ＶＩＰＥＲ

2002年、眠らない街に絶叫がこだまする！
最強モンスター(スネーク)パニック・アクション！

大人気ジャンル“モンスター・パニック”に新しい１ページが加わる！『VlPER』は、モンスターパニックの要素に香港映画独特のスピード感がミックス、ＳＦＸも惜しみなく駆使した超ド級エンターテインメント大作だ！舞台となっているのは、訪れるものをその妖艶な空気に酔わせる、眠りを知らぬ都市香港。そして、その闇に潜み冒頭から一人、また一人と毒牙に掛けてゆくものの正体とは…？これまでの同ジャンルにはなかった独特の香りを醸し出す本作品を手がけたのは、『酔拳マスター』で女カンフー使い手を演じたシャロン・ヤン・パン・パン(彼女はなんと製作会社の社長に収まっていた！)。主演は『ザ・ミッション／非情の掟』『拳王』のジャッキー・ルイ。新世紀香港映画界の旗手達による新感覚モンスターパニック決定版！

【チェック・ポイント！】

　実物群れ系にしろ、巨大系にしろあくまでモンスター的な脅威として人間に襲いかかる作品が多い西洋蛇映画と、一味違うのが中華圏の蛇映画だ。なんてったって、東宝が56年に映画化した『白夫人の妖恋』の原点である『白蛇伝』の国だから、そこには精霊の化身や自らの意思や感情を持った存在、また人間の情念が仮託されたものなどとして描かれることが多いのだ。蛇版『タワーリング・インフェルノ』(笑)の『人蛇大戦・蛇』(82)は、建築現場に棲息していた蛇の群れを叩き殺したことの“祟り”を匂わせていたし、三級片（成人映画）である『蛇姦』(76)では、もてな系暗い男の情念と欲望の道具として扱われ、自分をバカにした男に牙を剥き、女を犯したりしたわけだ。
　と言う訳で、『ＶＩＰＥＲ ヴァイパー』である。本作の製作プロダクションである名威影業有限公司と、プロデューサーのジェレミー・チェンは、昨年の12月にリリースされたビデオ撮り蛇映画『メデューサ』(00)と同じで、このジャンルへの拘りみたいなものが感じられますな。『メデューサ』は、下水道で討伐隊に焼き払われそうになったところを危うく難を逃れた蛇の化身が、人間の美女の姿に変身し助けてくれた男と愛の日々を営むが…という、現代版『白蛇伝』的作品でだったが、どうもビデオ撮りまる出しの廉い画面が演出の拙さに拍車をかける残念な出来栄えだった。宣伝文句にあった、鬼畜場面なんて全然無いしね。そんな不安要素を抱えつつ、作品に臨んだのだが『メデューサ』よりは格段に楽しめる作品になっていたので一安心。映像の感じは今回もやはり廉い印象を拭えないのだが、それでも女の顔から大蛇が飛び出し男に絡みつくなど、ＶＦＸによるモンスター的な見せ場もしっかり用意されてはいるのだ。
　不夜城香港で、謎の死を遂げる野郎ども。犠牲者の共通点は、バーテンをつとめる綺麗どころのおねーちゃんたちが踊りながら酒を振舞う“こよーて・あぐりー”(笑)な店の常連だったということ。さらに店のオーナーたる美女が、蛇フリークで…と言うことで、蛇女系の展開を予想させつつ、ちょっと意表をついた結末へと収束する。ネタバレを避けここで詳述することはしないが、その点でも本作は決して“モンスター・パニック・アクション”ではありえないが、中華圏の蛇映画として正しい１本とは言えるだろう。
（殿井君人）