ダーク・ブルー
原題:Dark Blue World
この空に君を想う。 故国チェコを捨て、 英国空軍として戦ったふたりの男—— そして同じ女を愛してしまった。
2001年9月13日チェコ初公開
2001年/チェコ=イギリス合作/112min/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD 後援:チェコ共和N大使館/提供:スタジオジブリ、日本テレビ、博報堂、ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム
2003年04月04日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年04月04日よりDVD発売&レンタル開始 2002年10月26日よりシネスイッチ銀座、関内アカデミーにてロードショー公開
公開初日 2002/10/26
配給会社名 0012
公開日メモ この空に君を想う。故国チェコを捨て、英国空軍として戦ったふたりの男——そして同じ女を愛してしまった。
解説
2001年チェコ国内において動員100万人を突破、10人に1人が観たという記録的大ヒットとなった『ダークブルー』は『コーリャ 愛のプラハ』にて96年アカデミー外国語映画賞を受賞した名匠ヤン・スヴィエラークの最新作である。前作のスタッフを再び集結させ、通常のチェコ製作映画の10倍の製作費を投入したこの大作は、2002年度アカデミー賞のチェコ代表にも選ばれている。
ヤン・スヴィエラークは『コーリャ〜』で描いた心温まる感動と奥深さにさらに磨きをかけ、より大きなスケールで戦争に翻弄された人々の運命を描くことにより、喜劇と悲劇の両方をうまく扱う才能を証明した。
脚本は、監督の父であり、『コーリャ〜』の主演及び脚本を手掛けたズディニェク・スヴィエラーク。この類まれな才能を持った親子のチームとそれぞれ役者の演技力が、簡単にメロドラマに転じやすい物語を深みのあるドラマに仕上げている。またスケールの大きな戦闘シーンを兼ね備えた本作品はヨーロッパ映画の宿命といえる“アート系映画”のくくりを抜け出して、各国で記録的な大ヒットを樹立したことも大きな話題を呼んだ。
第二次世界大戦下において故国を捨てて英国窒軍に入隊したチエコ人パイロノトたちは、戦後ようやく故郷に戻るやいなや投獄されてしまうのだが、彼らの運命を描いた本作品は一連のフラッシュバックを通して語られる。映画はかつてのパイロットであるフランタが収容された1950年代共産主義下の刑務所での“灰色の時代”と、戦争が始まる前の彼の陽気な思い出との間を行ったり来たりしながら語られていく。だがユーモアに富み、気の利いた脚本のおかげで重い過酷な雰囲気が全面に押し出ることもなく、物語の核である友情と愛が圧倒的になりすぎることもなく、さりげなく反全体主義政策のメッセージを伝えている。
オープニングシーンでは、チェコ人パイロットであるフランタが若いパイロットを訓練するために派遣された空軍基地にドイツ軍が侵攻してくる。チェコ軍は一発も発砲するこなく降伏し、パイロットたちはドイツ軍司令官に仕えるか、逃げ出すかの選択を迫られる。フランタ役のオンドジェイ・ヴェトヒーはこの役に知性と繊細さを吹き込み、根底に横たわる誇り高き抵抗を上手く投影しながらナチスによるチェコ人への侮辱を表現している。彼は『コーリャ〜』にも出演しているチェコのベテラン俳優である。
やがてパイロットたちはそれぞれの任務に飛び立っていく。小さな英国軍とドイツ軍との間で繰り広げられるドッグファイトにはオンドジェィ・ソウクップ手掛ける激しくかつ壮大な音楽により一層のインパクトが備わっている。
