シッピング・ニュース
原題:THE SHIPPING NEWS
人生最高のニュースを伝えたい
2001年ナショナル・ボード・オブ・レビュー 助演女優賞受賞〈ケイト・ブランシェット〉 2001年第59回ゴールデン・グローブ賞2部門ノミネート 主演男優賞〈ケヴィン・スペイシー〉、音楽賞〈クリストファー・ヤング〉
2001年12月25日全米初公開
2001年/アメリカ/カラー/112min/スコープサイズ/ドルビー・デジタル、DTS、SDDS ミラマックス・フィルムズ提供/アーウィン・ウィンクラー・プロダクション作品 日本語版字幕:石田泰子/原作:『港湾ニュース』集英社刊 提供:アスミック・エースエンタテインメント、松竹、アルゼ、角川書店 配給:アスミック・エース、松竹
2010年08月27日よりDVDリリース 2002年08月02日よりDVD発売&レンタル開始 2002年3月23日より全国松竹系にてロードショー公開
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公開初日 2002/03/23
配給会社名 0007
公開日メモ 『サイダーハウス・ルール』、『ショコラ』で2年連続アカデミー賞にノミネート。名実ともに名匠と、世界中から認められるラッセ・ハルストレム監督の待望の新作が完成した。
解説
北の国から、あたたかな感動がやって来た
『サイダーハウス・ルール』、『ショコラ』で2年連続アカデミー賞にノミネート。名実ともに名匠と、世界中から認められるラッセ・ハルストレム監督の待望の新作が完成した。今回はピュリッツァー賞と全米図書賞をダブル受賞した世界的ベストセラー『シッビング・ニュース』が原作。失意の男が凍てつく北国で、人の暖かさに触れ、自分自身を取り戻していく姿を描くこの物語を、人間の機微を描くことに定評のあるハルストレム監督がアカデミー賞俳優ケヴィン・スペイシーを主役に配して映画化。人々の心に大地の根を溶かすようなあたたかな感動を呼び起こし、既にアカデミー賞の呼び声も高い本作が、いよいよ日本に上陸する。
自分を見つめ直す、心の旅
大西洋を臨む最果ての地、ニューファンドランド烏。妻ペタルに裏切られた中年男クオイルは、娘バニーを連れて叔母のアグニスと共に、ニューヨークから父の故郷であるこの島にやって来た。朽ちかけていた代々の家を修理し、3人の新しい生活が始まった。クオイルは地元の新聞社ギャミー・バードに職を得、コラム“シッビング・ニュース”を担当することになる。オーナーで編集長のジャックは机には落ち着かず、いつも海で漁ばかりしている。古株のタート・カード、家庭欄とゴシップ記事担当のビリー・プリティ、ブラジルから流れ着いたというイギリス人ナットビーム。ジャックの息子で大工のデニス。そして託児所を営む若き未亡人ウェイヴィとの出逢い。仲間に支えられて、クオイルは次第に記者の仕事に自信を見いだしていく。だが、地元の人々との交流を深めるにつれ、彼は封印されていたクオイル家の秘密を暴いていくことになる…。
大人のための優しい物語
原作はピュリッツァー賞と全米図書賞をダブル受賞した世界的ベストセラー、E・アニー・ブルーの小説「二ユース」。人生を投げ出していた中年男クオイルが、両親と妻の死を契機に父祖の土地ニューファンドランド島に戻り、生きる力を取り戻していく過程を、精緻な筆致で丹念に描いていったものである。監督は『サイダーハウス・ルール』、『ショコラ』と2年連続アカデミー賞候補に名を連ねるラッセ・ハルストレム。デビュー作『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』、アメリカでの成功作『ギルバート・グレイプ』から一貫して、“家族”の中で自己を発見していくというテーマをヒューマンな視点で描いてきたが、本作でもその姿勢は貫かれている。父親に抑圧され、自分を持てないまま生きてきた中年男クオイル。両親の死、妻の裏切り、娘との隔絶。家族の現実と向き合うことはクオイルにとっては痛みであるが、その病みを受け止めてこそ、生きていく強さと優しさをを取り戻せるのである。ハルストレム監督の優しい眼差しは、全ての人をそっと力づけるように見守ってくれる。大人のための、優しい物語なのである。
本作のもう一つの主役は、ニューファンドランドの厳しくも美しい自然。吹きすさぶ雪の中で懸命にロープを結ぶ男たちの手のアップで人間の生命力を感じさせる力強いオープニング・シーン、荒々しい岩肌の海岸線を捉える空撮、吹雪の中“緑の家”を引っ張っていく幻想的なシーンなど、ニューファンドランドならではの手触りのある画面が、ファンタジックな物言告に説得力を与えている。
ゴージャスなキャスト
