするが、捕まってしまい、浅井の組事務所へと連れて行かれてしまう。

3:00 拘束されている神田の前に、浅井があゆみを連れてやってくる。そして神田が先ほど事務所へ届けたアタッシュケースを開けて見せる。その中には、なんと大量の女性用の下着と神田の名刺が入っていた。驚く神田を見て浅井は、神田もあゆみに騙されていたと確信し、神田を解放する。

7:00 ヘトヘトになって神田は家路に着くが、はっと思い立ち、宮田のマンションへ向う。寝ている宮田を起こし、慌ててあゆみの荷物の元へ急ぐ。あゆみがここでアタッシュケースの中身を入れ替えたとすれば、荷物の入ったダンボールの中にお金があるはずだと思ったのだ。しかし、部屋にはすでに荷物はなかった。宮田は真紀との出会いにより過去を忘れようと決め、あゆみの荷物を捨てたという。神田は呆然と腰が抜けたように力なく座り込む。

18:00 浅井の組事務所。浅井は、組員たちにアタッシュケースに入った札束を見せつけている。しかし、実はこのお金は、組の経営が苦しいことから、一番上と下だけが本物で後はただの紙切れという偽札束だった。そこへあゆみが入ってくる。浅井はあゆみに食事でも行こうと連れ出すが、店へと向う途中、あゆみは忘れ物をしたから先に行っててくれといい一人事務所へ引き返す。浅井はなかなかあゆみが戻らないことを不審に思い、事務所へ戻ると偽札束は全て盗まれていた。組員総出であゆみを探していると、不審な男(神田)がアタッシュケースを事務所の前に置いていった。偽札束がばれたら大変だと浅井がこっそり開けると、中には女性の下着と神田という探偵の名刺が入っていた。浅井はその名刺を頼りに、神田の事務所へ急ぐ。

21:20 浅井が探偵事務所の鍵をこじ開け中を探っていると、あゆみに関する資料が見つかる。そこには、浅井の知らない顔のあゆみの写真、そしてあゆみが騙してきた男たち、その被害額などが細かくファイルされていた。最新の被害者となっている男、宮田の写真と住所もあった。そこへ組員から神田を捕まえたとの連絡が入る。何もしゃべらせないで自分が戻るまで待つように指示し、浅井は宮田のマンションへと向う。

24:30 宮田の家の鍵もこじ開け中に入った浅井は、寝室のダンボールの中に偽札束を発見するが、そこへ真紀を連れた宮田が帰宅してしまう。浅井はあわててベットの下に隠れる。浅井のすぐ目の前で話し込む宮田と真紀。そして玄関のチャイムが鳴り、あゆみがやって来た。アタッシュケースからこっそり移した金を取りに来たのだ。二人が押し問答をしている間、寝室にいた真紀はふとしたことから偽札束を見つけてしまう。少し考えて札束を自分のカバンに入れる真紀。そして寝室を出て行った。真紀を追いかけて宮田が出ていくと、あゆみは寝室へと入って行く。そしてそこには浅井が待っていた。浅井はあゆみを連れ、神田が拘束されている組事務所へと帰って行く。

8:00 何も知らない幸せそうな宮田と疲れ果てた神田。二人で朝食を取りながら、宮田は、昨日教えてもらった真紀の携帯番号にTELするが繋がらない…真紀が書き間違えたんだと言い張る宮田に、神田は騙されたんだよと諭す。

お金の入ったカバンを抱え、駅前に座り込み物思いにふけっている真紀。意を決したように、その場から立ち去る。そして真紀が向う先は—

スタッフ

監督:内田けんじ
製作:矢内 廣、中村 雅哉、児玉 守弘
   黒坂 修、高野 力
スチール:三木 匡宏
監督助手:市原 大地、滑川 将人
撮影助手 :小宮 由起夫、鶴崎 直樹
照明助手:永田 英則、志村 昭裕
冨田 早紀、開 達也
録音助手:原山 昭宏、豊田 勝一





     
   

キャスト

(宮田 武):中村 靖日
(桑田 真紀):霧島 れいか
(神田 勇介):山中 聡
(梶 徹也):眞島 秀和
(丸尾 誠二):近松 仁
(藤本 清):杉内 貴
(山内 茂):北野 恒安
(高木 拓哉):法福 法彦
(タクシーの運転手):李 鐘浩
(レストランの店員):松澤 仁晶
(質屋の店員):古郡 雅浩
(浮気調査の依頼者):鬼界 浩巳

(浅井組組員):山名 吉孝
        相場 仁志
        猪瀬 祐一
        先崎 洋二

(浅井 志信):山下 規介

(倉田 あゆみ):板谷 由夏

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