空中戦で互いに助け合うフランタと若いパイロットであるカレルとの間には、いつしか年の差を超えた友情が芽生えるが、同じ女性に恋することで試練を迎える。この英国人女性スーザンを演じるのは『ブラス』、『ウェールズの山』などに出演するアイルランド人女優タラ・フィッツジェラルド。カレル役のクリシュトフ・ハーディックは本作品が初の映画作品にも関わらず、若い兵士の感情の起伏を豊かに演じ、カレル役に息吹を与えた。
フランタの友情と忠誠と愛の追想は、全休主義の時代が彼らが体現していたデモクラシーと自宙の観念を鎮圧しなければならなかったがゆえに、無慈悲な刑務所の日常生活の侵入で断ち切られる。しかし典型的なチェコのヒューマニズムを持ってしては、例え彼らとともに拘束されていたドイツのナチの医者でさえも、同情を禁じえない。そこには善と悪とのキャラクター設定もなければ、簡単な答えもないのである。
ストーリー
1950年、第2次世界大戦終結後冷戦真っ只中であり共産主義政権下のチェコスロバキア。雪がまばらに残る樹木の茂る丘陵地方にそびえたつ大きな要塞は、かつてはミロフと呼ばれ、現在は“反逆者”の強制収容瞬となっている。
礼拝所は収容された者たちの作業場となっている。囚人の一人である40歳くらいの中年男フランタ・スラーマ(オンドジェイ・ヴェトヒー)は突然倒れ、収容所内の診療所に運び込まれ、肺炎と診断される。診療所は同じく囚人のドイツ人医師によって運営されていた。小さな2つの入れ思は彼がナチ親衛隊員だったことを物語っていた。中庭では収容所の所長が囚人たちに向かい、彼らがここから出られる唯一の道は墓場への荷車だと詰る。それは皮肉にも「恩赦」荷車と呼ばれていた。時は1939年。チェコ空軍の教官であるフランタは、2人乗りの飛行機に恋人ハニチカを乗せ、戯れていた。和やかで親密な空気。だがその夜、ドイツ軍がチェコに侵攻してきたことをラジオで知らされる。
薄暗い朝。フランタはどんよりとしたムードの基地へと向かう。若いパイロットのカレル・ヴォイティシェク(クリシュトフ・ハーディック)は軍用機を盗みポーランドに向かおうとするが、フランタはこんな悪天候の中飛行するのは自殺行為だと彼を止める。ドイツ軍が到着する前にドイツ人役人のヘセに先導されたフランタの上官は彼にドイツ軍への譲渡の任務を与える。カレルにはフランタの礼儀正しいふるまいもただの裏切りにしか写らなかった。
フランタはハ二チカに別れを告げ、カレルとともに戦地に出発する。英国空軍はチェコ人パイロットたちが英語を話せるようになり、英国機で再訓練を終えるまで飛行を許可しなかった。「チェコ人には忍耐が必要だ」と言う空軍指令官のベントレー(チャールズ・ダンス)に向かってフランタは「彼らはチェコ空軍の訓練を十分に受けたパイロットで、英国空軍に従軍するために家族を捨ててきたのだ」と告げる。
ある日、チェコ人パイロットたちは例によって不機嫌そうに飛行場をぶらついていると突如スピーカーから大音量で彼らに緊急発進指令が下される。最初の任務でドイツ軍の大軍に出くわすとは誰もが信じなかった。飛行を許された喜びも束の間、パイロットの一人であるタムタムが撃墜されてしまう。
またある日カレルとフランタは上空に忍び寄るドイツ軍爆撃機の後を追っていた。カレルは降下して爆撃機に発砲するが逆に爆撃機の大砲が彼を直撃、カレルは墜落する。誰もがカレルは死んだものだと思っていた。
だがなんとか命を取りとめていたカレルはスーザン(タラ・フィッツジェラルド)という英国人女性に助けられる。彼女は傷の丁当てをして、暖かい食事を与える。食事の最中に彼女は夫が戦地で行方不明になっていることを告げる。彼らの間に親密な空気が流れ、その夜、二人は愛し合う。
