原題:A Room with a View

イタリア、フィレンツェ。その口づけが私を目覚めさせる。

1987年アカデミー賞3部門受賞/1987年英国アカデミー賞5部門受賞など多数

1986年3月アメリカ公開、4月イギリス公開

1985年/イギリス/カラー/117分/1:1.66/ドルビーステレオ/日本語字幕:戸田奈津子 原作:ちくま文庫/オリジナルサウンドトラック:ランブリングレコーズ 配給:クレストインターナショナル

2012年10月27日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて同時公開! 2010年06月02日よりDVDリリース 2004年11月25日よりDVD発売開始 2001年9月1日より銀座テアトルシネマにてレイトロードショー公開 2001年8月14日よりル・テアトル銀座にてロードショー公開

© 1985 A ROOM WITH A VIEW PRODUCTIONS LTD. ALL RIGHTS RESERVED.ED

公開初日 2001/09/01

配給会社名 0096

公開日メモ 『日の名残り』『ハワーズ・エンド』などで知られる名匠ジェイムズ・アイヴォリーの作品の中でもっとも明るくもっとも美しい眺めに満ちた映画『眺めのいい部屋』。製作から15年を経た今も、多くのファンの胸に「心に残る愛の名作」として刻み込まれ、その輝きを失うことはない。

解説


《不朽の名作『眺めのいい部屋』がイタリア年である今年、再びその輝きを放ちます。》

『日の名残り』『ハワーズ・エンド』などで知られる名匠ジェイムズ・アイヴォリーの作品の中でもっとも明るくもっとも美しい眺めに満ちた映画『眺めのいい部屋』。製作から15年を経た今も、多くのファンの胸に「心に残る愛の名作」として刻み込まれ、その輝きを失うことはない。
『眺めのいい部屋』は、1986年3月にニューヨーク、4月にロンドンで公開されるや大ヒットを記録、その年の米アカデミー賞、ゴルデングロープ賞、英国アカデミー賞をはじめ数々の映画賞を受賞。日本でも1987年7月に初公開され、ロングランヒットとなり、「眺めのいい」という言葉が流行語になるほどのブームを巻き起こした。
原作は『ハワーズ・エンド』の文豪E.M.フォースターが、1908年、29歳の時に発表した同名小説。今世紀初頭のイギリスの良家の令嬢が、旅行でフィレンツェを訪れ、真実の愛と自己に目覚め、大人の女性へと成長していく様子を、”イギリス中産階級の因襲と偽善”と”自由で開かれた思想の人々”との対比を通して描いた傑作である。
監督のアイヴォリーは、今秋日本公開予定の最新作『Golden Bowl』に至るまでの名コンビである脚本家ルース・プラーヴァー・ジャブヴァーラのシナリオを得て、洗練された演出に優雅で快活なユーモアをまじえ、この原作のより鮮やかな映画化に成功している。製作はもちろん長年にわたるパートナーシップが知られたイスマイル・マーチャントで、製作マーチャント=監督アイヴォリー=脚本ジャブヴァーラのトリオは映画史上最長のコラボレーションとしてギネス・ブックにも認定されている。
そしてこの映画を、いつまでも古びさせず、見る度に新しい発見があり、見る人が年齢を重ねるごとに深く味わえる名作たらしめているのは、主役のみならず小さな脇役にいたるまで見事な調和を奏でるキャストの素晴らしさと、その魅力をさらに輝かせる美術・衣装・音楽・撮影の全パートの奇跡的ともいえる完壁さである。
主人公ルーシーを演じるのは、『鳩の翼』『ファイト・クラブ』のヘレナ・ボナム=カーターで、当時まだ20歳。ルーシーの旅に付き添う年長の従姉シャーロットには、『ムッソリーニとお茶を』の演技も記憶に新しい名女優マギー・スミス。その他、新作『ギャング・オプ・ニューヨーク』で久々の映画界復帰を果たした美しき演技派ダニエル・デイ=ルイス、そして『恋に落ちたシェークスピア』などで近年アカデミー賞の常連であるジュディ・デンチ、「インディ・ジョーンズ」シリーズで名脇役振りを見せたデナム・エリオットらの見事なアンサンブルは今見てもいっそうの輝きを放っている。
本作『眺めのいい部屋』は英米のアカデミー賞のほかに、イタリア最高の映画賞ダヴィッド・ディ・ドナッテルロ賞でも最優秀外国語映画賞に輝いている。オペラ歌手キリ・テ・カナワが歌うアリア”私のお父さん”(プッチーニ「ジャンニ・スキッキ」より)にのせて映し出される誘惑的なフィレンツェ。「どんな堅物をも情熱的にさせる」と言わしめるイタリアの魅力を描いた映画として本家イタリアも高く評価した作品といえるだろう。
ジェイムズ・アイヴォリー監督の日本初公開作であり、マーチャント=アイヴォリー・プロダクション(MIP)の記念碑的な作品である。

