暗戦

末期ガンで余命数週間と宣告された男（アンディ・ラウ）。男が最後の仕事として仕掛けた完全犯罪に立ち向かう敏腕刑事(ラウ・チンワン)。男二人のプライドをかけた激突を、『男たちの挽歌』のジョン・ウーから続く香港ノワールの世界観を引き継いだスタイリッシュな映像で、香港映画会の俊英ジュニー・トゥ監督が描くサスペンス・アクションの秀作、それが『暗戦 デッドエンド』。
近年、製作環境的にも作品内容的にも不振といわれる香港映画界にあって、コンスタントに秀作を製作・発表し続けているのがジョニー・トゥ監督。その実績は香港内だけにとどまらず、本年２月のベルリン国際映画祭で特集上映が組まれるなど広く世界も認めている。さらに、香港のアカデミー賞とも言える、香港電影金像奨では〔作品〕〔監督〕〔脚本〕〔主演男優〕〔助演男優〕〔編集〕の主要６部門、さらに本作以外に『鎗火 THE MISSION』が〔監督〕賞にノミネート。16日香港コロシアムで発表された授賞式で、アンディ・ラウに初の主演男優賞の栄誉をもたらし、ジョニー・トゥ自身も『鎗火 THE MISSION』で監督賞を受賞するなど、まさに名実ともに香港映画界のトッブに立つ優れた監督である。
ジョニー・トゥ監督は常に自作へ強い拘りを貫く。本作では、まず作品の根幹である「脚本」にハリウッドから二人のライターを招聘。さらに作中のアンディ・ラウの変装が気に入らないとなると、僅か数テイクの特殊メイク・シーンのためにハリウッドの技術を導入したほど。［その特殊メイクの一部に関して不満を抱いたアンディは、そのシーンをカットするよう監督に申し入れたが、監督は結局本編に採用してしまった。］さらに、撮影現場では超多忙のアンディ・ラウの過密なスケジュール［当時アンディは『愛は波の彼方に／愛情無幻号』など数作品の掛け持ちをしていた］にも関わらず、監督自身が納得がいくまでテイクを重ね、彼のスケジュールが空くまで延々とクランク・アップしなかったため、一時は作品の完成自体危ぶむ報道が流れるなど製作時の逸話には事欠かない。［撮影の休止期間中、大阪の映画祭に招かれたラウ・チンワンは撮影中の苦労話を日本の関係者に語ったという。］粘りに粘った監督は香港映画としては異例の１年あまりを費やして本作を完成させた。
ついに完成した本作は、99年９月の香港公開直後から大反響を呼び、香港映画としては異例のロングラン上映を記録［４ヶ月後の本年２月下旬の時点でも香港では続映中だった］作品への高い評価と内容の面白さが大絶賛を呼び、中国本土・アジア各国はもちろん、ヨーロッパなどでも賞賛の嵐を巻き起こす結果へと繋がってゆく。
監督の他に製作もジョニー・トゥが担当。脚本は『ロンゲスト・ナイト』、『ヒーロー・ネバー・ダイ』など同監督とのコンビでも有名なヤウ・ナイホイに、ハリウッドから招聘したローレンス・クロチャード、ジュリアン・カーボンが共同で担当。同じく『ヒーロー・ネバー・ダイ』のチャン・シューカンが撮影、レイモンド・ウォンが音楽、さらにラウ・チンワン、ヨーヨー・モンの演技人まで同監督のお馴染みのメンバーが本作に顔を揃えている。そして、主演は香港の映画界、音楽界で常に第一線に立ちつづけている“香港四天王”アンディ・ラウ。アンディとラウチンの人気２大スターの火花散る演技に加え、『男たちの挽歌』のレイ・チーホン、特別出演にルビー・ウォンがクレジットされている。