原題:FUNNY GAMES

第50回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式作品 第33回シカゴ国際映画祭最優秀監督賞受賞

1997年/オーストラリア/カラー/103分/Dolby Digital 配給:シネカノン

2002年5月3日DVDレンタル開始/2002年5月3日ビデオ発売&レンタル開始 2001年10月20日よりシネ・アミューズにてレイトショー公開

公開初日 2001/10/20

公開終了日 2001/12/07

配給会社名 0034

公開日メモ カンヌ出品時、あまりに衝撃的な展開に途中で席を立つ人が続出。恐怖映画の定石を無視したスタイルは映画の枠を超越。まさに現代のコンセプチュアルアートと呼ぶべき先センセーショナルな問題作。

解説


◆ショックのあまり席を立つ人が続出、賛否両論を巻き起こした問題作
カンヌ出品時、あまりに衝撃的な展開に途中で席を立つ人が続出。上映を観た人々から、ロコミが瞬く間に広がり、斬新なスタイルとショッキングなテーマがカンヌ中の話題をさらった。パリ、ロンドン、ニューヨークなど世界各地で上映され、物議をかもす。ロンドンではビデオの発禁運動まで巻き起こった。恐怖映画の定石を無視したスタイルは映画の枠を超越。まさに現代のコンセプチュアルアートと呼ぶべき先センセーショナルな問題作。

◆時代がハネケに追いついた!
カンヌ国際映画祭では“ショッキングな場面あり”という警告付きでコンペ上映された。それまで一貫して暴力とメディアを描いてきたハネケ監督は「なぜ人々がこの映画に憤慨するのかははっきりしています。憤慨させる為に作ったのですから…。暴力は撲滅できないものであり、痛みと他人への冒涜であることを伝えたい。だから、暴力を単なる見せ物ではなく見終わった後に暴力の意味を再認識するものとして描かなければならない。また、今やハリウッドでは暴力が快楽を求める手っ取り早い方法となりつつあり、ユーモアとして処理されている」と真っ向からアンチテーゼを掲げている。
この年、受賞はならなかったものの、スクリーンの中の暴力と観客を結びつけようとするハネケの挑戦は大きな話題となり一躍世界にその名を轟かせる契機となった。
そして、本年度カンヌ国際映画祭でハネケ監督は最新作「ピアニスト」でグランプリ、主演女優賞、主演男優賞の3冠を手にした。今、まさに時代がハネケに追いついた。『ファニーゲーム』はそんなハネケの金字塔的作品なのである。

