原題:Bread & Roses

人は誰でも誰かとつながっていたい。

2000年/イギリス/カラー/ヴィスタ/110分/ドルビーSRD/ 配給:シネカノン

2007年04月25日よりDVDリリース 2002年8月31日より銀座シネ・ラ・セットにて夏休みロードショー公開 同時公開モーニングショー『ナビゲーター・ある鉄道員の物語』。

公開初日 2002/08/31

配給会社名 0034

公開日メモ イギリスが誇る至宝ケン・ローチ監督の「マイ・ネーム・イズ・ジョー」に続く感動のトゥルー・ストーリー。社会に対する鋭い批評性と、人間に対する厳しくも優しいまなざしは健在で、2000年のカンヌでコンペ部門に正式招待された一級のエンタテイメント作だ。

解説



●エンタテインメントの一級品
イギリス映画界の誇る至宝ケン・ローチ監督が、初めてアメリカに乗り込んで撮影を敢行し、『マイ・ネーム・イズ・ジョー』に引き続き撮り上げた感動のトゥルr・ストーリーが、遂に日本でも公開される。ケン・ローチ独特の社会に対する鋭い批評性と人間に対する厳しくも優しいまなざしは健在で、さらに今回そのラストにはローチ作品としては珍しいとも言えるカタルシスが訪れ、その爽やかな希望を抱かせる終焉は、エンタテインメント作品としても一級品の風格を漂わせている。
●普遍的な感動ドラマ
舞台はロサンゼルス。その響きは光る海とふりそそぐ太陽、ハリウッドとディズニーランドなど華やかなイメージを思い起こさせるが、きらびやかなイメージに隠された、決してハリウッドが描くことのないもう一つの姿が、そこには確実に存在している。メキシコとの国境に近い地域には、中南米諸国からの多くの移民が様々な悪条件の下で暮らしている。本作では彼らの労使間闘争にスポットを当てて社会問題を提起しながら、それ以上に様々な危機に立ち向かって力強く生きる姉妹の絆とそれぞれの愛をリアルに描いて、奥深い普遍的な人間ドラマに仕上げている。
●最高のコララボレーションと絶妙のアンサンブル
主なスタッフにはローチ組とも言えるメンバーを集め最高のコラボレーションを見せているが、今回は初めてアメリカで撮影したため、現地スタッフはステイーヴン・ソダーバーグから紹介してもらい、様々な規制に関する多くのアドバイスも受けている。またパーティーのシーンではティム・ロスやベニチオ・デル・トロなどがカメオ出演している。そして今回もプロと素人の俳優を混在させながら絶妙のアンサンブルを奏でているが、特に姉妹の葛藤を描いたシーンの迫真の演技は、観る人すべての胸を打ち、深い感動を刻み込むだろう。またサム役のエイドリアン・ブロディは、今年のカンヌでパルム・ドールを受賞した『戦場のピアニスト』に主演している。

