ジェラティノス

摂氏マイナス95度、一酸化炭素95％というすさまじい環境である火星。そこでも生きられるようにとＮＡＳＡの極秘プロジェクト、ミノタウロス計画によってつくり上げられてしまった超酸化体。それは殺戮行動以外とることのできない恐るべき生物となった！！地球初登場！かってない残虐な怪物が次々と人を喰らう！衝撃のモンスターパニック大作！それがこの『ジェラティノス』だ！
この殺識モンスターをなんと形容したらよいのか！カ二とイカとクモとナメクジの特徴をすべて持ち合わせているような圧倒的不気味さだ。人間の口に突如入り込むかと思えば、硬くなり突き刺す！そしてそのイカの足のようなものが肉体を何度も貫きながらぬめって引き裂く！この未知の殺戮者は必見だ！こうしたグロテスクな怪物には代表的なものに『ザ・グリード』があり、また『ヴァイラス』『トレマーズ』『エイリアン』シリーズなど人気作揃い。その流れに連なる最恐モンスター・パニック！

【チェック・ポイント！】

　『ジュラシック・シティ』、本作、そして5月17日にリリースの『アルティメット・ストーム』と、各社から監督作品が３本連続リリースされ、すっかり強化月間の様相を呈している(笑)ジェイ・アンドリュース＝ジム・ウィノースキー監督作品。元々コーマン御大の下で、低予算・濫作を叩き込まれた人なので、どうしようもなくヌルイ作品も多々撮っていたりするのだが、本作はＢ級ＳＦホラーとして手堅く楽しめる好編に仕上がっている。
　火星のテラフォーミングのために開発されたV.I.P.E.R.＝邦名“ジェラティノス”とは、コンピューター・チップを遺伝子操作した有機体と合成させた群隊で、物語の前半では形状を自在に変化させる“ブロブ”系＆伸縮自在の“触手”系モンスターとして、要所要所で犠牲者を血祭りに挙げ、クライマックスではジャケットにあるクリーチャー形体（通称“イカ野郎”）でイカ頭が二つに裂けると鋭い牙を剥き出しにするサービスぶり。触手に絡みつかれた犠牲者が、酸化し錆び崩れる効果も面白い。まぁ、確かにジェラティノスにしろ犠牲者にしろ、ほとんどＣＧアニメといった感じの質感をもうちょっとリアルにしてくれたら、さらにエキサイトだったであろうと思うとちょっと残念ではあるが、目にも留まらぬような速さで犠牲者を絡めとり刺し貫く無数の触手の描写は快感だ。
　物語的にも『スピーシズ２』風に宇宙空間のスペース・シャトルでの惨劇から幕を開けつつも、メインはあくまで片田舎の町に限定し大風呂敷を広げずに推移するのも、50年代Ｂ級ＳＦの再来のようでファンには嬉しい。研究所から周到な計画でジェラティノスを強奪した一味の逃走用飛行機が、都合よく…悪くか(笑)故障して…なんて発端もそんなムードだ。
　キャストの中での注目は、何と言ってもジェラティノス開発のリーダー、バーナム博士を演じるテレサ・ラッセル。旦那であるニコラス・ローグ監督の諸作などでの、アンニュイなファム・ファタールぶりが忘れ難い彼女も、最近では『ワイルド・シングス』など有閑マダムがすっかり定着した観のある今日この頃。本作でも、ちぃ〜っとも科学者には見えませんが、その色香を堪能しっかり堪能できます。ジム君の女の趣味って、『ジュラシック・シティ』の時みたいな、いかにもアメリカン・アーパー・グラビア系って印象だったんですが、意味無くもしっかりと風呂上りに電話を撮るテレサのシーンを挿入したりとこちら方面でもぬかりは無し。
（殿井君人）