主人公のクオイルには、『アメリカン・ビューティー』『ユージュアル・サスペクツ』で2度のアカデミー賞に輝くケヴィン・スペイシー。既に原作に感銘を受けていたスペイシーは、この朴訥としたクオイル役を快諾。感情を表に出さない難しい役柄だが、次第に人間の活き活きした感情を取り戻していく過程を見事に演じきっている。クオイルと惹かれ合うウェイヴイには『ことの終わり』『ブギーナイツ』で2度のアカデミー賞候補となったジュリアン・ムーア。障害を持つ息子を抱えながら自分のカで託児所を営むという強さを、押さえた演技の中で表現している。クオイルのトラウマにもなる奔放な女ペタルは、『エリザベス』でアカデミー賞候補となったケイト・ブランシェットが強烈なインパクトを残して熱演。一族の秘密を握るクオイルの叔母アグニスに、やはりアカデミー賞常連のジュディ・デンチ。暗い思い出の故郷に、それでも戻りたいという複雑な心境を見事に体現している。
脇役にも豪華な顔触れが揃っている。クオイルに自信を回復させることになる新聞社のオーナー、ジャックに『羊たちの沈黙』『レッド・オクトーバーを追え』のスコット・グレン。新聞社の古株、タート・カードに『ユージュアル・サスペクツ』『父の祈りを』の名優ピート・ポスルスウェイト。ボートでこの島に流れ着いたという風変わりなイギリス人の同僚ナットビームに『ヒューマンネイチュア』『ノッティングヒルの恋人』のリス・エヴァンス。ジャックの息子でクオイルの良き隣人デニスに、TV『ロズウェル星の恋人たち』『ドーソンズ・クリーク』で人気急上昇のジェイスン・ベア。ハリウッド・スターを中心に、豪華な共演が実現した。
また、子供を描くことにかけては優れた手腕を見せるハルストレム監督だが、今回はクオイルのセンシティヴな娘バニーに、三つ子のゲイナー姉妹を起用。立ち直ろうとする父クオイルの背中をそっと押してくれるというキーバーソン役を、見事な連携プレーで演じている。
ハルストレム監督を支える、ヴェテランのスタッフ陣
映像化は難しいといわれていた本作だが、ラッセ・ハルストレム監督と彼の気心の知れたスタッフ達が、見事に創りあげた。脚色は『ショコラ』でハルストレム監督と始めて組みアカデミー賞脚色賞にノミネートを果たしたロバートネルスン・ジェイコブズ。原作のテイストをそのままに脚色することに成功している。撮影は『サイダー・ハウス・ルール』以来ハルストレム監督とは2度目のコラボレーションとなるオリヴァー・ステイプルトン。本作のもう一つの主役であるニューファンドランドの厳しくも美しい自然をとらえている。プロダクション・デザインのデイヴィッド・グロップマン、編集のアンドリュー・モンドシェイン、衣装のレネー・エールリッヒ・カルフュスはハルストレム組。音楽はベテランのクリストファー・ヤング。島民のルーツでもあるアイリッシュ音楽をベースにした旋律が、光しい風景と相まって、物語の世界観を広げている。
ストーリー
ニューヨーク州北部。冬枯れの荒涼とした町。
人生に見離されたかのような顔をしたクオイルは、その町の新聞社で慎ましく働いている。
彼の父親ガイは、幼い息子を海に突き落として泳ぎを教えるような暴力的な人間だった。
子供時代に受けた厳しい教育のため、自分の殻に閉じこもる無気力な性質に育ってしまった可哀想なクオイル。しかし孤独な毎日を送っていたある朝、彼は美しく魅力的な女性ペタルと出逢う。初めて知った甘い関係に、クオイルは幸せでいっぱいになった。
やがて二人の間には、バニーという可愛い女の子が生まれる。しかし、クオイルが娘の世話をする一方で、ペタルは母親の役目を少しも果たそうとしない。毎晩安酒場で働き、夫にお構いなく男たちとイチャィチャするペタルにクォィルは文句すら言う度胸がない。
そんなある日、仕事場の留守番電話にガイからの遺言ともとれるメッセージが保存されていた。「もう人生は長くない。父さんと母さんはもうすぐ死ぬことにした」。悲しみのどん底の中、相も変わらず妻は夫と娘を放ったらかし、自分勝手に不貞の限りを尽くしていた。夫の父親が死んだことを聞かされても非情な妻は、ついに愚鈍な夫に嫌気がさし、バニーを連れ若い男とフロリダへ逃げ去るのだった。
妻に見捨てられ、娘を妻に連れ去られ、両親に死なれたボロボロのクオイルの家に、叔母アグニスが訪ねてくる。兄の死の知らせを聞いたアグネスは故郷に帰ろうと立ち寄ったのだ。突然の来訪に戸惑うクオイルの元に、電話が鳴り響く。州警察は機械的に、衝撃の事実を告げるのだった。「奥様が交通事故でお亡くなりになられました」。さらに信じられないことにペタルは裏取引の養子縁組として、一人娘のバニーを6000ドルで売り飛ばそうとしていたのだ。あまりにも悲惨な甥の不遇に、アグニスは提案した。「一緒に、ニューファンドランド島に戻ろう」。
