ザ・デリバリー
原題:THE DELIVERY
アタシに命、賭けてみる?
2000年/オランダ・ベルギー合作/105分/カラー/ドルビーデジタル 提供:オンリー・ハーツ/マイピック/日本トラステック 配給:オンリー・ハーツ/マイピック
2001年8月24日DVD発売/2001年8月24日ビデオ発売&レンタル開始 2001年5月12日よりシブヤ・シネマ・ソサエティにてレイトロードショー!
公開初日 2001/05/12
公開終了日 2001/06/08
配給会社名 0016/0127
公開日メモ オランダ発ノンストップ・クラッシュムービー到着!
解説
たいていの日本人は、オランダという国に対して何らかのイメージを持っている。それは、チューリップ畑と風車かも知れないし、フィリップス社製のコーヒー・メーカーかも知れない。ヨーロッパを旅行された方のなかには、オランダには立ち寄らなかった、けれど、KLMでスキポール空港を経由した、という方も少なくないだろう。最近の格闘技ファンならば、すぐにピーター・アーツやアーネスト・ホーストの名前を思い浮かべるに違いない。あるいは、レンブラントやゴッホ、フェルメールといった西洋絵画の巨匠たちの母国として、オランダを想起することもできるだろう。
では、映画についてはどうか?
たいていの日本人は、オランダの映画に対してはほとんど何のイメージも持っていない、というのが、残念ながら、実状であろう。とはいえ、低調な映画館入場者数と、外国映画に上映番組を独占されてきたために、オランダ映画が長い間その発展を阻まれてきたという事情を考えれば、それも仕方のないことである。1960年頃で、年間製作本数が3本程度であったというから、フランス、イタリアをはじめとするヨーロッパ映画先進諸国の後塵を拝してきたことは否めない。
だがそのことは、必ずしもオランダに映画製作の土壌がなかったことを意味しない。ヨリス・イヴェンスが『ゾイデル海』を発表した1930年代から、オランダのドキュメンタリー映画は国際的な評価を獲得しており、ベルト`ハーンストラ、ヘルマン・ヴァン・デル・ホルストといった優れた作家が生まれている。ただし、ドキュメンタリー以外のオランダ映画が、海外からも注目されるようになるのは比較的最近のことで、あえて線を引くなら、1983年以降と見ることができる。なぜ83年かというと、この年はオランダを代表する3人の監督が、それぞれにエポック・メーキングな作品を発表した年だからである。ヨス・ステリングは台詞のないシュールな幻想讃『イリュージョニスト』を、ポール・ヴァーホーヴェンは同性愛作家の奇妙な三角関係と死の不安を描いた『4番目の男』を、そして、ディック・マースはエレベーターが生物のように勝手に動いて殺人を重ねるという奇抜な発想の『悪魔の密室』を完成させ、これを機にオランダ映画に対する評価が一気に高まった。
ポール・ヴァーホーヴェンが、その後ハリウッドに進出して『ロボコップ』『トータル・リコール』『氷の微笑』と次々に大成功を収めたのは周知のとおり。ディック・マースはオランダ映画の牽引者的役割を担ってきたが、99年『小さな目撃者』で、やはりアメリカ進出を果たしている。エンターテイメントの優秀な創り手が、アメリカ映画に吸収されていくことには疑問を抱くが、より大きなマーケットを求めることもまた、彼らの宿命であろう。
この『ザ・デリバリー』という作品が、オランダ語ではなく、英語で作られているのもそうした狙いからである。監督自ら「アメリカン・アクション映画へのトリビュート」だと語る本作は、女1人と男2人がトラブルに巻き込まれながら移動する、といういかにもありがちな題材を扱っている。しかしその中でも、監督ロエル・ラインの若い才能には、未知の可能性が感じられる。緊張と緩和のテンションを自在に操る中盤の展開には非凡な演出カが窺えるし、さりげない会話のなかには台詞のセンスが光っている。そして何といっても、黒のビートル(フォルクス・ワーゲン)が突然空から落ちてくるシーンは圧巻で、ロエル・ラインのイマジネーションの豊かさを、強烈に印象づけられるのである。
主人公アルフレド役を好演したフェジャ・ファン・フェットとロエル・ラインは、テレビシリーズからの付き合いだそうだが、この2人と、かつて同じようにオランダのテレビシリーズでコンビを組んでいたルトガー・ハウアーとポール・ヴァーホーヴェンを重ね合わせて見てしまうのは、少々期待し過ぎというものだろうか?
いずれにしても、彼らのような若いアーティストが、これからのオランダ映画を背負っていくのである。遠からず、オランダ映画の新しい風が吹くことは間違いないだろう。
ストーリー
全財産を失ったガイ(フレディー・ダグラス)、アルフレド(フェジャ・ファン・フェット)と妻のアナ(エスメ・デ・ラ・ブレトニェール)は借金返済のため荒稼ぎをしようと、アムステルダムの犯罪王スパイク(リック・ローンスパック)のもとに出向く。与えられた仕事は2500万ドル分のドラッグをアムステルダムからバルセロナまで4日間でデリバリーすること。しかし、保障のためにアナは人質にされ、ガイとアルフレドも指定されたルートにある公衆電話に約束の時間までに辿り着き、かかってきた電話に答えなければいけないというタイトなスケジュールが渡される。もし勝手な行動を取り、二人揃って電話に答えることが出来なければ、その代償はアナが払うことになる、とスパイクは二人に告げる。
アナの安否を気にかけながらも出発するガイとアルフレド。しかし二人はヨーロッパの国境警備の緩和を思えばデリバリーは簡単な仕事で、言われた通りに動けば大丈夫だろうと確信する。しかし、突然、空からトラブルが降りかかってきた!なんと、ガイとアルフレドの車の前に、立体交差の高架道路からビートルが落ちてきたのだ。
車の残骸から、よろめきながら出てくる女性、ルル(オーレリー・メリェル)を見たガイは、彼女に一目惚れ。ルルを安易に同乗させてしまったことによって、簡単なデリバリーがヨーロッパの闇組織を迷走する旅へと一変してしまう。スパイクの指定したスケジュールに間に合うよう努力するガイとアルフレドだったが、予想もしなかったトラブルが二人の行動を妨げる。彼らはヨーロッパ中で指名手配されているテロリストに間違えられ、インターポールから追われる身となる一方、ルルが裏切った過激派のテロ組織からも狙われてしまうはめになる。
生きたままこのトラブルを脱し、アナの無事を確保するためにも、三人の逃亡者はカを合わせることに同意する。そして、ヨーロッパ各地で様々な窮地に立たされながらも難を脱した三人は、テロリストたちの次なる暗殺を阻もうと立ち上がる。しかし何があろうとも、デリバリーが出来ない限り、三人の命が保証されることはない。最後の手段として、彼らが取った行動とは……!?
スタッフ
監督・脚本・製作:ロエル・ライン
製作:ティース・ベイエンズ
脚本:デヴィッド・ヒルトン
キャスト
アルフレド:フェジャ・ファン・フエット
ガイ:フレディー・ダグラス
ルル:オーレリー・メリエル
スパイク:リック・ローンスパック
アナ:エスメ・デ・ラ・ブレトニェール
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