セクシュアル・イノセンス
原題:The Loss of Sexual Innocence
セックス、女、喪失、死、そして運命 究極の男女のかたち
(初公開:全米1999年03月28日公開)
1998年アメリカ映画/カラー/ビスタ・サイズ/ドルビー・デジタル/全6巻 日本語版字幕:齋藤敦子 提供:フジクリエイティブコーポレーション/K2エンタテインメント 配給:K2エンタテインメント
2001年2月23日DVD発売/2001年2月23日ビデオ発売&レンタル開始 2000年10月28日より、新宿シネマカリテにて公開
公開初日 2000/10/28
配給会社名 0070
解説
構想17年、アカデミー賞に輝いた『リービング・ラスベガス』(96)のマイク・フィギスが、人間の本能と欲望を赤裸々にかつエロティックに描くセンセーショナル・ムービー『セクシュアル・イノセンス』。ミュージシャン、脚本家、舞台演出家、そして映画監督とフィールドを超え多分野で活躍を続けるマルチ・クリエイター、マイク・フィギスが仕掛ける、たまらなく魅惑的な世界は、彼が体験した<セックス>をめぐるストーリーの断片を刺激的に映し出す。本作はこの秋最も美しく衝撃的な映画として日本の観客を熱狂させるであろう。
青く茂ったトウモロコシ畑をくぐりぬけ、5歳の少年が息をひそめて覗き見たものは──薄暗い部屋の中で繰り広げられる老人と混血の少女のなんとも淫靡な光景。初めて目にした禁断の果実。それは監督マイク・フィギスが実際目にし、これまで誰にも語ることのなかったごくごく私的な<青い体験>である。
マイク・フィギスが脚本の第一稿を書き上げたのは82年。「自分にこれほどのアイデアを実現できる能力があるだろうか」と彼自身、自問自答しながら17年間温めつづけたそのモチーフは、自ら自伝的と語る非常にプライベートな<性をめぐる体験>だ。
自己を投影したと思われるイギリス人監督ニック(ジュリアン・サンズ)が5歳、12歳、16歳、そして成人してから遭遇する様々な性的体験のエピソードと、アダムとイブの楽園追放の挿話が平行して語られていく。特に物語の主要部分に登場するアフリカ大地での出来事は、自然の圧倒的な存在感、空虚を見るものの心に深く焼きつけ、映画のテーマである人間あるいは種族の<無垢の喪失>へと導いていく。目のさめるように大胆かつ刺激的な映像、クラシックのピアノナンバーとともに、現代人の性の原罪や苦悩を見事な構成で描いた、マイク・フィギスワールドの集大成とも言えるであろう。
出演は、成人したニック役に『キリング・フィールド』で骨太な演技を見せ、『リービング・ラスベガス』以降マイク・フィギス作品の常連でもあるジュリアン・サンズ。純情でいまにも壊れそうな思春期の愁いをもつ16歳時のニックに『ベルベット・ゴールドマイン』で伝説のロックスターを好演し今一番気になる若手俳優ジョナサン・リース・マイヤーズが扮している。また見えない運命に縛られたミステリアスな双子の美女役に、私生活ではマイク・フィギスの恋人でもあり、『ディープ・ブルー』等メジャー作品でも活躍するサフロン・バロウズ。『トレインスポッティング』『エリザベス』などで活躍するイギリス人女優ケリ−・マクドナルドが16歳のニックの恋人、スーザン役として出演している。
撮影は北イングランドのノーザンブリア、アダムとイブのストーリーは北イタリアのアンブリア、双子がすれ違うシーンをローマの空港で、またアフリカの大地は南チュニジアのサハラ砂漠でと、全部で5週間ほどかけて行われた。 そしてマイク・フィギス作品の大きな魅力となる音楽は、トランペッターでもあるマイク・フィギス自身がプロデュース、作曲、演奏まで手掛けている。アディエマスのヴォ−カリスト、ミリアム・ストックレーがヴォイス・パフォーマーとして参加し、ジャズ、クラシックピアノ、アフリカ的スパイスをきかせたサウンドで、美しい映像をより際立たせる贅沢なものに仕上がった。
ストーリー
赤い大地。青々と高く生い茂ったトウモロコシ畑。アフリカのその地で5歳のニックが覗き見た白人老人と混血娘とのただならぬ淫らな光景。それが彼の<無垢の喪失>への道程の始まりだった。
ニックは人生の折り返しを過ぎたことが自覚される年齢に達した。美しい妻。利発そうな息子。満ち足りた生活。映画監督としての仕事。ささいなトラブルはあるが、恵まれたといえる生活を送る男は時に回想する。
12歳の時にエジンバラの奨励社会勉強会で見せられた溺死死体の写真。水を吸って醜く膨れた死体に恐怖を覚えながらも、好奇心を抑えきれなかった。その少し後、少年期にありがちな肥満児となった自分の肉体を教師とクラスの仲間の嘲弄の的とされた。16歳の時、つき合っていたガールフレンド、スーザンとの初体験は彼女の父親の登場によっていったんは未遂に終わった。その父親の葬式の夜、泥酔したスーザンの性的放埒を見てしまった。
経験と知識を累積していく過程において得られるものと引き換えに、確実に失われていくものがある。それがいわゆる<イノセンス—無垢>だ。考えてみれば、人類の歴史そのものが、<無垢の喪失>の連続だった。もはや、神話とも寓話ともつかぬはるか昔、眠気を誘うほどに美しい反映とさざなみをかたどる沼の中から、裸体のまま別々に姿を現すアダム、それからイヴ。とりあえず、飢えをしのぐため、口に出来るものはすべて頬張ることだけを行ってきた彼らはやがて、互いを知り、互いのあいだで成立する「遊戯」を知る。しかし、彼らは禁断の果実を食べ、性交にふけり、原罪を犯したことで、すなわち、無垢を喪失したことで、楽園を追放される。無垢を失うことがどれほどの罪なのか?
そんな折、ニックはある撮影のために、イタリア人クルーと合流し、砂漠の地へ向かうこととなる。
録音技師のルカの手配で、コーディネイターのクラウディアとローマの空港で落合う予定のニックは自身が搭乗している飛行機の中で、やがて会うクラウディアとそっくりの女性を見かける。実はクラウディアは知るよしもなかったが、彼女は一卵性双生児だった。彼女が生まれた時、双子は不吉だという根拠のない理由で、修道女たちが、彼女らを別々に育てることを決め、ひとりはイギリスで育てられたのだ。空港でニックを待つクラウディアの目の前を一瞬、自分にそっくりの女性が横切るが、彼女にはそれが意味することなど、まるで見当がつかなかった。
ルカたちとも合流したニックの一行は順調に撮影を続けていく。だがその先に、まるで、生きていくこと自体が断罪されるような、出来事が待ち受けていることなど、その時の彼らには知るよしもなかった…………….。
スタッフ
監督・脚本・製作:マイク・フィギス
キャスト
ジュリアン・サンズ
ジョナサン・リース・マイヤーズ
サフロン・バロウズ
ステファノ・ディオジニ
ケリー・マクドナルド
LINK
□公式サイト□IMDb
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http://www.spe.sony.com/classics/lossofsexualinnocence/index.html
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