原題:the cider house rules

家を離れ、愛に出会い、自分の居場所を見つけ出すまで−−− 優しさが心に沁みる感動作

2000年アカデミー賞 7部門ノミネート     (作品賞/監督賞/助演男優賞/脚色賞/編集賞/作曲賞/美術賞) 1999年ナショナル・ボード・オブ・レビュー脚本賞受賞 1999年ゴールデン・グローブ賞2部門(助演男優賞、脚本賞)ノミネート 1999年ゴールデン・サテライト賞脚色賞受賞、2部門(助演男優賞、助演女優賞)ノミネート 1999年映画俳優協会賞2部門(俳優賞、助演男優賞)ノミネート 1999年アメリカ脚本家協会賞脚色賞ノミネート 1999年第56回ヴェネチア国際映画祭コンペティション正式出品

1999年アメリカ/ミラマックス・フィルムズ提供/フィルム・コロニー作品/カラー/2時間11分/ ドルビー・デジタル/日本語版字幕:石田泰子 提供:アスミック・エース エンタテインメント/角川書店 配給:アスミック・エース エンタテインメント

2000年7月1日より東宝洋画系にて全国ロードショー公開

公開初日 2000/07/01

配給会社名 0007

解説

またひとつ、心を揺さぶる珠玉の名作が誕生した。旅立ち、家族の絆と愛情、人々との出会い、初恋、そして生きていくこと…「サイダーハウス・ルール」は、大人になる過程で誰もが経験する道のりを優しく爽やかに描く感動作である。「カープの世界」「ホテル・ニューハンプシャー」など独特の作品世界で知られる米現代文学の巨匠ジョン・アーヴィングが自身の同名ベストセラーを脚色、「ギルバート・グレイプ」「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」のラッセ・ハルストレムが、みずみずしい映像と視点で描き出した。ナショナル・ボード・オブ・レビュー脚本賞受賞をはじめ、本年度アカデミー賞で主要7部門にノミネートされ、助演男優賞、脚色賞を受賞するという快挙を成遂げた。

家を離れ、愛に出会い、自分の居場所を見つけ出すまで−−−

メイン州ニュー・イングランド。ホーマー・ウェルズはセント・クラウスの孤児院で生まれ育った。ラーチ院長の「人の役に立つ存在になれ」という言い付けを守りつづけて成長した彼は、院長の仕事−−−助産と当時禁止されていた堕胎−−−を手伝うようになる。成長するにつれ自分の未来に疑問を持ち始めた彼は、ある日手術に訪れたキャンディ・ケンドールとその恋人ウォリー・ワージントンと共に孤児院を別ぴ出した。初めて見た海、ドライヴイン・シアター、ロブスター、そして初めての恋。セント・クラウス以外の場所を訪れたことのなかったホーマーは驚きの目で新しい世界を発見して行く。ウォリーの誘いで、彼の母が経営するリンゴ農園で働き、収穫人たちの宿舎“サイダーハウス”で暮すことになったホーマー。新しい生活と人々との出会いの中で彼は何を見出していくのか…。

誰にでもきっとある物語

“若者は自分の未来を探して、広く遠く旅をする。悪を倒すという夢や、めくるめく恋への期待、一攫千金の野望を胸に抱いて”。だがセント・クラウスの孤児院で生れ育ったホーマーにとっては、生きていられること、それだけで満足なはずだった。キャンディとウォリーとの出会いが、彼にも無限の未来が広がっていることに気付かせてくれる。孤児院からの旅立ち、キャンディとの恋、リンゴ摘みの季節労働者たちとの生活を通して、ホーマーは「生きていく」本当の意味を知る。それは、誰に押付けられるものでもなく自分自身で生き方を見つけ、自分自身の足でその道を歩いていくこと。そしてまた、人は決して一人で生きているわけではない。天涯孤独で生まれたホーマーにも、すぐそばに暖かく見守ってくれている人がいるということ。そのことに気づいた時、ホーマーは少年から大入へと成長を遂げる。大人になる時に誰もが経験する普遍的な物語が、鮮やかにそしてファンタジックに描き出されていく。ホーマーが辿る心の旅は、淡い懐かしさとともに暖かい微笑みと爽やかな感動を感じさせてくれるだろう。

13年の歳月を経て作り上げられた豊潤な映画

ジョン・アーヴィングが最初に映画化の構想を立上げたのは1986年のこと。幾度かの企画変更や監督の交替を経てもあきらめることなく、熟考とリライトを重ね、脚本を熟成させてきた。彼の念願の映画化はラッセ・ハルストレムとの出会いによって現実のものとなった。小説と映画とでジャンルは違ってはいても、二人の作品には共通点が多い。独特の世界感、特異な環境とその中に生れるおかしな状況、その一方で常に現実を鋭く見据えた作品を作り上げてきれ似た者同士とも言える彼らの素晴らしいコラボレ一ションが生み出した奇跡の結晶が本作なのである。