ストーリー



《美しく誘惑的なフィレンツェと、優雅なイギリスの田園を舞台に繰り広げられる運命的なロマンス。》

1907年。イギリスの良家の令嬢ルーシー・ハニーチャーチは、年上の従姉シャーロットに付き添われ、初めてイタリアのフィレンツェを訪れる。イギリス人客がよく利用するペンション”ベルリーニ”に着いた二人は、部屋の窓を開けてがっかりする。美しいドゥオモをのぞむアルノ川に面した部屋ではなかったからだ。
シャーロットが部屋の眺めが悪いことをいいたてるのを聞いたエマソン氏は自分達は”眺めのいい部屋”なので交換しようと申し出る。彼を階級の違う人物だと見て取ったシャーロットは、その申し出を断るが、偶然にも宿に居合わせたハニーチャーチ家の教区のビーブ牧師のとりなしで、結局はエマソン氏の好意をうけることになった。
翌日、一人でフィレンツェの街にでたルーシーはサンタ・クローチェ教会でエマソン氏にばったり出会う。エマソン氏は息子ジョージが抱く人生への疑問についてルーシーに語るが、彼女にはまったく理解ができない。
シニョーリア広場を通りかかったルーシーは、喧嘩で刺されたイタリア人の青年が血だらけになって倒れるのを目撃してしまう。そのショックで気を失った彼女を助けたのは通りあわせたジョージだった。
この衝撃的な事件によって、二人の間に運命的な”何か”を流れるのだが、ルーシーはその感情を振り払うことしかできなかった。
そんなある日、宿泊客達一行はフィエーゾレ渓谷へのピクニックヘと出かける。シャーロットとルーシー、ビーブ牧師とこの地の英国国教会のイーガー牧師、女流作家のラビッシュ女史、そしてエマソン父子である。目的地に着き、ルーシーはシャーロットたちから離れ、一人でビーブ牧師を探しにいくが、代わりに見つけたのは美しい緑の麦畑でひとりたたずむジョージの姿だった。振り返ったジョージは突然彼女に近づき、情熱的な口づけをする。そこに現われたシャーロットは二人を目撃し、大慌てでルーシーを呼び寄せると、急病だと口実をつくってルーシーを馬車にのせ宿へとって返した。こんなことが噂になっては大変とすぐさまイギリスヘとルーシーを連れて帰るシャーロット。
数ヵ月後のイングランド。サリー州にあるハニーチャーチ家のカントリーハウスを訪れていたセシル・バイズがルーシーに求婚。教養が高く審美眼に優れ、優雅な物腰のセシルは「部屋の中のイメージ」の青年。ルーシーに口づけする時さえ、彼女の許可を乞う礼儀正しさ。情熱的で開け放たれた窓を思わせるジョージとは正反対だが、ルーシーはジョージに感じた”何か”を忘れたいかのようにセシルの求婚を受け入れる。
そんな折りに、セシルがハニーチャーチ家の近隣にある貸別荘ヴィラ・シシーの借り手を見つけてきたのだが、運命の悪戯か、それはエマソン父子だった。父子が貸別荘に移ってきたその日、ビーブ牧師はルーシーの弟フレディを伴ってジョージを訪ね、彼らはすぐに意気投合。「泳ぎに行かない?」というフレディの誘いで、初対面というのに林の中の池で裸になって水遊びにはしゃぎ合った。
ジョージはフレディを訪ねるようになるが、ルーシーは気にせずに一緒にテニスにも興じる。その傍らでセシルは本を読むばかりだったが、セシルが読み上げた小説の一節は、何とフィレンツェで出会ったラビッシュ女史が書いたロマンス。しかも、あの日のジョージとルーシーのキスがそのままに描かれていた。驚くルーシー。実はシャーロットがラビッシュ女史に話していたのだ。
ルーシーは、またジョージが非常識な行動に出ないよう自ら釘をさそうと彼を書斎に呼ぶ。しかし、ジョージは自分の偽らざる愛を訴え、愛のない結婚では決してルーシーが幸せにはなれないと訴えた。ルーシーはジョージを拒否するが、その言葉に動揺を覚えた。
その夜。ルーシーはセシルに婚約の解消を告げる。今や彼女は、はっきりとジョージを想っていたが、自分の気持ちにも振り回され、婚約解消の煩わしさからも逃れるためにも、ふたたび南の地に旅立とうとシャーロットに相談する。
出発の段取りもつき、ジョージヘの想いからも逃れられると胸をなで下ろすルーシーだったが、偶然にエマソン氏と会い、傷心のジョージがすでにロンドンに戻っていってしまったことを聞くと、もう動揺を隠すことはできなかった。今こそ自分の本当の気持と向き合わなくてはならない時が来ていたのだが……。

スタッフ

監督:ジェイムズ・アイヴォリー
製作:イスマイル・マーチャント
脚色:ルース・プラーヴァー・ジャブヴァーラ
撮影:トニー・ピアース=ロバーツ
音楽:リチャード・ロビンズ
編集:ハンフリー・ディクソン
美術:ジャンニ・クアランタ(伊)/ブライアン・アックランド=スノウ(英)
衣装:ジェニー・ベヴァン/ジョン・ブライト
ヘアー:カロル・ヘミング
メイク:クリスティーン・ビヴァリッジ
助監督:キーヴァン・バーカー
監督補:ピッポ・ピショット
配役:セレスティア・フォックス

キャスト

シャーロット・バートレット:マギー・スミス
ルーシー・ハニーチャーチ:ヘレナ・ボナム=カーター
エマソン氏:デナム・エリオット
ジョージ・エマソン:ジュリアン・サンズ
教区牧師ビープ氏:サイモン・カロウ
教区牧師イーガー氏:パトリック・ゴドフリー
エレノア・ラビッシュ:ジュディ・デンチ
セシル・バイズ:ダニエル・デイ・ルイス
バイズ夫人:マリア・ブリトネーヴァ
ハニーチャーチ夫人:ローズマリー・リーチ
フレディ・ハニーチャーチ:ルバート・グレイヴズ
サー・ハリー・オトウェイ:ピーター・セリエ
ミニー・ビープ:ミア・フオザーギル

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