原題:GIRL WITH A PEARL EARRING

2003年/イギリス/カラー/95分/ 配給:ギャガ・コミュニケーションズ

2005年01月14日よりビデオレンタル開始 2005年01月14日よりDVD発売開始 2004年4月10日よりシネスイッチ銀座・シネ・リーブル池袋・関内MGAほか全国順次ロードショー

©Archer Street (Girl) Limited 2003

公開初日 2004/04/10

配給会社名 0025

解説


寡作の天才画家フェルメールの1枚の絵に秘められた至高の愛の物語
艶やかに濡れた唇、憂いと情熱を湛えてきらめく瞳。絵画の中の少女は、いまにも何かを語りかけてきそうな表情を浮かべ、3世紀以上にわたる時を生き続けてきた。「真珠の耳飾りの少女」(通称「青いターバンの少女」)。17世紀のオランダを代表する天才画家フェルメールが描いた1枚の肖像画。少女が女へと移り変わっていく瞬間の生の輝きを、見事なまでにキャンバスに封じ込めたこの絵画には、果たしてどんなドラマが存在したのか?その謎めいた背景を解き明かす至高の愛の名作が、いまここに誕生した。
 
 舞台は、1665年、オランダのデルフト。ヒロインは、17歳のグリート。事故で失明した父に代わり家計を支えることになった彼女は、画家のヨハネス・フェルメールの家に雇われ、住み込みの使用人となった。子だくさんのフェルメール家で、朝から晩まで重労働に追われる毎日。その日々のなかで、美的感覚の鋭さをフェルメールに認められたグリートは、絵の具の調合の仕事を任されるようになる。そんなふたりの関係に嫉妬するフェルメールの妻カタリーナ。そして、狡猾な策略をめぐらせるパトロンのファン・ライフェン。彼の挑発に乗せられる形で、フェルメールは、グリートをモデルにした絵を描くことになるのだが……。
 
 絵の具をすりつぶす棒に添えられたフェルメールの手の感触に、男性を意識して身を震わせるグリート。彼女の感性に創作意欲をかきたてられ、次第に同志愛のような感情を持ち始めるフェルメール。主人と使用人の距離を保ちつつも、お互いが本能で理解しあえる運命の相手だと気づくふたり。思いを寄せる画家の視線にさらされ、心を裸にされていくグリート。モデルになることを承諾し、真珠の耳飾りをつけることに同意した彼女は、画家の持つ針で耳たぶを貫かれたとき、少女から女に生まれ変わる。頬を伝う一筋の涙と共に、ほとばしる情感。どれほどエロティックな性描写を尽くしても描ききれない官能の刹那を、格調高く描きあげたこの場面は、映画史上、最も純粋なラブ・シーンと言っても過言ではない。ここをクライマックスに、劇的な展開を見せる物語は、芸術に身を捧げたことによって思わぬ試練にさらされる少女の運命を、切なくも崇高なタッチで語りあげていく。
 
 そんなグリートの心の軌跡を繊細に演じるのは、『ゴーストワールド』『バーバー』で高い評価を得て、本作と、ソフィア・コッポラ監督の『ロスト・イン・トランスレーション』の主演で、ハリウッドの熱い注目を集めるスカーレット・ヨハンソン。グリートの内面に渦巻く秘められた感情を、無表情な物腰に滲ませた彼女の演技は、クラシカルなたたずまいを持つ作品の世界観に完璧にマッチ。そのグリートが想いを寄せるフェルメールには、『ブリジット・ジョーンズの日記』『ラブ・アクチュアリー』のコリン・ファースが扮し、いまだ多くの謎を残す寡黙な天才画家の魅力を伝える卓越した演技を披露する。
 
 原作は、1999年に出版され、全世界で200万部の売り上げを記録したトレイシー・シュヴァリエのベストセラー。彼女の小説の魂をスクリーンに移し替える脚本に、素晴らしい手腕を発揮したのは、BBCのドラマ・シリーズなどで活躍するオリビア・ヘトリード。製作には、『ほんとうのジャクリーヌ・デュプレ』でもチームを組んだアンディ・パターソンとアナンド・タッカーがあたり、本作が長編デビューとなるピーター・ウェーバー監督を強力にサポートした。
 そのウェーバーが、人物造形と並んで力を入れた映像の美しさも、本作の大きな魅力のひとつだ。今回、『鳩の翼』『髪結いの亭主』のエドゥアルド・セラを撮影監督に、『コックと泥棒、その妻と愛人』などピーター・グリーナウェイ監督とのコラボレーションで知られるベン・ヴァン・オズをプロダクション・デザイナーに迎えたウェーバーは、シーンごとにフィルムを使い分ける手法を駆使して、17世紀の絵画的なトーンの構築を実現。特に、聖域の趣が漂うフェルメールのアトリエの場面では、フェルメールの絵そのもののマジカルな光と影をパーフェクトに再現し、見る者に深い感慨を与えずにはおかない静謐な映像美を作り上げている。

