原題:Samaritan Girl

少女ヨジンとともにめぐる旅。 その純粋なまでの残酷さが心に焼きついて離れない。 この痛みを抱いて生きる。

2004年2月20日韓国公開

2004年/韓国/カラー/95分 配給:東芝エンターテインメント

2013年5月25日(土)〜5月31日(金) 早稲田松竹にて公開 2005年09月23日よりDVDリリース 2005年3月26日、恵比寿ガーデンシネマにてロードショー公開

公開初日 2005/03/26

配給会社名 0008

解説


ふたりの少女の憧れにも似た友情が導く、美しく残酷な物語

女性なら誰でも覚えがあるであろう、少女の頃の親友との阿係。まるで世界にふたりしか存在しないかのように、つねに行動をともにし、まだ異性への恋も知らずに、憧れに似た感情を互いに抱きあう。
そんな絶対的な信頼関係のままに、ふわふわと漂うように本作の主人公であるヨジンとチェヨンは耀助交際をし始める。
客を取る事をさして聞題とせずに、屈託のない笑顔でインドの伝説の娼婦バスミルダ気取りのチェヨン。そんな親友を心配して見張り役を買って出たヨジンだったが、チェヨンが客のひとりに恋をしたことにより、チェヨンが恋する相手への嫉妬、そして親友においてゆかれてしまうことへの不安といった複雑な感情を抱きはじめる。
十代の少女の心の動きを丁寧に切り取ることで、ヨジンとチェヨンの普通の女の子としての姿を刻みこむ。それがその後の悲劇的な展開をより残酷に彩ることとなる。

世界三大映画祭制覇にもっとも近いキム・ギドク監督が放つ、ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞の最高傑作。

 さまざまなジャンルでヒット作を続出させている韓国映画だが、その中でもキム・ギドク監督は異色な存在だ。韓国ではテレビの討論番組に出演し、若者たちの間ではカリスマ的な人気を誇る一方で、『魚と寝る女』『悪い男』と作品を発表するたぴに、そのスキャンダラスな作品世界が賛否両論を巻き起こしてきた。しかし、前作『春夏秋冬そして妻』では人生を四季にたとえて美しく福き、全米・ヨーロッパでもヒットを記録。早くから各国の国際映画祭で注目されてきたオリジナリティと確かな演出力に加え、映像美も高い評価を集めた。
 その作家性を確固たるものとしたのが、本年度ペルリン国際峡画祭で最優秀鑑督賞である銀熊賞を受賞した本作『サマリア』である。
 罪を犯してしまった少女たちに対する、独自の人生観に裏打ちされた温かな擁線。そしてギドク監督が「内面に怒りを抱え、その偵りに震える季節」と定韓する秋を物語の舞白として選んだ、その映像の美しさはさすがである。
 以前より、ヨーロッバでの評価が高い監督ではあったが、本作はパリでは最大のシネコンで初日を迎え、その後はペドロ・アルモドバルやクェンティン・タランティーノ監督作品のセレクトで定評ある劇場で、カルト的人気を誇る作品としてロングラン上映され続碓ている。本作に続く『3−Iron(空き家)』も先ごろ囲催されたヴェネッィア国際映画祭で、銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞するなど、いま世界がもっとも注目をする監督のひとりであることに間違いない。

ヨジン、チェヨン、そしてヨジンの父。
三人の視点から描かれた三部構成

本作『サマリア』は一つの物語が三つの章に分けて語られており、それぞれに印象的なタイトルが付けられている。
まず第一章「バスミルダ」。インドの伝説の娼婦の名前が付けられたこの章では、ヨジンとチェヨンそれぞれの視点で友情が語られる。続く第二章「サマリア」は、聖書に登場する“サマリアの女”をモチーフに、親友を失い独りになったヨジンが自らを見つめる。そして第三章「ソナタ」では、娘の行いを知った父ヨンギの苦悩に焦点が絞られる。ちなみにソナタとは交響曲の三部形式のことを指すが「バスミルダ」「サマリア」で奏でられたそれぞれの主題が「ソナタ」でひとつに終結してゆく様は、まるで交響曲そのもの。三部構成の見事さを感じさせる。
ちなみに「ソナタ」は韓国の大衆車の名前でもあり、第三章は韓国の杜会常識という視点から描かれた、とも言えそうだ。

純真な狂気を秘めた、ふたりの女優

キム・ギドク監督は、これまでも無名でも魅力ある人物をキャスティングするためにオーディションを重視してきた。本作『サマリア」は十代の少女ヨジン、そしてチェヨンとして役柄を生きてくれる女優を探すことに専念し、ヨジン役にはクァク・チミン・チェヨン役にはソ・ミンジョンという二人の新人女優を大抜擢した。
チェヨン役のソ・ミンジョンは、母性と子供っぽさを併せ持つ笑顔が印象的・一方、ヨジン役のクァク・チミンは渡技の枠を超えて、十代の危うさと、女性への成長の記録をダイナミックにフィルムに刻みつけた。精神的にも肉体的にも演じることが困難な役柄に果敢に挑むことで、彼女たちが醸し出したのは、純真さの中にこそある狂気。それが『サマリア』を美しく残酷に加速させる結果となった。

ストーリー



ヨジンは父と二人暮らしの女子高生。
彼女の親友は同級生のチェヨン。
いつからだろうか、援助交際をしている。
ヨジンはそれを嫌いながらも、チェヨンが心配で見張り役として行動をともにすることに。そんな矢先ヨジンが見張りを怠った隙にホテルに警官の取締りが…一その手から逃れようとチェヨンは窓から飛び降りてしまう。
いつもどおりの笑顔を浮かべたままチェヨンは死に、ヨジンはひとつの重大な決心をする。
「チェヨン、あなたの罪滅ほしのためにお金を返してあげる」
そして、そんな自分の行動を父が見守っていることに、ヨジンはまだ気づいていない…
親友の死から始まったちいさな掛け違いは、少女ヨジンを成長と罪の償いという名の旅へと誘う。
先には果てしない絶望しかないとしてもすべてを受け入れ、未来へ向かって歩き始めるヨジン。
いつしか観る者も旅の同行者として、ヨジンの瞳に映る小さくも確かな希望を道しるべに、まだ誰も到達したことのない結末を
心に焼き付けることになるだろう。

スタッフ

監督:キム・ギドク
脚本:キム・ギドク
製作:キム・ギドク
撮影:ソン・サンジェ
照明:イ・ソンファン
編集:キム・ギドク
音楽:パク・チウン
製作:金基徳フィルム

キャスト

クァク・チミン
ソ・ミンジョン
イ・オル

クォン・ヒョンミン
オ・ヨン
イム・ギュノ
チョン・ユンソ
イ・ジョンギル
シン・テッキ
パク・チョンギ
キム・グィソン
ソ・スンウォン

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