ファインディング・ニモ

それは、2003年全米サマー・シーズンを激震させた《事件》だった。『マトリックスリローデッド』『ターミネーター3』『チャーリーズ・エンジェルフルスロットル』といった超人気シリーズ作品がひしめき合う中、5千万ドル以上もの大差をつけて夏を制覇したのは、スター俳優など一人も登場しない小さな魚たちが主人公のアニメーション映画だったのだ。世界中をかってない感動で包み込んだ『モンスターズ・インク』のピクサー・アニメーション・スタジオ製作、ウォルト・ディズニー提供による全世界待望の最新作『ファインティング・ニモ』。《人間の世界》にさらわれてしまった息子のニモを探して、父マーリンと相棒のドリーが繰り広げる奇跡の冒険を描いたファンタジー・アドベンチャーである。全米では5月30日に公開され、ディズニー映画史上最高のオープニング成績を記録。その後も驚異的な大ヒットを続け、9月7日現在の興行収入はすでに3億3,385万ドルを突破。決して破られることはないと言われていた『ライオン・キング』が持つ全米アニメーション映画の歴代記録を打ち破り、全ジャンルの映画史上でもすでに歴代第8位を獲得。その勢いは留まるところを知らず、世界中にセンセーションの輪を広げている。
舞台は、オーストラリアのグレート・バリアリーフ400個もの卵の中から、たったひとつだけ悲劇を逃れ生ご残った奇跡の命があった。妻が自分の命とひきかえにして守り抜いたこの子を、夫のマーリンは《二モ》と名づけ、固く心に誓う。「もう一度と恐い思いはさせない。何があっても必ずお前を守ってみせる」と。だが、6歳になったニモが初めて学校に行く日に、事件は起こった。マーリンの目の前で、ニモはダイバーにさらわれてしまったのだ！《人間の世界》に連れさらわれた魚は、二度と海には戻れない。ましてや、この途方もなく広い海の中から息子を見つけ出すことなど、できるわけがない。だが、マーリンは諦めなかった。「逢いたい」ただその思いだけが、マーリンに希望を捨てさせなかった。父の愛はきっと、どんな海にも負けない程に大きいのだから。ニモは、かつて奇跡に救われた大切な命。そして、奇跡はもう一度起こるかもしれない。亡き妻のような愛と勇気が、マーリンにあれば…。
マーリンは、ニモの行方を知っているというドリーに出会い、彼女と共に旅に出る。愛するニモを探して、マーリンとドリーの大冒険が、今始まった！
『トイ・ストーリー』シリーズでは《おもちゃの世界》、そして前作『モンスターズ・インク』では《モンスターの世界》…。ディズニー/ピクサー作品では、《人間の世界》とは別の《もうひとつの世界》が存在し、その《二つの世界》を主人公たちが越境することによってファンタジックなアドベンチャーが生み出される。そして、彼らに越境させる勇気を与えてくれるのは、「愛するものを守りたい」というひたむきな思いだ。本作に

おいても、臆病者だった主人公のマーリンは、息子を救いたいという一途な情熱から、魚たちが何よりも恐れる《人間の世界》へと向かう。ニモもまた、父との再会を信じて待ち続ける。そして、その困難を乗り越える過程で、マーリンは子供に自由を与えることの大切さを、ニモは父の愛の深さを知る。小さな魚たちが教えてくれる《父と子の絆》この普遍的な愛の物語に、人々は世代や国境を超え、限り無い喝采を贈った。
さらに本作品を映画史に残る唯一無二の存在にしているのが、誰も観たことのない驚異的な映像美である。「水の中を描く」ことは、これまでコンピュータ・アニメーションにおいて最も難しい分野と言われてきたが、のべ180人に達するピクサー社のテクニカル・チームの才能と情熱が、3年の歳月をかけてこのプロジェクトを実現させた。ストーリーを心ゆくまで楽しみながら、観客は現代におけるコンピュータ・アニメーションの最高水準を体験できる。しかもそれは、誰もが海の中であることを疑わないリアリティを持ちながら、現実ではありえない美しさに満ちた、宝石のようにファンタジックな海の世界だ。
監督は、ディズニー/ピクサー作品の全ての脚本を手掛け、『バグズ・ライフ』では共同監督も務めたアンドリュー・スタントン。本作は彼にとって『トイ・ストーリー』が誕生する以前の1992年から温めてきたという渾身のプロジェクトである。製作総指揮はピクサー社の核として3DCG長篇アニメーションに今日の繁栄をもたらしたジョン・ラセター。音楽には『ショーシャンクの空に』『アメリカン・ビューティー』などでアカデミー賞にノミネートされたトーマス・ニューマンが参加。また、”英国の貴公子”の異名をとる人気ミュージシャン、ロビー・ウイリアムズが歌うエンディング・テーマ「BeyondtheSea」も話題を集めている。
『トイ・ストーリー』のウッディ&バズ、『モンスターズ・インク』のサリー&マイク、そしてかわいい少女ブーに引き続き、この『ファインディング・ニモ』からも素晴らしいスター・キャラクターたちが誕生した。小心者だが息子を溺愛しているマーリンと、ダイバーにさらわれた息子のニモ、マーリンの旅の道連れになる健忘症のドリーの3匹の魚たちを中心に、個性豊かな海の住人たちが大活躍。自分だけの”お気に入りの一匹”を発見するのも映画の楽しみ方のひとつだ。
遊び心に満ちたこの映画は、最後の最後まで油断で吉ない。エンド・ロールのラストには思わぬ”隠れキャラ”が登場するので、絶対にお見逃しなく。