原題:Scoutman

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2000年/日本/カラー/114分/ 配給:アルゴ・ピクチャーズ

2011年07月22日よりDVDリリース 2002年11月22日よりDVD発売&レンタル開始 2001年10月27日より中野武蔵野ホールにてロードショー公開 名古屋シネマスコーレ他にて全国順次公開予定!

(C)2000 Gold View Company Limited.

公開初日 2001/10/27

公開終了日 2001/12/07

配給会社名 0090

公開日メモ 小遣い稼ぎに体を売る女子高生、夫に黙ってAVに出演する主婦、道行く女の子に片っ端から声をかけるスカウトマン——彼らはまるでサークル活動に興じる学生のように屈託ない——。

解説



この映画のヒロイン・真理は17歳である。
17歳、と言えば危ない若者の代名詞として、日本の大人たちを震憾させている。金属バットで母を殴打し、バスを乗っ取り、老女を殺す……彼女はそんな大胆な事件をしでかす子ではない。彼氏といっしょに家出して池袋の街の中を彷徨い、やがて「フーゾク」の世界へ身を落としていく……これだけ読めば「洲崎パラダイス」と何ひとつ変わらない物語である。違うのは、今時のフーゾクはカタギの世界からそれほどかけ離れていないこと。
小遣い稼ぎに体を売る女子高生、夫に黙ってAVに出演する主婦、道行く女の子に片っ端から声をかけるスカウトマン——彼らはまるでサークル活動に興じる学生のように屈託ない——。かつて川島雄三の描いた洲崎を彩っていた濃い陰影は消え失せ、一見どこにでもある平坦な街がある。

そして17歳がこの街に迷い込んだ。

現実をとらえる私たちの視線のこのような排他性は、確実に日本映画を疲弊させたと思う。声なき者たちを素材として選び、そこに視線を向けた作品は少ない。あっても、それは映画作家の芸術的方法論や娯楽性やらに帰依させるためのもので、超越的な見地から素材を見下ろしているにすぎない。17歳が、むきだしの17歳の顔をスクリーンの中で見る機会は皆無に等しかった。このなかにあって本作品の登場は何という快挙だろうか。
誤解を恐れずに言えば、この映画で描かれているのは汚辱のなかに生きる人々である——現代の汚辱はカムフラージュされ、希薄で見えにくいのだが。
監督の石岡正人は、一見平坦で無感情にさえ見える彼らの行動や表情を丹念に見つめることにより、心の襞のなかに押しこめられた汚辱を描き出すことに成功した。さまざまな形の魅惑的な結晶として。

スカウトマンの生活に自堕落に惹かれていく敦の弱さ。池袋のフーゾク街を、不自由な足をひきずり歩く真理の強さと脆さ。自らの汚辱に耐えきれず破滅していく男、杉下。汚辱をむしろ活力にして、卑劣な手段によっても這い上がろうとする義弥。そして街でパー券を売る15歳の少女・可奈——したたかだが、実は誰よりも傷つきやすく、深く絶望している——。彼らは、汚辱のかなでる不気味な通奏低音のなかで自らの運命に出会い、それを甘受する。
やがて真理は18の誕生日を迎える。18歳、つまり風俗店で働ける年齢。そのとき、彼女は自ら進んで身を売ることを選ぶ。不条理な選択かもしれない。しかし、自身の汚辱を引き受けて生きていくために、彼女にできるギリギリの選択なのだ。
(吉見貴司(編集者/ライター)・映画祭用プレスより抜粋)

ストーリー




東京の近郊都市から家出してきた真理(17)と敦(20)。
真理は小さいときの事故がもとで軽く足を引きずっている。お金も少なくなり、泊まる所もない2人は仕事を捜すがうまく見つからない。そんな時、真理は街中でパー券を売る女の子、可奈に声をかけられる。可奈は自称18歳の女の子。自分の目の前であっという間に数千円を稼ぐ可奈に真理は驚かされる。
一方の敦、生来のナンバ体質があってか仕事探すどころか道でAV女優の美樹に逆ナンパされてホテルヘ。美樹のマネージャーの義弥は、撮影をトバす訳にもいかず、急遽代わりの女の子を路上でスカウトしてなんとか現場に間に合わせることができた。仲間うちの情報をもとに敦と一緒の美樹を見つけ、敦をよそのスカウトマンと誤解した義弥は二人を自分が所属するタレント事務所、メモリーにつれていく。ほどなくして誤解が解けると事務所の社長、杉下に誘われてスカウトスポツトこ向かう敦。仕事を探していた敦にとってスカウトの仕事は自分の体質に合っているように見え、杉下の言われるままにスカウトの世界に足を踏み入れていく。しかしそのことが原因で敦と真理はけんかをしてしまう。
可奈との出会いは真理をまるでジェットコースターに乗っているような日常に引きずり込んでいく。援交でお小遣い稼ぎをする中学や高校の女の子達、自分の娘ほどの女の子たちを買っていくサラリーマンのオヤジたち。それで得たお金を湯水のようにホストクラブ、ショッピングに使う可奈。お金は可奈にとってドラッグのようなもので、使っていないと息が詰まるのだ。同年代の女の子、大人をバカにして自分の才覚で生きるストリート・キッズの可奈。真理はそんな可奈に戸惑いつつも自分のおよび知らない価値観をもつ可奈に引き込まれていく。
敦が入った世界も別世界のようである。スカウトと一口にいってもそう簡単なものではない。女の子に嘘をつかないで彼女らをAVや風俗に導く仕事である。ナンバのような気軽さは、声をかけた女の子達の蔑むような反応であっさり吹き飛んでしまう。しかし美樹にマネージャーとして連れられていったAVの現場は学校のサークル活動のような明るさだ。女優たちも自分達の居場所を見つけたかのように活き活きと振る舞っていた。
真理、敦ともにそれぞれの在り処を必死で探しつつも、価値観を揺るがす人々との出会いの中で、お互いを傷つけ、お互いを見失っていく。そして可奈や敦の周りのスカウトマン達に一つの転機が訪れる。それとともに敦と真理の恋の行方もある日唐突にひとつの終わりを迎える…。

スタッフ

プロデューサー・製作:朱京順
監督:石岡正人
撮影:鍋島淳裕
録音:山方浩
編集:深野俊英
音楽:遠藤浩二
衣装:小倉久乃
ヘアー&メイク:高久保愛子
制作担当:梶野 考
撮影助手:沢井貴善、鶴崎直樹、伊藤千鶴
録音助手:北村浩一
助監督:黒川幸則、松田康洋、久保田博紀
制作助手:落合民生、田村恒

キャスト

松本未来
中泉英雄
藤本由佳
吉家明仁
小室友里
下元史朗

LINK

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