ストーリー

木々の生い茂った通なき道を急ぐ一団がいた。貧しい身なりをした数人の男女だ。そこはメキシコとアメリカの国境地域。彼らは国境越えの専門家”コヨーテ’の斡旋でアメリカに不法入国しようとしているのだった。その中の一人にマヤがいた。小さい頃からロスに出稼ぎに行き、すでに家族を持って暮らしている姉ローサを頼ってロスに向かっているのだ。なんとかロスに到着したマヤをローサが迎えに来たが、お金が足らずマヤは再び車に押し戻されてメキシコに送り返されそうになる。コヨーテのメンバーは、自分たちの欲求を満たすためにマヤをモーテルに連れて行くが、マヤは隙を見て部屋から抜け出し、やっとの事でローサの家にたとり着く。マヤはローサと夫のバート、二人の子供に暖かく迎えられる。しかしバートは糖尿病で眼を患ってお`人治療代もかなり高額だったため、突然のマヤの訪問はギリギリの生活を送っているローサを神経質にさせた。
マヤは早速近くのバーで働き始めるが、いやらしい客に耐え切れず、ローサに自分もローサと同じ清掃員として一緒に働きたいと必死に頼みこんだ。ローサの尽力でなんとかスーパーバイザーのペレスはマヤを雇うことを承諾するが、マヤはいきなり1ヶ月分の給料を手数料としてピンはねされる事をペレスから告げられる。
清掃員の仲間は全員ラテン系を中心とした様々な国からの移民だった。マヤは仲間から色々とやり方を教えてもらいながら仕事を覚えていったが、ある日ペレスと警備員たちに追われて走ってきた1人の青年をかくまって、上手く逃がしてあげる事に成功する。
後日、マヤが逃がした青年かローサの家を訪れる。彼は労働組合をオーガナイズしているサムで、雇用者の搾取と非道を説き、彼らが展開する「ジャスティス・フォー・ジャニターズ(清掃員に正義を!)」のキャンペーンに参加するよう二人を誘うが、ローサはまるで興味を示さず、逆に感情を荒げてサムを追い出してしまう。そして信じているのは自分自身だけで、組合に参加する事の危険性を口にした。しかしマヤはサムの話に関心を持つと同時に、少しサムのことが気になり始めていた。
ある日、年配の清掃員テレサは、ほんの少し遅刻したのと眼鏡を忘れただけで、皆の前でペレスから解雇命令を受ける。しかしこの不当な扱いに対して誰も何も言う事ができなかった。マヤはサムに連絡を取り、サムは同僚のエマと一緒にマヤたちが働くビルにやって来てミーティングを開いた。労働者と清掃会社とビル会社の関係性や自分たちのキャンペーンの趣旨を実際の成功例を示して説明した。ほとんどの人がサムのキャンペーンに賛同し、参加する意志を持つ者もいたが、マリーナは解雇を恐れ参加に反対した。次の日、ペレスはサムがミーティングで書いたメモを見つけ、皆を集め怒りをあらわにし「参加者は解雇する」と脅しをかけた。そしてペレスはベルタを呼び止め、スーパーバイザーのポストを約束するのと引き蓄えにミーティングの先導者を問いただしたが、ベルタは黙ってうつむくだけだった。ベルタが解雇された。マヤはそんな大切なメモを置きっぱなしにしたサムを非難しに彼の家へ急いだ。サムは後悔し責任を感じていたが、どうすることもできなかった。二人は打ちのめされながらも、互いの距離が急速に近くなるのを感じていた。
 サムに賛同する仲間たちが行動を始めた。しっかり昼休みの時間を取り、キャンペーンの集会に参加した。そこには他の会社で働く清掃員も沢山いて、ポジティブで生き生きとした空気が漂っていた。キャンペーンの輪は次第に大きく広がり、彼らは街頭でチラシを配布してスローガンを唱和し、勉強会を開いて過去に勝利したキャンペーンのビデオを観て話し合った。またサムはよりインパクトのあるアクションが必要だと考え、仲間と一緒にランチタイムを狙って、ビルのオーナーたちにゲリラ的な交渉を仕掛けた。
ある夜彼らはパーティーを開いてバンドに合わせて楽しく
過ごしていたが、娘と一緒に踊っていたバートが急に倒れて
しまう。病院に運び込まれたバートはなんとか一命を取り留
めるが、新たに腎臓にも悪い箇所が見つかりすぐに精密検
査が必要な上に、網膜も至急手術しないと危険な状態だと
言われる。しかし彼らには健康保険も与えられていなかった
ので、莫大な費用がかかってしまう…
サムは、ビルのオーナr会社がハリウッドの俳優などセレ
ブリティを集めてパrティーを開催する情報を入手する。そこ
でとてつもない計画を思い付く。それはパーティー会場に忍
