大脳分裂

映像表現のタブーを破り、映画はついにここまで辿り着いた！ホドロスキー、ブニュエル、デヴィッド・リンチに続くカナダの狂乱鬼畜監督カリム・ハッサンついにデビュー！全世界の映画祭が戦慄で凍りついた怪作！
アルバトロス・コア・レーベルの真髄とも言える究極の作品が誕生した。「人間」を支配する脳、そして理性をつかさどる左脳が狂い出したとき、我々は今まで目にしたことのない凄まじい狂気を目の当たりにするのだ。本作『大脳分裂』はどのカテゴリーにも属すことのない、新しいジャンルを築き上げている。サスペンス、スリラー、スプラッターホラー、そしてサイコ、どの恐怖とも比べることの出来ない未体験の恐怖が観る者の大脳を支配する！！

【チェック・ポイント！】

　“ジャンル分け不能、関連作品無し！”なんてものものしいキャッチが入るこの映画のビデオ予告を見ながらも、左脳が破壊されて云々という内容説明から、どうせマッド・サイエンティストの狂った実験で被験者の脳が破壊され…なんてセンだろうと、タカをくくっておりましたが、そんな普通（苦笑）のホラー・ファンの予想をあっさり裏切る、アングラ趣味爆発のまさに怪作でした。
　「人間の性格がなせる業は、どんな映画よりも残虐である」。暗闇に浮かぶ女性の裸体を切り裂く手の一連のショットと、映画館などの普通の光景を捉えたフィルムとが編集されたものに、先に書いたようなナレーションが流れるプロローグから映画はスタート。裸の女体を切り裂き手をつっこんだりの廉いけど結構グロなスプラッター描写に、どこか宗教的な神々しさ（ホントか？）を感じさせる音楽がなんともいえないコンビネーションを醸し出してます。そう、この作品の原題は“潜在的な残虐性”とでもいった感じでしょうか。以後、人間の理性から開放された本能のままの残虐性を描いた３つの挿話が展開するオムニバス風の構成となってます。
　最初の話は、「人間の幼生（精子）」と題されたエピソードで、親の判らない子供を身ごもった妹と二人きりで同居していた男が、オナニーの最中に生命の哲学的な意味にぶち当たり、生殖という神聖な行為を冒涜しようと決意する。優しく出産に立ち会った男は、妹の出産した赤ん坊の喉を掻き切り、その血を妹に注ぎかける。妹はショック死、赤ん坊と妹の死体が腐り行く中で、男も死の瞬間を待ちつづけるという、オナニーするんだったら、難しいことは考えずに楽しもうという判りやすくも奥が深いメッセージがこめられてる…ってわけじゃないか（苦笑）。
　続いて、草原や砂漠のような所で、全裸の男女が交接行為を暗黒舞踏さながらに行っている様を描いた「再生」と題されたエピソードを中継ぎ役にして、邦題の元になった最終エピソード「右脳／マーティの部屋」へ。バリバリのビジネスマン風の男が、自宅でビデオを見ながらオナニー（またかい）してると、そこに右脳が生み出した本能の化身ともいうべきドッペルゲンガーが現れ男の左脳を破壊し、カラーで終わりなく続く、性と暴力に宗教がミックスされた夢の世界に男を導く。茨の冠をかぶった殉教者が、３人の裸の女にその肉体を責め苛まれ、その血肉を食われる様子が延々展開する。
　アメリカ性スプラッター映画のように、明確なドラマ展開がある類ではないし、エロ・グロに関しても普通の感覚でヌケるとか恐怖を堪能できるわけでもなく、はっきり観る人を選ぶ作品。その分、ハマる人にはまさにバイブル的なハマり方をするかも。
（殿井君人）