ストーリー



穏やかなある夏の午後。ショーバー一家はバカンスを過ごすために車で湖のほとりの別荘へ向かう。運転席にゲオルグ、助手席には妻のアナ。そして息子のショルシと愛犬のロルフィーが後部座席に…_。それは、まさに幸せな家族の縮図であった。途中、一家は別荘の隣人べーリンガーと挨拶を交わす。べーリンガー一家の横には見知らぬ2人の若者が立っていた。
別荘で荷物をほどく一家。その後ゲオルグとショルシは明日のボート・セーリングの準備を始める。アナは台所で夕食の支度にかかる。そこヘショルシがやって来て「玄関に誰かいる」とアナに伝える。入ってきたのはぺー夕ーと名乗る若者だった。彼はべーリンガー家の客人であると言う。そして「卵を分けて下さいませんか?」と申し出る。たわいもない会話の後、突然ぺー夕ーがアナに好戦的な態度をとり始める。そこヘパウルというもう一人の若者がやってくる。2人はアナに横柄な態度を取り、不愉快な取り引きをせまり出す。その厚かましさに面食らうアナは、2人に出ていくよう命じるが、彼らは意に介さない。
ゲオルグがアナ、パウル、ぺー夕ー達の口論の場に戻ってくる。「すぐに2人を追い出して!」と懇願するアナ。彼女の動揺を感じてゲオルグが2人に立ち去るよう頼む。しかしここでも彼らは申し入れを拒み、逆に暴力を持って脅しにかかる。逆上したゲオルグは平手打ちを返す。するとパウルはゴルフクラブでゲオルグの膝を打ち砕く。この時からショーバー一家はパウルとぺー夕ーの操る“ファニーゲーム”の不運な参加者となってしまったのだった。
最初のゲームはパウルの案内のもとアナに犬のロルフィーを探させることだった。息絶えた犬を見つけた直後、別荘のもう一組の隣人のゲルダとロバートが訪ねてくる。彼らとは翌日共にボート・セイリングを楽しむ予定であった。パウルは何も知らないゲルダとロバートに自己紹介をし、2人の住まいを尋ね、何事も悟られることなくアナと共に彼らのもとを去る。
夜になり、お互いをもっと深く知り合おうと、パウルとぺー夕ーは一家を居間に集める。ゲオルグは2人の目的は何なのかと詰め寄るがパウルは屁理屈をこねるだけで一向に納得できるような理由を話そうとはしない。そしてパウルは一家に賭けを迫る。「明日の朝9時までに全員を殺せるか否か。」その賭けにショーバー一家はいやおうなしに乗せられていくのだった。
ある隙を狙ってショルシが家を逃げ出す。パウルに追われる身を隠そうとショルシは空き家に忍び込んだ。その家のなかで見つけた銃を手に部屋を出ようとすると、そこにはパウルが…_。おびえる手で銃を構えパウルに向けて引き金を引く。空しい空砲が響く。空砲だったのだ。
パウルは銃を手にショルシを家へ連れ戻す。そして銃に弾を詰め始める。「そろそろ誰か一人を消す時間だ」との言葉にぺー夕ーはその一人を選び始める。その間パウルは台所で食べ物を物色しているのだった。
サンドイッチを作るパウル。そこに銃声が響き血も凍るような悲鳴が聞こえる。しかしパウルは平然とパンにバターを塗る。
しばらくしてパウルとぺー夕ーは家から出ていった。血汚れた居間にアナはショックで座り込んでいる。そばには魂の抜けたようなゲオルグが横たわっている。ゆっくりと歩み寄るアナ。膝のケガで体の不自由なゲオルグはアナに助けを求めに行くよう願う。
空き屋を渡り歩き、ある歩道に出たアナ。暗がりの向こうから車のヘッドライトが近づいてくる。急いで茂みに身を隠し車をやり過ごすが、その後を助けを求めて飛び出す。しかし車は走り去ってしまう。希望を失ってしまったかのように思えたその時、別のヘッドライトが彼女を照らし近づいて来るのだった。
家ではゲオルグが息子の遺体にシーツをかけている。そこへ何かの音がする。ゴルフボールが床を転がり部屋の入り口で止まった。手足を縛られ口を塞がれたアナがパウルとピーターとともに戻ってきた。
パウルは銃に再び弾を込めばじめる。次を殺す時間になった。当たりくじを引いたのはゲオルグだ。パウルはアナに次の2つから1つを選ぶよう指示する。
①殺し方を選ぶか。ナイフか銃か…_。②ゲオルグの身代わりになるか。パウルはこの’ゲーム’を「愛しの妻」と名付けた。しかし次の瞬間アナは銃を奪いぺー夕ーを撃ち殺す。
信じられないといった表情を浮かべながら、パウルは狂ったようにテレビのリモコンを探し出す。それを見つけると巻き戻しボタンを押した。場面はアナが銃に手を伸ばす直前に巻き戻される。
場面は巻き戻るが、アナが銃に手を伸ばしたその時パウルが止める。そして今度はパウルが銃口をゲオルゲに向け撃ち殺す。
翌朝パウルとぺー夕ーはアナを連れて一家のボートに乗り込む。ボートを漕ぎながら2人はじ形而下と形而上の間に生じるコミュニケーション論に花を咲かす。その横でアナは縛れた縄をナイフで切ろうともがく。パウルはこの様子を見ており、ぺー夕ーがナイフを奪い海へ投げ捨てる。時刻が9時に近づいた事を知りパウルはアナの頬にキスをして彼女を平然と海へ突き落とした。ショーバー一家とのゲームの終わりだった。
その午後、パウルはある家に近づきドアをノックする。出てきたのは昨日アナと一緒に挨拶を交わした女性ゲルダだ。パウルは再び自己紹介をして、「卵を分けて下さいませんか?」と申し出るのだった。

スタッフ

脚本・監督:ミヒャエル・ハネケ
製作:ファイツ・ハイドシュカ
撮影監督:ジュアゲン・ジュアゲス
美術:クリストフ・カンター
編集:アンドレアス・プロシャスカ
音楽:G・F・ヘンデル、ピエトロ・マスカーニ、W・A・モーツァルト、ジョン・ゾーン
助監督:ハヌス・ポーラツク・Jr.
プロダクション・マネージャー:ヴァーナー・F・ライトマイヤー
衣装デザイン:リジー・クリストル
舞台:ぺー夕ー・エッカー
道具:ハンス・ヴァーグナー
音響制作:ミヒャエル・カッツ、ウルリケ・ラッサー
ユニット・マネージャー:アルフレッド・シュトロブル
コンストラクション・マネージャー:フリッツ・マー夕ン
プロダクション経理:ヘルガ・フユシュ、クリスタ・プライジンガー

キャスト

アナ:スザンネ・ロー夕ー
ゲオルグ:ウルリヒ・ミューエ
ペー夕ー:フランク・ギーリング
パウル:アルノ・フリッシュ
ショルシ:ステファン・クラプチンスキー
ゲルダ:ドリス・クンスツマン
フレッド:クリストフ・バンツァー
ロバート:ウォルフガング・グリュック
ゲルダの妹(姉):スザンネ・メーゲル
イヴァ:モニカ・フォン・ザリンガー・2世

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