び込んでパフォーマンスを行って、清掃員の過酷な労働条件、その規定以下の賃金の低さをアピールしようというものだった。皆は事の重大さを感じながらもその計画に賛成した。マヤに好意を持ちとても仲のいいルーベンは、大学の奨学金のテストに合格して入学手続きも済ませ、あとはわずかなお金を払い込むだけだった。ルーベンはマヤに、何か問題があって奨学金を取り消されたくないのでサムの計画には
参加できないと告げるが、マヤは、私や他の人にもリスクはあると答えてその場を立ち去った。サムと皆は計画を実行しさらにビルの前でデモを始めた。計画は大成功でテレビのニュースにも取り上げられ、集まって見ていた皆の顔にも誇らしげな笑顔が浮かんでいた。マヤはサムとこっそり抜け出し、別の部屋で情熱に身を任せる。
 事態は急転する。ペレスは部外者をビルに入れたという理由で、計画の参加者6人の名前を挙げて同時に解雇する。しかし参加しなかったルーベンの名前が呼ばれたことに、名前を呼ばれなかったマヤが抗議すると、マヤも同罪として解雇されただけでなく、ルーベンの解雇が取り消されることもなかった。誰ともなくマリーナを密告者として非難し始めたが、マリーナはきっぱりと否定し驚くべきことにその場にいないローサの関与をほのめかした。マリーナはローサが代償とし
て別のビルのスーバーバイザーの地位をペレスから約束されていると言い放った。マヤは急いで家に戻りローサに詰め寄った。ローサはバ
ートの治療費のためと事実を認めたが、マヤに裏切り者と呼ばれて衝撃的な事実を告げた。子供の頃からロスに働きに出されていたローサは、メキシコの家族に仕送りをするために体を売っていたというのだ。さらにマヤが清掃の仕事に就くためにも、ローサはペレスと寝たというのだ。ローサは今まで誰にも言わずに溜めていたものを全て吐き出した。二人は立ち尽くし、ただ泣きじゃくるだけだった。
 マヤは無実の罪で解雇されて大学への最後の支払いが滞ってしまったルーベンのために、意を決してガソリンスタンドでお金をだまし取る。一人で入学手続きを済ませ、お詫びの印の万年筆をプレゼントして、アメリカで一番の弁護士になるようにルーベンを励ました。
サムと大きく広がったキャンペーン参加者は、不当な解雇に反対するために、ビルに向かって大規模なデモを展開した。その数は数万人に膨れ上がっていた。解雇された皆の写真を掲げ、横断幕を揺らし、そして音楽に合わせて歌声を一つにした。最後にビルのロビーに集まってサムが演説をしている時に、駆けつけた警官が不法侵入を理由に武力行使に出る。次々と逮捕され、サムもマヤも仲間たちも皆留置所に送られた。しかしその場には、何かを成し遂げた時の満足感と和やかな雰囲気が漂っていた。そして遂にサムに連絡が入る。会社が要求を受け入れ、全員の職場復帰を認め、健康保険や有給休暇などを定める
ことに同意したのだ1留置所は歓喜の声で溢れたが、マヤだけが警官に呼び出されて別の部屋に連れて行かれる。
 ガソリンスタンドに残っていた指紋とマヤの指紋が一致して、盗みが判明したのだ。マヤは罪には問われないものの、二度とアメリカの地を踏めないというアメリカ政府の決定で強制送還されることになってしまう。呆然としてバスに乗り込むマヤに、外で待っていた皆が声
をかけ励ました。皆はバスに駆け寄り堅い握手を交わし、サムは手紙を渡した。バスが走り出し後部席に移動したマヤの目に、バスを追いかけてくるローサの姿が入って来た。運良く信号で停止したバスに追いついたローサは、マヤと身ぶりを交えて話をした。「元気でね」「愛してる」。やがてバスが走り出した。もう二度と会えないかもしれない二人だったがそこには確かな強い絆があった。

スタッフ

監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァディ
撮影:バリー・エイクロイド
編集:ジョナサン・モリス
音楽:ジョージ・フェントン
美術:マーティン・ジョンソン
プロデューサー:レベッカ・オブライエン
製作総指揮:ウルリッヒ・フェルスベルグ

キャスト

サム:エイドリアン・ブロディ
マヤ:ピラール・パディージャ
ローサ:エルピディア・カリージョ
ペレス:ジョージ・ロペス
ルーベン:アロンソ・チャベス
エラ:ビバリー・レイノルズ
バート:ジャック・マッギー
(カメオ出演)
ティム・ロス
ベニチオ・デル・トロ
ロン・パールマン

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