ストーリー



1665年、オランダのデルフト。タイル職人の父親が失明したため、家計を支える役目を負った17歳のグリート(スカーレット・ヨハンソン)は、画家ヨハネス・フェルメール(コリン・ファース)の家へ奉公に出されることになった。フェルメール家は、気位の高い妻のカタリーナ(エッシィ・デイビス)、彼女の母で家計を取り仕切っているマーリア(ジュディ・パーフィット)、そして6人の子供たちという大家族。フェルメールが1枚の絵を完成させるのに3カ月以上の期間を要するため、家計はつねに逼迫した状態にあり、そのことをめぐる夫婦間の口論も絶えなかった。広大な屋敷には、夫を非難するカタリーナのヒステリックな声と、走り回る子供たちの足音が、昼夜を問わず響き渡っている。しかし、その喧噪を唯一免れている場所があった。フェルメールのアトリエだ。カタリーナから、アトリエの掃除を命じられたグリートは、そこに置かれた完成間近い絵の美しさに強くひきつけられる。
 
 ある日、フェルメール家では、パトロンのファン・ライフェン(トム・ウィルキンソン)を招いて盛大な晩餐会が催されることになった。マーリアとカタリーナは、その場でファン・ライフェンの注文を取ろうと必死だったが、当のフェルメールは、「次に何を描くか決めていない」と言い、妻と義母を大きく失望させる。しかし、それからほどなくしてフェルメールは新作を描き始める。きっかけを与えたのは、グリートだった。彼女がアトリエの窓を掃除したことによって生まれた微妙な光。その色の変化が、フェルメールを創作に駆り立てたのだ。
 
 やがて、グリートが優れた色彩感覚の持ち主であることに気づいたフェルメールは、アトリエのロフトで絵の具を調合する仕事を手伝わせるようになる。骨灰を磨りつぶす棒に添えられたフェルメールの手の感触に、思わず男性を意識してしまうグリート。使用人の仕事についてから、彼女は肉屋の息子ピーター(キリアン・マーフィー)と交際を始めていたが、彼に対する気持ちとは異なる崇拝と畏れが入り交じった感情を、グリートはフェルメールに抱くようになる。
 
 冬がめぐってきたころ、グリートはアトリエのロフトで寝起きをし、家事労働の合間のわずかな自由時間を、絵の具の調合に費やすようになっていた。表面的には主人と使用人の距離を保っていたものの、もはやふたりの関係は、芸術上のパートナーと呼べるものだった。そして、その親密さが、フェルメールの家族の間に波紋を引き起こす。フェルメールの娘コルネーリアは、グリートに泥棒の濡れ衣を着せようとし、かえってフェルメールの怒りを買う。そんなフェルメールの態度に何かを感じ嫉妬心を露わにし始めたカタリーナは、グリートに「疫病神」という侮蔑の言葉を投げつけた。
 
 マーリアが、絵の注文を取るためにファン・ライフェンを屋敷に招いたのは、それからまもなくのことだった。ファン・ライフェンは、晩餐の席で、グリートをモデルに加えた集団肖像画を描いてはどうかと、フェルメールを挑発する。それは、たちまち町の噂になった。というのも、以前、ファン・ライフェンは、フェルメール家に雇われたばかりの使用人をモデルにした絵を発注し、その後で使用人を手込めにしたことがあったからだ。その話を使用人仲間から聞かされていたグリートは、不安のまっただ中に立たされる。そんな彼女に、フェルメールは言う。「注文された集団肖像画とは別に、君を描く」と。
 
 デッサンは、マーリア以外の家族には秘密で行われた。フェルメールに頭巾を外せと言われたグリートは、青いターバンを巻き、キャンバスの前でポーズを取る。が、何かが足りないと感じたフェルメールは、カタリーナの真珠の耳飾りをグリートに着けさせようとする。「それはできません」と拒むグリート。だが、フェルメールから描きかけのデッサンを見せられた彼女は、自分自身の内面までが写し取られたその絵の出来映えに息を呑んだ。グリートの中の芸術家の心が、そして、画家を愛する女としての心が、彼女にこう告げていた。絵の中の少女には、真珠の耳飾りが必要だと。
 
 しかし、この決断によって、グリートは大きな代償を支払うことになる……。

スタッフ

監督:ピーター・ウェーバー
製作:アンディ・パターソン、アナンド・タッカー
脚本: オリビア・ヘトリード
撮影監督: エドゥアルド・セラ
美術: ベン・ヴァン・オズ
編集: ケイト・エヴァンス
衣装デザイン: ディーン・ヴァン・ストラアレン
音楽: アレクサンドル・デプラ

キャスト

グリート:スカーレット・ヨハンソン
フェルメール:コリン・ファース
ファン・ライフェン: トム・ウィルキンソン
ピーター: キリアン・マーフィー
コルネーリア: アラキナ・マン
カタリーナ: エッシィ・デイビス
マーリア: ジュディ・パーフィット

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