甚地に戻ったカレルを見て驚きと喜びに友を夢中で抱きしめるフランタに、カレルは人生で初めて恋をしたことを告げる。
だがフランタとともにスーザンの家を訪ねるとカレルに対する彼女の態度は別人のように素っ気なく冷たかった。困惑するとともに庭で楽しそうにフランタと話すのを見て二人が惹かれあってることを察するカレル。後日スーザンから「あの一夜は過ちで、もう二度と連絡をしないで」と書いた手紙を受け取る。動揺したカレルは濃い霧の立ち込めるなかスーザンの家へと向かうが、すれ違いでスーザンがフランタに会いにやってきた。「カレルではなくあなたのことが忘れられない」と話す彼女にフランタは心を動かされながらもカレルを裏切ることはできないと告げる。
ある日曜日、フランタはスーザンの家を訪れる。彼はスーザンにカレルの話をするつもりだったが、本心は違うのだとわかっていた。罪悪感に苛まれながらも二人は引き寄せられたように愛し合う。もう想いを止めることはできなかった。
ある日カレルは彼女の家の前にフランタの車が停車してあるのを目撃する。裏切られた気持ちでいっぱいになり、ひどく傷つき泣き崩れてしまう。
フランタが基地に戻ると酔っ払ったカレルが絡んできた。彼らの友情はもう修復できないくらい粉々に砕けていた…。夕食の場でフランタはカレルに謝り、許しを乞う。だがカレルの怒りは爆発し、無抵抗なフランタはただ殴られるがままだった。
アメリカの参戦によりドイツ戦線は不利な状況へと追い込まれていた。カレルとフランタはイギリス海峡を横断してアメリカ軍爆撃機の護衛の任務につく。しかし途中でフランタの操縦する機体は機能不全となり海に墜落する。フランタはかろうじて助かるが彼の救命ボートが破裂してしまう。フランタの窮地を目撃したカレルはギリキリまで高度を下げ、自分の救命ボートを落下させようとする。救命ボートを膨らませながらコックピットのハッチを開けようと夢中になり、機体が方向を変えているのに気が付かなかった。機体が頭から海に突っ込む寸前に救命ボートを外に出す。カレルの救命ボートによってフランタは救われる。しかしカレルの姿はどこにも見当たらなかった。フランタは寒さに震え、むせび泣きながら救命ボートによじのぼる。カレルは自分の身を犠牲にしてフランタを助けたのだ。
負傷した身体が回復した後、フランタはスーザンの家を目方ねる。そこで見たものは、戦場から戻った彼女の夫だった、車椅子生活を余儀なくされた夫に彼女の残りの人生を捧げなけれはならないこと、もう自分の出る幕はないことを悟る。
終戦後まもなくフランタはチェコスロバキアに戻るそこでかつての恋人ハ二チカが別の男と結婚したことを知る。彼女の子供になついている愛犬を置いて、彼は一人立ち去る。
強制労働所のチャペルが改造された作業場。フランタは窓からからっぽの空を見つめる。
スタッフ
監督:ヤン・スヴィエラーク
製作:エリック・アブラハム、ヤン・スヴィエラーク
脚本:ズディニェク・スヴィエラーク
撮影:ウラジミール・スムットニー
編集:アロイス・フィシャーレク
音楽:オンドジェイ・ソウクップ
音響:ズビニェク・ミクリーク
メイク:ゼネック・クリッカ
衣裳:ヴィエラ・ミーローバー
キャスト
フランタ・スラーマ:オンドジェイ・ヴェトヒー
スーザン:タラ・フィッツジェラルド
カレル・ヴォイティシェク:カリシュトフ・ハーディック
ベントレー司令官:チャールズ・ダンス
マハティ:オールドリッチ・カイザー
フラシュケ医師:ハンス・ヨルグ・アスマン
ムルトヴィ(“デッドマン”):デヴィッド・ノヴォトニィ
シセル:ラディム・フィアラ
タムタム:ルーカス・カンター
LINK
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