自分の夢と仲良くしよう。

2005年/日本/35mm/カラー/93分/ 配給:ファントム・フィルム/「埋もれ木」製作委員会

2006年07月29日よりDVDリリース 2005年6月25日、渋谷シネマライズにてロードショー

公開初日 2005/06/25

配給会社名 0442

解説


処女作『泥の河』以来、深い人間洞察と高い芸術性によって、作品を発表することに国内外の注目を集めてきた映画監督小栗康平。デビュー作で米アカデミー賞外国語映画部門へのノミネート五作品に選出され、90年の『死の棘』ではカンヌ映画祭において“グランプリ”と“国際批評家連盟賞”をダブル受賞し、96年の『眠る男』ではその年の単館興行収入の記録を打ち立てた。そして前作『眠る男』から実に9年、待望の新作『埋もれ木』が完成した。
 先行きが不透明なまま、もう大きくはなにも変わらないと思えるような現代社会。しかし現実とは、それほど変更不可能な「硬いもの」だろうか。『埋もれ木』は、目の前にあるこの現実を、変わることができる「やわらかいもの」としてとらえなおしてみたい、と構想された。HDカメラを使用して新しい映像の可能性を模索し、ファンタジーとしての領域を広げようと試みた映画作家・小栗康平の新たなる挑戦である。
 映画の舞台は山に近い小さな町。主人公“まち”は高校生である。多感で、まだ自分の居場所がわからない。ある日、女友達と短い物語をつくり、それをリレーして遊ぶことを思いつく。スタートは町のペット屋さんが“らくだ”を買って“らくだ”が町にやって来た、などという無邪気な夢物語。RPG(ロール・プレイイング・ゲーム)を楽しむように、彼女たちは次々と、そして唐突に物語を紡いでいく。まちたちが語るファンタスティックな物語は、自分が見えないまま“未来に向かう物語”である。
 一方、町に住む大人たちにも物語は存在する。しかしそれは生きてきたリアリティに裏づけされた自分史で、いわば“過去の物語”。この二つの物語は直接には交わらず並列して進んでいくが、それぞれの中でなにかが合流し始める…。
 大雨のあと、町のゲートボール場の崖が崩れて、“埋もれ木”と呼ばれる古代の樹木が地中から姿を現す。夢と物語と現実とが少しずつ重なり始め、ファンタジーな世界が開けていく。“埋もれ木”とは埋没林ともいわれるもので、火山噴火によって立ち木のまま地中に埋もれた古代の森である。この町の地底に、それが脈々と生き続けていたのだ。
 埋もれ木の森に、町中の人々が集まり、カーニバルが始まる。装飾性豊かに現実を昇華させた、琳派のごとく艶やかな祭りの夜に、人々の夢と思いが集まる。夢がなければ、思いがなければ、私たちは生きていけないのだから。

 撮影は、三重県鈴鹿市にあるNTT西日本所有の研修センター跡地に、全スタッフ、キャストが合宿して行われた。その敷地は周囲6キロにも及び、1000坪、700坪、600坪の巨大倉庫、宿泊施設等がある。倉庫は遮蔽されてステージとなり、オープン・セットも含めて、地底の森など20を越すセットがここに建てられた。今の日本映画では考えられない壮大なスケールである。CGも多用されていて、撮影後に手を入れられたカットは、全体の3分の1強に及ぶ。見えるだけの表層を相手にするのではなく、背後に隠れている「やわらかなもの」をとらえようとした、監督の強い意志の現れである。

主人公の“まち”は、全国から応募した7000人の中から選ばれた夏蓮(かれん)。まだ14オではあるが、深いまなざしが個性的で、類い稀な存在感を示している。マーケットの人々には、ジャズミュージシャンの坂田明、状況劇場で一世を風靡した怪優、大久保鷹など個性派が顔を揃え、人のいい遊び人の三ちゃん役で、浅野忠信が小栗組に初参加。また、坂本スミ子が『楢山節考』以来、再び前歯を抜いておばあちゃん役に挑んでいる。そして、田中裕子、平田満、岸部一徳、中嶋朋子など、ベテランが脇を固めた。『死の棘』の松坂慶子が1シーン、友情出演しているのも話題である。

 スタッフは美術の横尾良嘉、竹内広一、編集の小川信夫、スクリプターの鈴賀慶子が小栗組の常連。撮影の寺沼範雄、ビジュアル・エンジニアの山ロ義彦、照明の豊見山明長、録音の矢野正人が技術パートのチームを組んだ。VFXスタッフにはスーパー・バイザーとしてハリウッドのアート・デュリンスキーが『眠る男』に続いて入り、VFXディレクターには、オムニバス・ジャパンの石井教雄。冒頭のコミックスは人気の魚喃キリコが書き下ろした。音楽は現代音楽の作曲家で、エストニア生まれのアルヴォ・ペルトのCD「Te Deum」の中から「シルーアンの歌」を使用している。
脚本は『泥の河』以来、小粟作品と歩みを共にしてきた佐々木伯と小栗監督との共同脚本となる。製作は劇団ひまわりが幹事会社となり、大手学習塾五社が連携して製作委員会をつくった。

ストーリー

小栗康平監督最新作

スタッフ

監督:小栗康平
製作委員会:えいすう総研、さなる、栄光、ナガセ、ティエラコム、劇団ひまわり
配給:ファントム・フィルム/「埋もれ木」製作委員会

キャスト

夏蓮
浅野忠信
坂田明
大久保鷹
田中裕子
坂本スミ子
岸部一徳
平田満
左時枝
酒向芳
仁科貴
登坂紘光
ほか

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