清々しい若さと味わい深い熟練の絶妙のバランス

ホーマー・ウェルズを演じるのは「カラー・オブ・ハート」のドビー・マグワイア。純粋無垢さと成熟とを同時に感じさせる静かな視線が強い印象を残す。彼の父親的存在であるラーチ院長には「リトル・ヴォイス」のマイケル・ケイン。型破りな中にも限りない愛と慈しみを感じさせる見事な演技で、アカデミー賞助演男優賞を始め各賞の助演男優賞にノミネートされている。ホーマーの初恋の相手となるキャンディ・ケンドールには「ノイズ」のシャリーズ・セロン。明るく純粋で、ホーマーを導くとともに自身も成長遂げていく重要な役割を演じている。サイダーハウスのリーダーであるミスター・ローズには「普通じゃない」のデルロイ・リンド。映画化構想の誕生当時から本作に関わってきた彼は、風格とその裏に隠された人間が持つ矛盾を漂わせる複雑な役割を見事に演じている。ホーマーと対照的に無謀で天真爛漫なウォリーには「ロミオ&ジュリエット」のポール・ラッド、ホーマーを慕う孤児バスターに「マイ・フレンド・メモリー」のキーラン・カルキン、そして人気ミュージシャンのエリカ・バドゥとヘヴィ・Dが俳優顔負けの存在感と演技力を見せている。また、アーヴィング自身セント・クラウズの駅長役で特別出演を果たしている。子供の描写には定評のあるハルストレムだが、本作でも忘れてならないのは孤児院の子供たち。現地でのオーデションで選ばれたいずれも無名の子供たちながら、笑顔とその裏に宿る寂しげな表情がいつまでも心に残る。

薫りたつような世界

さっぱりとしたモノトーンと、その中にアクセントで付加えられる鮮やかな色。アンドリュー・ワイエスの絵画を参考にして創り出された懐かしい田舎の風景。純白の雪、深緑の森、真紅のリンゴは、スクリーンから薫りたつような瑞々しさを感じさせる。プロダクション・デザインのデイヴィッド・グロップマン(「マイ・ルーム」)、編集のリサ・ゼノ・チャージン(「デッドマン・ウォーキング」)、音楽のレイチェル・ポートマン(「エマ」)らが、観客を引き込まずにはおかない素晴らしい世界を作り出して絶賛を浴び、三人ともアカデミー賞にノミネートされている。そのほか、撮影監督のオリヴァ、ステイプルトン(「ハイロー・カントリー」)、衣装デザインのレネー・エールリッヒ・カルフュス(「デッドマン・ウォーキング」)、製作のリチャード・N・グラッドスタイン(「パルプ・フィクション」)、共同製作のアラン・C・フロンクイスト(「ギルバート・グレイプ」)など、アーヴィングとハルストレムの熱意を完全なものにすべく実力あるスタッフたちが揃った。

ストーリー

 メイン州ニュー・イングランド。人里はなれたセント・クラウスにある孤児院で、ホーマー・ウェルズは産声を上げた。ウィルバ・ラーチ院長、そして二人の看護婦アンジェラとエトナに面倒を見てもらい、ここから新しい家族のもとへ巣立っていくはずだった。ところが、何度引き取られても彼は親たちの希望に添うことがができず、いつもセント・クラウズに戻されてしまうのだった。
 ホーマーは特別な子だ。そう考え直したラーチは彼を孤児院に留め、「人の役に立つ存在になれ」と教えを説き、父親のように愛情を注いで育てた。

 孤児院でのホーマーの暮らしは、満ち足りていた。家族のような愛情を注がれ、大好きな映画『キング・コング』をみんなで見るのが大の楽しみだった。毎晩寝る前には、院長が皆に本を読んで聞かせ、おやすみの挨拶代わりの言葉が子守り歌となった。

「おやすみ、メイン州の王子、そしてニュー・イングランドの王」

 ラーチ院長の仕事、それは分娩と当時禁止されていた堕胎だった。生んでも育てられない子供を宿し、行く当てのなくなった女性を「救うために」に行っていた。彼は父として、ホーマーに自分と同じ道を進んで欲しいと望み、ホーマーもまた、その思いを受けて次々と新しい医術を学んでいった。

 青年となったホーマは、院長や看護婦とともに孤児の面倒を見ていた。孤児院には、ホーマーの次に大きいバスター、気管支を患っているファジー、なかなか引きとりてのない少女メアリ・アグネスを始め、たくさんの子供たちが生活し、家族が見つかるのを心待ち
にしていた。
 ホーマーは分娩の手術も立派にこなすようになっていた。しかしどんなにラーチが言い聞かせても決してやらないことが一つあった。それは堕胎の手術だった。もしかしたら自分もこの世に生まれてこなかったかもしれない。そんな思いから、それがたとえ「女性を救う仕事」であったとしても赤ん坊を殺すことなどできなかった。

