ゴーストタクシー

カーチェイス、ロマンス、コメディといった娯楽要素満載で放つ、新世代韓国映画が遂に登場。
韓国を舞台にしタクシードライバーがカーチェイスを繰り広げる一大カーアクション、まさに韓国版『タクシー』ともいえる本作に、韓国映画界の若手が大集結！
カーチェイスだけのために3ヶ月の撮影期間を掛け、総走行距離は10万キロ！
彼女を迎えに行く途中で、原因不明の事故で死んでしまったタクシードライバー。彼は彼女に会いたい一心でゴーストとしてよみがえり、タクシーを走らせるが…。主演は本作でデビューのイ・ソジン。

【チェック・ポイント！】

　いやぁ、なんとも明快な邦題通りで、『ＴＡＸｉ』meets『ゴースト　ニューヨークの幻』韓国版。主人公のキルナムは、『ＴＡＸｉ』の走り屋アレックス君に比べると、タクシー会社で地道に雇われ運転手として働くこと８年、個人タクシーの運転手として今まさに独立し、彼女にプロポーズしようとしている真面目でいい奴風タクシー・ドライバー。ところが、ゴースト・タクシー・ドライバー“カマキリ”が仕組んだ事故で敢え無く合掌。しかし無念の思いを残して世を去ったキルナムは、49日目に幽霊として復活。プロポーズ出来なかった恋人に思いを伝えるため、また事故の真相を解き明かすために、ゴースト・タクシーを疾走させるのだ。
　昨年くらいから、ニューウェイヴ系の作品が続々日本でも紹介されている韓国映画だが、本作のテイストはどちらかというと、スリル、アクション、コメディ、ラブ・ストーリー等など娯楽映画の要素なら何でもござれと詰め込んでみせる、香港娯楽映画のサービス精神に近いテイストが濃厚だ。犠牲者をカマキリのゴースト・タクシーが冒頭からして、車が入れない狭い路地に逃げ込んだ犠牲者に向かいほとんど二輪方立ち走行で路地に強引に潜入し、“クリスティーン”かはたまた“バット・モービル”かといったといった大判ぶるまい。おまけに、ドライバーのカマキリは時には『エルム街の悪夢シリーズ』のフレディのグローブをちょっと連想させたりする、二本刃の握り鎌状の武器を使ったりもするのだ。さらに、正邪を問わずゴースト・タクシーは、地上を疾走するだけではなく、空を飛び、地下鉄の通路の中も飛び進む神出鬼没ぶりだ。まぁ実際のカーチェイス場面よりも、合成の飛行場面の方がスピード感・迫力ともに感じさせるあたりはちょっと残念ではあるが、この貪欲なまでの何でもアリぶりは素直に楽しい。
　作品世界の中では実は、多くの迷った幽霊たちがこの世で生活しているという設定なのだが、この描き方もちょっと面白い。例えば、死神ドライバーのカマキリ以外にも、結構多くのゴースト・タクシー・ドライバーが存在しタクシー会社やドライバー向けダイナーを経営していたりするわけだが、キルナムに色々アドバイスしたり反発したりするこの先輩幽霊達が、単なるジェントリー・ゴーストでもなければ、人間に常に災いを成す存在でもなく、その中庸の善とも悪とも判別し難い存在として描かれているのだ。彼らは、普段積極的に生者を襲う存在というわけでもないが、ちょっと贅沢？したい時などゴースト・タクシーの最高のガソリンになる人間の生血を手に入れるため、人間を殺したりもするんだよね。このあたりの、ちょっと居心地の悪い感覚も新鮮だ。
（殿井君人）