失意と苦悩の中、人生をやり直すためにクオイルは娘と共に、厳しくも美しい父祖の地、遥かニューファンドランド島へと渡る。広大な海を渡るフェリーで、クオイルは美しい母子に心惹かれるのだった。北の果ての地平線には、一族の名のついたクオイル岬が横たわっている。その先端には、アグニスが生まれ育った後、44年間も空家にし荒れ果てた“緑の家”が建っていた。
幸運にもクオイルは、キリッククロー(錨爪)という小さな漁村で、安っぽいネタを扱うゴシップ紙のような地元新聞のギャミーバート社で新聞記者の職を得る。そこには、威張り屋の編集長カード、気骨ある生活欄担当記者ビリー、気立てのいい海外ニュース担当記者ナットビーム、会社を休んでばかりの社長ジャック・バギットがいた。記事を書いたこともないようなクオイルにジャックは、船に関するコラム“シッビング・ニュース”を書くよう命じる。
交通事故の死体に吐き気をもよおしたり、一生懸命書いた膨大な量の原稿があっという間にボツになったり、と新聞記者生活がスタートした。不慣れな毎日だったが、記事を書くたびに新聞記者としての意識が芽生えていくクオイル。一方で、この曰くありげな村人たちの温かさに交流を深めていく。フェリーで見かけた美しい未亡人ウェイヴィと知り合いになる。優しい彼女は自宅を託児所にし、知恵遅れの息子ヘリーと共に静かに暮らしていた。また、ジャックの息子で、兄が海で遭難してしまったというデニスとも親しくなっていく。
雪にも慣れ始めた頃、クオイルは一族の暗い歴史を知るのだった。クオイル家は何世紀も前にニューファンドランド島付近を荒らす海賊だったのだ。その行為があまりにも野蛮で暴力的だったために、村から絶縁状が送られたという衝撃の真実。村の人々は、“緑の家”を岬まで追放したのだ。視界が消えてしまいそうな猛吹雪の中、たった一本の縄で“緑の家”を引っ張る村人たちの生きる姿がクオイルの脳裏を駆け巡る。
ある晩、クオイルは“ヒットラーの船”と呼ばれる古い船を記事にしたことをきっかけに安もののボートを購入する。新聞社の仲間たちからまんまとボロ船を買わされた、と笑われるクオイル。しかし、“ヒットラーの船”を題材にしたコラムの評判が良く、おかげでクオイルはジャックから腕を認められ、記者としての自信も深めていく。一方、感受性の強い少女に育ったバニーは島に来てから、“幽霊と白い犬”がやってくる、と言って怯えるのだった。怖い夢を見たのだと思い込んでいたクオイルは、ある晩その正体を知る。それは、窪みに住んでいるというアグニスの年老いた従弟ノーランだったのだ。そこでアグネスの哀しい過去を知ってしまう。
ウェイヴィとのささやかな恋の予感が、クオイルの心を躍らせていく。孤独だった二人は少しずつお互いに信頼を寄せていく。しかしウェイヴィにも誰にも言えない秘密があったのだ。それぞれに悲しい過去を背負う二人は、村を吹き飛ばすかのような嵐の夜、ついに愛を確かめ合う。「“緑の家”が吹き飛ばされた」というバニーに、クオイルはまたしても怖い夢を見たのだと思いバニーを優しく抱きしめる。一方、荒れ狂う海に出かけたジャックは、そのまま還らぬ人となろうとしていた。そしてクオイルはバニーに初めて“ペタルの死”を告げる決心をする。「ペタルは死んでしまったんだよ」。本当のことを聞かされたバニーは、クオイルに優しく瞳で語りかけた。「パパも悲しみたくなかったから私に嘘をついたんでしょう」。その思いやりにクオイルの瞳は熱い涙でいっぱいになる。嵐は多くの人の運命を変え、クオイルが家族の愛を深く感じたとき、奇跡が起ころうとしていた。
スタッフ
監督:ラッセ・ハルストレム
原作:E・アニー・ブルー
脚色:ロバート・ネルスン・ジェイコブズ
撮影監督:オリヴァー・ステイプルトン,B.S.C
音楽:クリストファー・ヤング
プロダクション・デザイナー:デイヴィッド・グロップマン
編集:アンドリュー・モンドシェイン
衣装デザイナー:レネー・エ一ルリッヒ・カルフユス
キャスティング:スザンヌ・スミス
第二班監督:アンドリュー・モンドシェイン
製作総指揮:ボブ・ワインスタイン、ハーヴィ・ワインスタイン、メリル・ポスター
製作:アーウィン・ウィンクラー、リンダ・ゴールドスタイン・ナウルトン、レスリー・ホールラン
キャスト
クオイル:ケヴィン・スペイシー
ウェイヴィ:ジュリアン・ムーア
アグニス:ジュディ・デンチ
ペタル・ベア:ケイト・ブランシェット
タート・X・カード:ビート・ポスルスウェイト
ジャック・バギット:スコット・グレン
ナットビームー:リス・エヴァンス
デニス・バギット:ジェイスン・ベア
ビリー・プリティ:ゴードン・ピンセント
バニー:アリッサ・ゲイナー、ケイトリン・ゲイナー、ローレン・ゲイナー
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