 孤児院に穏やかな日々が流れる中、ある日ホーマーの前に堕胎の手術のためにキャンディ・ケンドールと、その恋人の軍人ウォリー・ワージントンが現れる。ホーマーは同じ年頃の二人を見て、明るい未来を感じ、外の世界に強くひかれるのであった。そして孤児院
を出て行くことを決断する。

「旅立つには、幼すぎる」
ラーチ院長の目にはまだ子どもに写っていたホーマーが言い出した突然の旅立ちの申し出に、ラーチは戸惑い彼に留まるよう説得するのだった。しかし、ホーマーの強い意志と確固たる思いは揺るがなかった。
「外の世界に行って、別の道で役に立ちたいんだ」

 外の世界は考えていた以上に彼を驚かせた。初めての海、初めてのドライヴイン・シアター、初めて見るたくさんの映画、初めて体験するロブスター漁。そして、外での初めての仕事−−−リンゴ園での収穫作業はホーマーに多くの事を教えてくれた。
 彼は、リンゴの収穫とともに移動する労働者たちと、“サイダーハウス”と呼ばれる小屋で寝起きを共にした。収穫作業のポスであるミスター・ローズとその仲間たちが彼と一緒だった。ミスター・ローズはボスとしてホーマーに様々なルールを教えてくれた。そして、サイダーハウスの壁に掲げられた注意書きを見ながらこう言った。

「これを書いたのはここに住んだことのない奴だ。俺たちのルールは俺たちで決めるだけだ」

 リンゴ園での生活に慣れてきた頃、ウォリーが再び戦地に戻ることになった。残されたキャンディはその寂しさを紛らすためにホーマーをいろいろなところに連れて行く。どんなものにも新鮮な驚きを見せる純粋なホーマーに、キャンディは次第に友達以上の感情を抱き始めていた。そしてホーマーも明るく奔放な彼女に、初めて抱く感情を隠せずにいた。ある日、二人はその感情を抑えることができず結ぱれてしまう。収穫も終わり、ミスター・ローズたちは新しい収穫地へと旅立っていった。そのままリンゴ園に残ったホーマーとキャンーディは、ウォリーのことが頭の片隅から離れないままに恋人のように愛し合う。ホーマーはこの土地で自分がいままで感じたことのない充実した作活を送っているとラーチに手紙を書いた。それが恋をしていることだと気づいたラーチは、ホーマーはもう帰ってこないと嘆くのだった。

 1年が過ぎ、カリフォルニアに移動していたミスター・ローズたちが戻ってきた。彼らの様子が変だと感じたホーマーはミスター・ローズの娘、ローズ・ローズが妊娠していることに気付く。自分で始末すると言う彼女に、力になってあげられるとはげます。そんな時、ウォリーが戦地から帰ってくると連絡が入る。
 リンゴ園の仕事、キャンディとの関係、孤児院のこと、そしてそこで学んだ医術。自分が本当に考えなければならないことは一体何なのか。様々な思いがホーマーの頭の中を駆けめぐったとき、父であるラーチ院長の言葉を思い出すのだった。

「人の役に立つ存在になれ」

そして、ホーマーは大きな決断に踏みきった…。

スタッフ

監督:ラッセ・ハルストレム
製作:リチャード・N・クラッドスタイン
原作・脚色:ジョン・アーヴィング
製作総指揮:ボブ・ワインスタイン、ハーヴィ・ワインスタイン、
       ボビー・コーエン、メリル・ポスター
共同製作:アラン・C・プロンクィスト、レスリー・ホールラン
撮影監督:オリヴァー・スナイプルトン、B.S.C.
プロダクション・デザイナー:デイヴィッド・グロップマン
編集:リサ・ゼノ・チャージン
衣装デザイナー:レネー・エールリッヒ・カルフュス
音楽:レイチェル・ポートマン
キャスティング:ビリー・ホプキンス、スザンヌ・スミス、ケリー・バーデン

キャスト

ホーマー・ウェルズ:ドビー・マグワイア
キャンディ・ケンドール:シャーリーズ・セロン
ミスター・ローズ:デルロイ・リンド
ウォリー・ワージントン:ポール・ラッド
ウィルバー・ラーチ医師:マイケル・ケイン
看護婦エドナ:ジェーン・アレキサンダー
看護婦アンジェラ:キャシー・ベイカー
ローズ・ローズ:エリカ・バドゥ
パスター:キーラン・カルキン
オリーヴ・ワージントン:ケイト・ネリガン
ビーチズ:ヘヴイ・D
マディ:K・トッド・フリーマン
メアリ・アグネス:パ・ドゥ・ラ・ユエルタ
レイ・ケンドール:J・K・シモンズ
ジャック:イヴァン・デクスター・バーク
ヴァーノン:ジミー・フリン
ヒーロー:ロニー・R・ファーマー
ファジー:エリク・パー・サリヴァン
カーリー:スペンサー・ダイアモンド
カパーフィールド:ショーン・アンドリュー
ステイアフォース:ジョン・アルバノ
ヘイセル:スカイ・マッコール・パータシアク
クララ:クレア・ダリー
ウィンズロー少佐:コリン・アーヴィング

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