ジャン・コクトー、知られざる男の自画像
原題:Jean Cocteau:Autoportrait d'un lnconnu
詩人は死んで蘇る。
1983年10月10日にテレビ放映
1983年/フランス映画/カラー・モノクロ/70分/スタンダード 製作:アンテゴール/アンテヌ2/国立視聴覚研究所/JCプロ/文化省 配給:ケイプルホーグ
2001年4月7日よりユーロスペースにて公開
公開初日 2001/04/07
配給会社名 0029
公開日メモ コクトーのすべてを語るドキュメンタリー
解説
この映画は、詩、小説、映画、美術と、芸術のあらゆるジャンルを駆け巡ったジャン・コクトーが、自らの生涯を語り、これまで彼がインタビューに答えた言葉や映像を中心に、写真、ドキュメンタリー映像、絵画や詩、そして『オルフェの遺言』『詩人の血』など彼の監督した映画をコラージュして構成された<コクトーの全て>が語られる、貴重なドキュメンタリーである。
コクトーの制作現場からの生の声が伝わる、コクトー芸術の魅力が解き明かされる作品で、コクトーの生きた時代、彼の素晴らしい友人関係、彼が愛した美しい男たちも見逃せない。
コクトーをもっと知りたい人必見の映画である!
1889年に生まれ1963年に亡くなったジャン・コクトー。その没後20周年を記念して製作されたのがこの作品である。詩人、小説家、劇作家、画家、デッサン家、セット・デザイナー、そして映画監督・・…様々な分野で豊かな才能を発揮し、多くの作品を残した芸術家ジャン・コクトー。その彼の生涯と芸術活動を描いた長編ドキュメンタリー映画である。
ドキュメンタリー映画といってもジャン・コクトーの生涯を紹介的に綴ったものではない。この作品の最大の魅力はジャン・コクトーその人が自分について語っていることにある。つまり、これまでジャン・コクトーがインタヴューに答えた映像や言葉を中心に、写真、ドキュメント・フィルム、絵画や詩さらに『オルフェの遺言』『詩人の血』など彼の監督した映画などをコラージュして構成されたものである。それはまるで亡くなったジャン・コクトーが蘇ったかのような印象をもたらす独特のモンタージュ構成である。
“詩人は死んで蘇る”とはこの作品にも出てくる言葉である。ジャン・コクトーは「フェニクソロジー」(不死鳥術)を好んだ。彼の映画にはしばしば死者が生き返り、粉々になった花びらが元に戻るシーンが描かた。そしてジャン・コクトーにとって映画とはそうしたフェニクソロジーを実現できる魔法のメディアであったのだ。この『ジャン・コクトー、知られざる男の自画像』はまさにジャン・コクトーの考えを体現したコクトーによるコクトーの映画であり、死んで蘇った詩人の映画である。
この作品の中でジャン・コクトーは自分の芸術を語る。「事実である歴史は嘘になるが、嘘である神話はやがて真実になる」「重要なのは線の生命であり、絵とは文章の別の表現である」などなど。また彼は幼い頃の思い出や芸術家仲間との交流を語る。ストラヴィンスキー、ピカソ、サティ、ディアギレフ、ココ・シャネル、ニジンスキーらアヴァンギャルドな精神に溢れた才能たち。そして20歳で亡くなったレイモン・ラディゲ。マントンの結婚式場でのジャン・ルノワールとの会話。今世紀前半を彩るそうそうたる芸術家たち。この作品はジャン・コクトーによる自分自身についての証言であるばかりか彼が見て触れた時代の証言でもある。
この作品はテレビ用映画として企画されたが、原案はジャン・コクトーの友人でサント・ソスピール荘の所有者であったアレック・ウェスウェレル夫人の娘キャロル・ウェスウェレル。監督のエドガルド・コザリンスキーは、1939年にアルゼンチンのブエノスアイレスに生まれ、『疑問点』(71年)を撮ったが上映禁止となり、1974年にフランスに移住して映画製作を続けている。なお「ホルヘ・ルイス・ボルヘス◇◇◇映画について」(79年)という著作もある。
この作品はフランスではジャン・コクトーの命日の前夜、1983年10月10日にテレビ放映された。
またわが国では1986年、1995年に劇場公開されている。
ストーリー
『オルフェ』の1シーンを見るジャン・コクトー。そしてコクトーの声が入る。「この映画は私の人生の影絵である」。『サント・ソスピール荘』と『オルフェの遺言』の交互の引用。粉々になった花びらが再び元に戻るシーン。「詩人は死んで蘇る」。『オルフェの遺言』で女神ミネルヴァの槍を受け死ぬコクトー。するとコクトーの幼い頃の写真となり少年時代の回想が始まる。詩人として早熟なデビューと成功。その頃知りあったストラヴィンスキーやピカソ、そしてエリック・サティとの運命的な出会い。ディアギレフとロシア・バレエ団、ココ・シャネル、ニジンスキーの思い出。そんな仲間と「春の祭典」などの上演でスキャンダルを起こす。その頃は第一次大戦の最中。身体が弱いコクトーは兵士になれなかったが、赤十字活動で前線に赴き九死に一生を得る。マントンの結婚式場の壁画を前にジャン・ルノワールと語り合うコクトー。ここからコクトーの芸術論が語られていく。絵について「線の生命」を語り、チャーリー・パーカーの即興演奏に似た手法と自己分析する。ヴィルフランシュの礼拝堂の壁画。映画については「ポエジーの伝達手段である」と語るコクトー。『詩人の血』の鏡のシーン、『オルフェの遺言』の撮影風暴、『恐るべき親達』について。「主観的なものを客観的に表現できるから映画が好きだ」。再び回想。レイモン・ラディゲの思い出をつらそうに語るコクトー。「本当の死とは愛する者の死だ」。ラディゲの死によって阿片に耽り、そこから「阿片」が生まれる。ギリシャ悲劇への傾倒。「歴史より神話が好きなのは、真実は嘘になるが嘘である神話はやがて真実になるからだ」。『グレヴァン蝋美術館』で自分の蝋人形に向かって嫌いだというコクトー。そして『オルフェの遺言』でミネルヴァの槍を受けて死んだコクトーは再び立ち上がり地上から去っていくが、その姿と言葉によってこの映画は慕を閉じる。
スタッフ
監督・脚本:エドガルド・コザリンスキー
製作:クロード・シコーヴァ
原案:キャロル・ウェスウェレル
撮影:ジャン=ルイ・レオン
編集:ジョルジュ・クロッツ/カトリーヌ・デプラッツ
録音:エルヴィル・レルネール
リサーチ:マルティーヌ・アルマン
アニメーション:ドミニク・アントワーヌ
キャスト
ジャン・コクトー
エリック・サティ
レイモン・ラディゲ
クリスチャン・ベラール
ココ・シャネル
イゴール・ストラヴィンスキー
パプロ・ピカソ
ヴァスラフ・ニジンスキー
セルゲイ・ディアギレフ
サルバドール・ダリ
ジャン・マレー
エドゥアール・デルミット
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